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20.安全のために

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 私とロウガスト様は、王城の中庭に来ていた。
 話し合った結果、ここで話すことにしたのだ。

「それで、どうしたのですか? 何か、私に話したいことでもあるのでしょうか?」
「ええ、あなたに色々と言いたいことがあるのです」
「言いたいこと?」

 ロウガスト様の言葉に、私は首を傾げる。その言葉が、少し変だと思ったからだ。
 私に話したいことがあるというならわかる。だが、言いたいこととはなんだろうか。その言い回しは、少し気になる。
 身に覚えはないのだが、私は何か悪いことでもしただろうか。少し怖くなってくる。

「なんですか?」
「まず調査の結果から言いたいのです」
「調査……コーネリア嬢の部屋が荒らされたことに関することですか?」
「ええ、そのことです。その実行犯を捕えることができたのです」

 実行犯が見つかった。その事実は、喜ぶべきことである。
 しかし、その言葉からして、黒幕がわかったという訳ではないのだろう。

「犯人は、兵士でした。出来心でやったと本人は供述しているようですが、まず間違いなく誰かに雇われたのでしょう。恐らく、その人物は口を割らないと思います。そんなことをすれば、今度は自分の命が危ないとわかっているからでしょう」
「そうですか……」

 王城内にいる兵士なら、確かにコーネリア嬢の部屋にも入れる。犯人としては、あり得る話だ。
 だが、その人物には動機がない。誰かが裏にいるのは確実だろう。
 それが誰なのかを調べるのは、それなりに難しいことであるはずだ。裏にいる人物も危険なことは理解しているだろうし、簡単にはわからないように細工していると考えるべきだろう。

「……僕は思っているのです。こうなった以上、この催しを続けるべきではないと」
「え? それは……」
「王城内で護衛をしているはずの兵士が、凶行に及んだ。これは、由々しき事態です。あなた達の安全を考慮すると、ここにいてもらうことは得策ではないでしょう」

 ロウガスト様は、真剣な顔でそのようなことを言ってきた。
 それは、確かに納得できることだ。
 それだけの陰謀が、王城内に渦巻いている。それは、健全な状態ではない。そんな状態で他家の令嬢を預かるというのも、あまりいいことではないだろう。

「婚約者に関しては、こちらで相談を重ねようと思っています。基本的には、僕と父で相談します。それなら、誰かの陰謀も絡まないでしょうし……」
「確かに、それが良さそうですね……」

 ロウガスト様の言葉に、私はゆっくりと頷いた。
 国王様と彼の意思で決めるなら、誰かに危険が及ぶことはない。もしかしたら、それが一番いいのかもしれない。
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