聖女の代わりがいくらでもいるなら、私がやめても構いませんよね?

木山楽斗

文字の大きさ
17 / 34

17

しおりを挟む
 私は、宿屋の部屋の中でレイグスに自身の考えを話していた。
 この宿屋に、私の部下だった人達が来ている。その事実からは、最悪な事態が想定できるのだ。

「……この宿屋に、部下だった人達の家族が来ているということは、王都で彼等が何かを起こしたのではないかと思うんだ」
「王都で何かを起こす? それって、つまり……」
「多分、抗議するんじゃないかな? しかも、穏やかではない方法で……」
「なっ……」

 私の言葉に、レイグスは驚いていた。
 それは、当然だろう。穏やかではない抗議。それがどのようなものかは、すぐに想像できるはずだ。
 想像できたならば、とても恐ろしい気持ちになるだろう。これから、この国に起こる大きな出来事に対して、心が揺れるのは当たり前のことである。

「そんなことをしたら、大変なことになる。この国が混乱してしまうぞ」
「そこまでする程、追い詰められていたということなのかもしれない」
「追い詰められていたか……なるほど、確かにそうか。俺が言った貴族と王族の考え方と近いものがあるな……」

 レイグスは、苦虫を噛み潰したような顔をした。
 馬車の中で、彼は王族がおかしな方向に舵を切ったら、それを止めるために動く覚悟をしていると言った。そのことと、彼等がしようとしていることが同じだと悟ったのだろう。
 結局、ビクトンはやり過ぎてしまったのだ。その報いを、魔術師達は与えようとしている。恐ろしいことだが、納得できないことではないだろう。

「……でも、あくまで、今は可能性にしか過ぎないよ。私の予測でしかないから、それが起こるかどうかはわからない」
「だが、起こった時にどうするかは考えておかなければならないだろう? もしそうなったら、俺達はどうするんだ?」
「それは……」

 レイグスに聞かれて、私は言葉を詰まらせてしまった。
 もしそうなった時、私はどうすればいいのだろうか。
 部下達に手を貸す。それも、考えられないことではない。そこまでするに至った決意は、私にもわからない訳ではないからだ。

 だが、その考えは否定しなければならないものである。
 どのような理由があっても、力に頼って、解決するのは間違ったことだろう。

「わからない……でも、止めるべきだとは思っている」
「止めるべきか……」

 私は、明確な答えが出せなかった。
 頭では止めるべきだとわかっている。だが、感情的に彼等の気持ちが理解できてしまうため、はっきりとした答えが出せないのだ。

「まあ、お前にも色々とあるよな……それは、俺にはわからないことだ」
「レイグス……」
「とにかく、俺達は王都に向かうしかない。どちらにしても、まずは現地に行かないとな……」
「……うん、そうだね」

 私とレイグスは、そこで話を切り上げた。 
 どのような結果になっても、私達は王都に向かうのだ。それが変わらないのだから、今はただ体を休めるべきなのだろう。
しおりを挟む
感想 45

あなたにおすすめの小説

【長編版】この戦いが終わったら一緒になろうと約束していた勇者は、私の目の前で皇女様との結婚を選んだ

・めぐめぐ・
恋愛
神官アウラは、勇者で幼馴染であるダグと将来を誓い合った仲だったが、彼は魔王討伐の褒美としてイリス皇女との結婚を打診され、それをアウラの目の前で快諾する。 アウラと交わした結婚の約束は、神聖魔法の使い手である彼女を魔王討伐パーティーに引き入れるためにダグがついた嘘だったのだ。 『お前みたいな、ヤれば魔法を使えなくなる女となんて、誰が結婚するんだよ。神聖魔法を使うことしか取り柄のない役立たずのくせに』 そう書かれた手紙によって捨てらたアウラ。 傷心する彼女に、同じパーティー仲間の盾役マーヴィが、自分の故郷にやってこないかと声をかける。 アウラは心の傷を癒すため、マーヴィとともに彼の故郷へと向かうのだった。 捨てられた主人公がパーティー仲間の盾役と幸せになる、ちょいざまぁありの恋愛ファンタジー長編版。 --注意-- こちらは、以前アップした同タイトル短編作品の長編版です。 一部設定が変更になっていますが、短編版の文章を流用してる部分が多分にあります。 二人の関わりを短編版よりも増しましたので(当社比)、ご興味あれば是非♪ ※色々とガバガバです。頭空っぽにしてお読みください。 ※力があれば平民が皇帝になれるような世界観です。

投獄された聖女は祈るのをやめ、自由を満喫している。

七辻ゆゆ
ファンタジー
「偽聖女リーリエ、おまえとの婚約を破棄する。衛兵、偽聖女を地下牢に入れよ!」  リーリエは喜んだ。 「じゆ……、じゆう……自由だわ……!」  もう教会で一日中祈り続けなくてもいいのだ。

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

偽物と断罪された令嬢が精霊に溺愛されていたら

影茸
恋愛
 公爵令嬢マレシアは偽聖女として、一方的に断罪された。  あらゆる罪を着せられ、一切の弁明も許されずに。  けれど、断罪したもの達は知らない。  彼女は偽物であれ、無力ではなく。  ──彼女こそ真の聖女と、多くのものが認めていたことを。 (書きたいネタが出てきてしまったゆえの、衝動的短編です) (少しだけタイトル変えました)

冤罪で退学になったけど、そっちの方が幸せだった

シリアス
恋愛
冤罪で退学になったけど、そっちの方が幸せだった

団長サマの幼馴染が聖女の座をよこせというので譲ってあげました

毒島醜女
ファンタジー
※某ちゃんねる風創作 『魔力掲示板』 特定の魔法陣を描けば老若男女、貧富の差関係なくアクセスできる掲示板。ビジネスの情報交換、政治の議論、それだけでなく世間話のようなフランクなものまで存在する。 平民レベルの微力な魔力でも打ち込めるものから、貴族クラスの魔力を有するものしか開けないものから多種多様である。勿論そういった身分に関わらずに交流できる掲示板もある。 今日もまた、掲示板は悲喜こもごもに賑わっていた――

殿下、幼馴染の令嬢を大事にしたい貴方の恋愛ごっこにはもう愛想が尽きました。

和泉鷹央
恋愛
 雪国の祖国を冬の猛威から守るために、聖女カトリーナは病床にふせっていた。  女神様の結界を張り、国を温暖な気候にするためには何か犠牲がいる。  聖女の健康が、その犠牲となっていた。    そんな生活をして十年近く。  カトリーナの許嫁にして幼馴染の王太子ルディは婚約破棄をしたいと言い出した。  その理由はカトリーナを救うためだという。  だが本当はもう一人の幼馴染、フレンヌを王妃に迎えるために、彼らが仕組んだ計略だった――。  他の投稿サイトでも投稿しています。

【完結】真の聖女だった私は死にました。あなたたちのせいですよ?

恋愛
聖女として国のために尽くしてきたフローラ。 しかしその力を妬むカリアによって聖女の座を奪われ、顔に傷をつけられたあげく、さらには聖女を騙った罪で追放、彼女を称えていたはずの王太子からは婚約破棄を突きつけられてしまう。 追放が正式に決まった日、絶望した彼女はふたりの目の前で死ぬことを選んだ。 フローラの亡骸は水葬されるが、奇跡的に一命を取り留めていた彼女は船に乗っていた他国の騎士団長に拾われる。 ラピスと名乗った青年はフローラを気に入って自分の屋敷に居候させる。 記憶喪失と顔の傷を抱えながらも前向きに生きるフローラを周りは愛し、やがてその愛情に応えるように彼女のほんとうの力が目覚めて……。 一方、真の聖女がいなくなった国は滅びへと向かっていた── ※小説家になろうにも投稿しています いいねやエール嬉しいです!ありがとうございます!

処理中です...