9 / 34
9
しおりを挟む
私は、事件があったという現場まで来ていた。
そこには、予想通り、レイグスもいる。やはり、事件の調査をしているようだ。
「レイグス、状況を教えてくれる?」
「アルメア、お前も来たのか……いや、当然か。聖女だもんな」
私が来たことに、レイグスは少しだけ驚いていた。
だが、すぐに理解してもらえたようだ。
ただ、彼の認識は少し間違っている。私はもう、聖女ではない。
「さて、現場の状況だが、極めて単純だ。町を守る結界を破って入ってきた魔物が、住民を襲った。それ以上でも、それ以下でもなさそうだ」
「やっぱり、そういうことだったんだね……」
「ああ、人を襲った魔物も一応調査する必要はあるが、一番の問題はこの結界だろうな……これが破られるようになっていると、魔物が自由に町に入れてしまう。この問題を何とかしない限りは、魔物を退治した所で、どうしようもならないな……」
レイグスの説明に、私はゆっくりと頷く。
確かに、今回の事件で一番重要なのは、結界を破られないようにすることだろう。
しかし、その問題は実は解決できる。私がいるからだ。
「レイグス、私の力で、この町に結界を張るよ」
「お前の力で、そんなことができるのか?」
「先日まで、誰がこの結界を張っていたと思っているの? あの時から比べれば、この町の結界一つなんて、簡単なことだよ」
「そうか……それなら、頼めるか?」
「もちろん」
結界自体は、私がなんとかできる。
聖女だった私にとって、それは難しいことではない。
だが、まだ問題がある。その問題は、私一人で解決できることではない。
「レイグス、この町に結界は張れるけど、多分、問題はこの町だけではないと思うんだ」
「……まあ、そうか。そもそも、聖女の体制が崩れているからこうなっているということなんだよな? つまり、それが解決しない限り……」
「全ての町が、この問題を抱えることになると思う」
私がこの町に結界を張った所で、根本的な問題は何も解決しないのだ。
その問題を解決するには、聖女の体制をきちんとしたものに戻さなければならない。
そもそも、これは私が聖女をやめたことで起こったことである。だから、私が解決しなければならないだろう。
「私は、王都に戻ることにする。なんとかして、第三王子の愚行を止めてみせるよ」
「そう言うと思っていたぜ。だが、お前一人に行かせたりはしない」
「え?」
「俺も、王都に行く。俺の大切な幼馴染を苦しめた第三王子に、少々礼をしないといけないんでね」
「レイグス……」
レイグスは、私について来てくれるらしい。
それは、とてもありがたいことである。彼がいれば、私はどんな困難にも立ち向かえるだろう。
こうして、私達は王都に行くことを決意するのだった。
そこには、予想通り、レイグスもいる。やはり、事件の調査をしているようだ。
「レイグス、状況を教えてくれる?」
「アルメア、お前も来たのか……いや、当然か。聖女だもんな」
私が来たことに、レイグスは少しだけ驚いていた。
だが、すぐに理解してもらえたようだ。
ただ、彼の認識は少し間違っている。私はもう、聖女ではない。
「さて、現場の状況だが、極めて単純だ。町を守る結界を破って入ってきた魔物が、住民を襲った。それ以上でも、それ以下でもなさそうだ」
「やっぱり、そういうことだったんだね……」
「ああ、人を襲った魔物も一応調査する必要はあるが、一番の問題はこの結界だろうな……これが破られるようになっていると、魔物が自由に町に入れてしまう。この問題を何とかしない限りは、魔物を退治した所で、どうしようもならないな……」
レイグスの説明に、私はゆっくりと頷く。
確かに、今回の事件で一番重要なのは、結界を破られないようにすることだろう。
しかし、その問題は実は解決できる。私がいるからだ。
「レイグス、私の力で、この町に結界を張るよ」
「お前の力で、そんなことができるのか?」
「先日まで、誰がこの結界を張っていたと思っているの? あの時から比べれば、この町の結界一つなんて、簡単なことだよ」
「そうか……それなら、頼めるか?」
「もちろん」
結界自体は、私がなんとかできる。
聖女だった私にとって、それは難しいことではない。
だが、まだ問題がある。その問題は、私一人で解決できることではない。
「レイグス、この町に結界は張れるけど、多分、問題はこの町だけではないと思うんだ」
「……まあ、そうか。そもそも、聖女の体制が崩れているからこうなっているということなんだよな? つまり、それが解決しない限り……」
「全ての町が、この問題を抱えることになると思う」
私がこの町に結界を張った所で、根本的な問題は何も解決しないのだ。
その問題を解決するには、聖女の体制をきちんとしたものに戻さなければならない。
そもそも、これは私が聖女をやめたことで起こったことである。だから、私が解決しなければならないだろう。
「私は、王都に戻ることにする。なんとかして、第三王子の愚行を止めてみせるよ」
「そう言うと思っていたぜ。だが、お前一人に行かせたりはしない」
「え?」
「俺も、王都に行く。俺の大切な幼馴染を苦しめた第三王子に、少々礼をしないといけないんでね」
「レイグス……」
レイグスは、私について来てくれるらしい。
それは、とてもありがたいことである。彼がいれば、私はどんな困難にも立ち向かえるだろう。
こうして、私達は王都に行くことを決意するのだった。
30
お気に入りに追加
3,081
あなたにおすすめの小説

偽りの家族を辞めます!私は本当に愛する人と生きて行く!
ユウ
恋愛
伯爵令嬢のオリヴィアは平凡な令嬢だった。
社交界の華及ばれる姉と、国内でも随一の魔力を持つ妹を持つ。
対するオリヴィアは魔力は低く、容姿も平々凡々だった。
それでも家族を心から愛する優しい少女だったが、家族は常に姉を最優先にして、蔑ろにされ続けていた。
けれど、長女であり、第一王子殿下の婚約者である姉が特別視されるのは当然だと思っていた。
…ある大事件が起きるまで。
姉がある日突然婚約者に婚約破棄を告げられてしまったことにより、姉のマリアナを守るようになり、婚約者までもマリアナを優先するようになる。
両親や婚約者は傷心の姉の為ならば当然だと言う様に、蔑ろにするも耐え続けるが最中。
姉の婚約者を奪った噂の悪女と出会ってしまう。
しかしその少女は噂のような悪女ではなく…
***
タイトルを変更しました。
指摘を下さった皆さん、ありがとうございます。

義妹が聖女を引き継ぎましたが無理だと思います
成行任世
恋愛
稀少な聖属性を持つ義妹が聖女の役も婚約者も引き継ぐ(奪う)というので聖女の祈りを義妹に託したら王都が壊滅の危機だそうですが、私はもう聖女ではないので知りません。

(完)聖女様は頑張らない
青空一夏
ファンタジー
私は大聖女様だった。歴史上最強の聖女だった私はそのあまりに強すぎる力から、悪魔? 魔女?と疑われ追放された。
それも命を救ってやったカール王太子の命令により追放されたのだ。あの恩知らずめ! 侯爵令嬢の色香に負けやがって。本物の聖女より偽物美女の侯爵令嬢を選びやがった。
私は逃亡中に足をすべらせ死んだ? と思ったら聖女認定の最初の日に巻き戻っていた!!
もう全力でこの国の為になんか働くもんか!
異世界ゆるふわ設定ご都合主義ファンタジー。よくあるパターンの聖女もの。ラブコメ要素ありです。楽しく笑えるお話です。(多分😅)
婚約破棄から聖女~今さら戻れと言われても後の祭りです
青の雀
恋愛
第1話
婚約破棄された伯爵令嬢は、領地に帰り聖女の力を発揮する。聖女を嫁に欲しい破棄した侯爵、王家が縁談を申し込むも拒否される。地団太を踏むも後の祭りです。



妹と寝たんですか?エセ聖女ですよ?~妃の座を奪われかけた令嬢の反撃~
岡暁舟
恋愛
100年に一度の確率で、令嬢に宿るとされる、聖なる魂。これを授かった令嬢は聖女と認定され、無条件で時の皇帝と婚約することになる。そして、その魂を引き当てたのが、この私、エミリー・バレットである。
本来ならば、私が皇帝と婚約することになるのだが、どういうわけだか、偽物の聖女を名乗る不届き者がいるようだ。その名はジューン・バレット。私の妹である。
別にどうしても皇帝と婚約したかったわけではない。でも、妹に裏切られたと思うと、少し癪だった。そして、既に二人は一夜を過ごしてしまったそう!ジューンの笑顔と言ったら……ああ、憎たらしい!
そんなこんなで、いよいよ私に名誉挽回のチャンスが回ってきた。ここで私が聖女であることを証明すれば……。

婚約破棄されたので、聖女になりました。けど、こんな国の為には働けません。自分の王国を建設します。
ぽっちゃりおっさん
恋愛
公爵であるアルフォンス家一人息子ボクリアと婚約していた貴族の娘サラ。
しかし公爵から一方的に婚約破棄を告げられる。
屈辱の日々を送っていたサラは、15歳の洗礼を受ける日に【聖女】としての啓示を受けた。
【聖女】としてのスタートを切るが、幸運を祈る相手が、あの憎っくきアルフォンス家であった。
差別主義者のアルフォンス家の為には、祈る気にはなれず、サラは国を飛び出してしまう。
そこでサラが取った決断は?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる