1 / 18
1.目覚めた妹
しおりを挟む
妹のメルティアが階段から転げ落ちたと聞いた時は、肝が冷えた。
その時点で、大事である訳だが、詳しく話を聞いた私はさらに気落ちすることになった。メルティアが頭を打って意識を失っていたからだ。
「悪役令嬢、ミレティア……」
「……うん?」
そんなメルティアが無事に目覚めてから、一日が経った。
念のため安静にしていた彼女も、今日から普通の生活を再開する。それを聞いた私は、妹の元を訪ねた。
お医者様の見立てにより、特に問題がある訳ではないということはわかっている。
ただ、記憶に幾分かの混乱があるとのことだった。そういうことで心配だったのだが、私の顔と名前は一致しているなら、問題ないように思える。
しかし、私は彼女が発したもう一つの単語が気になっていた。今彼女は、「悪役令嬢」と言ったはずである。それは一体、何なのだろうか。
「メルティア、悪役令嬢とは何かしら?」
「え?」
「いえ、今あなたは確かに悪役令嬢と言ったわよね。それは何なのかしら?」
「あ、えっと、その……」
私の質問に対して、メルティアは言葉を詰まらせていた。
私は何か、答えにくいことを言ってしまったのだろうか。そうだとしたら、悪いことをしてしまった。メルティアは病み上がりなのだから、あまり難しいことはさせたくない。
「ごめんなさい。言いたくないことなら別にいいのよ。深堀しようとは思わないわ。若い子というものは、独特な言葉を使うわよね。その一環かしら」
「え? いや、私と――お、お姉様は一つしか違わないのでは?」
メルティアは、私との年齢差についても正しく認識していた。
やはり、記憶の混乱については問題ないといえるのだろうか。その辺りについては、一度確認しておいた方が良いかもしれない。
「それであなたは、もう大丈夫なのかしら?」
「あ、その、一応動けはします」
「痛みはまだあるのかしら?」
「えっと、少しは……」
メルティアは、少しぎこちない態度だった。
以前までの彼女からは感じられなかった緊張感というものがある。
その微妙な態度を見てしまうと、記憶の混乱が結構深刻なものだと思ってしまう。まさか、私との思い出などを忘れてしまったのだろうか。
そうだとしたら、辛いものである。妹の中から私が消えてしまったなんて、思いたくはない。
しかし、これは仕方ないことでもある。メルティアだって、望んでこうなった訳でもない。私は現実を受け止めるしかないのだろう。
物事というものは、前向きに考えるべきだ。後ろ向きに考えると、気分まで落ち込んでしまう。
忘れてしまったというなら、思い出してもらえば良い。思い出してもらえないなら、新しい思い出を作っていけば良い。そう考えるべきだろう。
その時点で、大事である訳だが、詳しく話を聞いた私はさらに気落ちすることになった。メルティアが頭を打って意識を失っていたからだ。
「悪役令嬢、ミレティア……」
「……うん?」
そんなメルティアが無事に目覚めてから、一日が経った。
念のため安静にしていた彼女も、今日から普通の生活を再開する。それを聞いた私は、妹の元を訪ねた。
お医者様の見立てにより、特に問題がある訳ではないということはわかっている。
ただ、記憶に幾分かの混乱があるとのことだった。そういうことで心配だったのだが、私の顔と名前は一致しているなら、問題ないように思える。
しかし、私は彼女が発したもう一つの単語が気になっていた。今彼女は、「悪役令嬢」と言ったはずである。それは一体、何なのだろうか。
「メルティア、悪役令嬢とは何かしら?」
「え?」
「いえ、今あなたは確かに悪役令嬢と言ったわよね。それは何なのかしら?」
「あ、えっと、その……」
私の質問に対して、メルティアは言葉を詰まらせていた。
私は何か、答えにくいことを言ってしまったのだろうか。そうだとしたら、悪いことをしてしまった。メルティアは病み上がりなのだから、あまり難しいことはさせたくない。
「ごめんなさい。言いたくないことなら別にいいのよ。深堀しようとは思わないわ。若い子というものは、独特な言葉を使うわよね。その一環かしら」
「え? いや、私と――お、お姉様は一つしか違わないのでは?」
メルティアは、私との年齢差についても正しく認識していた。
やはり、記憶の混乱については問題ないといえるのだろうか。その辺りについては、一度確認しておいた方が良いかもしれない。
「それであなたは、もう大丈夫なのかしら?」
「あ、その、一応動けはします」
「痛みはまだあるのかしら?」
「えっと、少しは……」
メルティアは、少しぎこちない態度だった。
以前までの彼女からは感じられなかった緊張感というものがある。
その微妙な態度を見てしまうと、記憶の混乱が結構深刻なものだと思ってしまう。まさか、私との思い出などを忘れてしまったのだろうか。
そうだとしたら、辛いものである。妹の中から私が消えてしまったなんて、思いたくはない。
しかし、これは仕方ないことでもある。メルティアだって、望んでこうなった訳でもない。私は現実を受け止めるしかないのだろう。
物事というものは、前向きに考えるべきだ。後ろ向きに考えると、気分まで落ち込んでしまう。
忘れてしまったというなら、思い出してもらえば良い。思い出してもらえないなら、新しい思い出を作っていけば良い。そう考えるべきだろう。
139
あなたにおすすめの小説
なぜ、私に関係あるのかしら?
シエル
ファンタジー
「初めまして、アシュフォード公爵家一女、セシリア・アシュフォードと申します」
彼女は、つい先日までこの国の王太子殿下の婚約者だった。
そして今日、このトレヴァント辺境伯家へと嫁いできた。
「…レオンハルト・トレヴァントだ」
非道にも自らの実妹を長年にわたり虐げ、婚約者以外の男との不適切な関係を理由に、王太子妃に不適格とされ、貴族学院の卒業式で婚約破棄を宣告された。
そして、新たな婚約者として、その妹が王太子本人から指名されたのだった。
「私は君と夫婦になるつもりはないし、辺境伯夫人として扱うこともない」
この判断によって、どうなるかなども考えずに…
※ 中世ヨーロッパ風の世界観です。
※ ご都合主義ですので、ご了承下さい、
※ 画像はAIにて作成しております
婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。
黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」
豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。
しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。
腹違いの妹にすべてを奪われた薄幸の令嬢が、義理の母に殴られた瞬間、前世のインテリヤクザなおっさんがぶちギレた場合。
灯乃
ファンタジー
十二歳のときに母が病で亡くなった途端、父は後妻と一歳年下の妹を新たな『家族』として迎え入れた。
彼らの築く『家族』の輪から弾き出されたアニエスは、ある日義母の私室に呼び出され――。
タイトル通りのおっさんコメディーです。
幼馴染みの婚約者が「学生時代は愛する恋人と過ごさせてくれ」と言ってきたので、秒で婚約解消を宣言した令嬢の前世が、社畜のおっさんだった件。
灯乃
ファンタジー
子爵家の総領娘である令嬢の前に、巨乳美少女と腕を組んだ婚約者がやってきた。
曰く、「学生時代くらいは、心から愛する恋人と自由に過ごしたい。それくらい、黙って許容しろ」と。
婚約者を甘やかし過ぎていたことに気付いた彼女は、その場で婚約解消を宣言する。
前半はたぶん普通の令嬢もの、後半はおっさんコメディーです。
婚約破棄された人たらし悪役令嬢ですが、 最強で過保護な兄たちと義姉に溺愛されています
由香
ファンタジー
婚約破棄のその日、
悪役令嬢リリアーナは――弁明すら、しなかった。
王太子と“聖女”に断罪され、すべてを失った彼女。
だがその裏で、王国最強と名高い三人の兄と、
冷静沈着な義姉が、静かに動き始めていた。
再検証によって暴かれる“聖女の嘘”。
広場で語られる真実。
そして、無自覚に人を惹きつけてしまう
リリアーナの優しさが、次々と味方を増やしていく――。
これは、
悪役令嬢として断罪された少女が、
「誰かの物語の脇役」ではなく、
自分自身の人生を取り戻す物語。
過保護すぎる兄たちと義姉に溺愛されながら、
彼女は静かに、そして確実に幸せへ向かっていく。
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
冷遇王妃はときめかない
あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。
だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる