妹が私に言う「悪役令嬢」がなんのことだかさっぱりわかりません。

木山楽斗

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5.彼の見解

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 メルティアの部屋を後にしてから、私はイフェールと客室で話し合うことにした。
 議題はもちろん、メルティアのことだ。実際に会ったことによって、イフェールも色々と言いたいことはあるだろう。

「奇妙なことだが、本当に一部の記憶は残っているみたいだな。俺のことを断片的に知っているようだった。気になったのは、具体的なエピソードなどがないことだな」
「エピソード?」
「俺の名前とか、好きな物だとか、そういったことは結構すらすらと出てくる。だけど、思い出となると出てこない。一緒に何かしたとか、どこかに出掛けたとか、そういった記憶はないように思える」

 イフェールは、メルティアと話ながら色々と考えていたようだ。
 そういう抜け目ない所も、なんとも彼らしい。しかし彼がもたらしてくれた情報は、重要な手がかりとなる。

「顔や名前などは覚えていて、エピソードは覚えていない。そういう風に整理できるというなら、ある程度の一貫性が見出せるわね?」
「ああ、まあ、だからといって、俺達にできることがあるという訳でもないが」
「でも、納得することはできるわ。今のメルティアはなんというか、客観的な気がするもの。関係性はわかっているけど、それに現実と繋がっていたいみたいな感じで」

 メルティアの奇妙な距離感は、思い出がないことによるものだったのだろう。
 私の顔を見て名前を言っていたし、誰が誰であるかは認識できる。だけど、その人と自分がどのように接していたかを覚えていなければ、距離感はできてしまうだろう。

「そういうことなら、そうだと言ってくれても良いのだけれど……」
「それについては、本人も認識することができていないのかもしれない。そもそも俺の認識が正しいとも限らないし、記憶に関することというのはわからないことも多いんだろう?」
「なるほど……それなら、その辺りのことは本人に聞かず、お医者様に相談した方がいいかしら?」
「念のためにそうした方が良いだろうな」

 イフェールの見解を、本人に言うのはやめておいた方が良さそうだ。それによってメルティアにどのような反応が起こるかもわからないし、慎重に行動するとしよう。
 しかし何はともあれ、これは重要な手がかりだ。また一つ前進できたと考えるべきか。

「さてと、俺はそろそろ失礼させてもらうか」
「ええ、今日はありがとうね」
「近々兄上も訪ねて来ると思う。まあ、改めて連絡はあるだろう」

 イフェールの兄であるアレイグも、メルティアのことを心配してくれていた。
 彼が来てくれるというなら、こちらとしてはもちろん歓迎しよう。
 ただその前にまずは、お医者様に掛け合ってみるべきだ。それからメルティアとどう接するべきか、改めて考えてみるとしよう。
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