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18.事件の疑惑

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 クレンド様と対面した私は、彼が意気消沈していることに少し驚いた。
 何故そうなっているのか、なんとなくわかる。先程まで彼はロメリアと話していた訳なので、恐らく彼女が原因だろう。

「クレンド様、お疲れのようですね?」
「ああ、レフティア嬢……すまないな」
「いえ、お気になさらずに。ロメリアの相手は疲れましたか?」
「そうだな……疲れた。ロメリア嬢はなんというか、やりにくい相手だ。俺にとって、あまり関わり合いたくないタイプだな」

 クレンド様は、ロメリアのことを強く否定した。
 今回の件などに関わらず、彼とロメリアの相性はそれ程良くないということだろうか。
 ただ、先程話を終えたロメリアは、嬉しそうな表情をしていたような気がする。彼女の方は、別の感想を抱いたということだろうか。

「さてと、気を取り直して、バンガル氏の事件に関することを話すとしようか」
「あ、ええ、その結果がとても気になっていました」

 クレンド様は、身構えを正して私に向き合った。
 そういう所の切り替えは、流石といえる。私も姿勢を正して、彼の言葉を聞くとしよう。

「こちらを訪ねて来たということは、何か進展があったということでしょうか?」
「察しがいいな。その通りだ。手紙を出すことも考えたのだが、記録には残さない方が良いと思ったからな……」
「ええ、それは賢明な判断だと思います。手紙は見られるかもしれませんし……」

 クレンド様は、とても慎重にことにあたってくれていた。
 それは私にとって、とてもありがたいことである。万が一ということもあるので、慎重には慎重を期した方がいい。

「それで、どのような進展が?」
「バンガル氏の死について、何かしらの偽装があったのは事実であるようだ。当時の捜査をしていた警察の何人かが喋ってくれた」
「……やはり、そうでしたか」
「彼らもどこからのお達しであるかは知らないらしいが、ヴェリオン伯爵家ではないかと思っているらしい」
「なるほど……」

 クレンド様の言葉に、私はゆっくりと息を呑んだ。
 その可能性が高いとは思っていたのだが、実際に聞かされると少し苦しくなってくる。
 お父様は、私が思っていた以上に腐っていた。ペルリナは、非道な女性だった。それらの事実を受け止めるのは、流石にそう簡単なことではない。

「ただ確固たる証拠が掴めているという訳でもないのが現状だ。そちらの方はどうだ? 首尾は順調なのだろうか?」
「ええ、お父様はまず間違いなくロメリアとの血の繋がりを確かめると思います」
「まあ結果はともかくとして、それなら一応安心できるか」
「はい。このまま予想通りの結果になってくれると良いのですが……」

 ただ、それらの事実が現実味を帯びてきたことによって、私の中にも確固たる覚悟が固められた。
 容赦や情けなどは必要ない。私は彼らを排除する。それがヴェリオン伯爵家に名を連ねる者の一人として、私がやるべきことなのだろう。
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