浮気して婚約破棄したあなたが、私の新しい婚約者にとやかく言う権利があるとお思いですか?

木山楽斗

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15.真っ直ぐな言葉には

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「えっと、ご両親はその婚約の提案には反対されなかったのですか?」
「え? ああ、その点については特に何も言われませんでしたね。そもそも伯爵家相手というのは、不足でもないでしょう」
「そうですかね。まあ、折衷案としては悪くないものでしょうか」

 ドラグス様が望んでおり、相手がそれなりの家であったということによって、オルフェバー侯爵夫妻は特に反対しなかったのかもしれない。
 貴族の結婚というものは基本的に親の意思によって決められるものではあるが、本人の意思が尊重できる状況であるならば、それを無下にしようとは思わないだろう。
 なぜならその方が、上手くいく可能性は高いからだ。結局の所、結婚しても上手くいかずに破綻してしまえば、色々と厄介なことになってしまうのだから。

「とはいえ、ドラグス様は人気でしたよね。舞踏会では、侯爵家の令嬢とも躍っていましたし……」
「ええ、ですが、私はクレーナ嬢に惹かれました」
「そ、そうですか」

 ドラグス様は、涼しい顔で情熱的なことを言ってきた。
 彼はそういったことを、特に躊躇うことなく言える性格であるようだ。それは良いことではあるだろう。実際に私は今の言葉で、喜んでいる。
 ただ、もしかしたら私の身の方がもたないかもしれない。こんな風に常に言われたら、身悶えしてしまいそうである。

 何はともあれ、彼がどのように思っているかはよくわかった。
 そういった強い思いがあったこともあって、オルフェバー侯爵夫妻もこの婚約の申し出を受け入れてくれたのかもしれない。

「アガート伯爵夫妻も、今回の件については喜んでくださっていると聞いていますが」
「それはもちろんです。こちらとしては、高位の家への嫁入りですから。断る理由なんてありません。その、私は色々と考えていましたが……」
「色々と?」
「あ、ええ、まあ……」

 ドラグス様の言葉に対して、私は言葉を濁していた。
 多分、この婚約に対して裏があるとか思っていたのは、私くらいだ。今思うと、なんとも愚かなものである。

「ドラグス様のことを、疑っていたのです。何か裏があるかもしれないと」
「……そうでしたか。まあ、無理もないことです」
「いえ、それはその、言い訳だったのだと思います。私は自分自身の気持ちから目をそらすために、答えを見ようとしませんでした」
「それは……」

 私の言葉に、ドラグス様は少し目を丸めた。
 そんな彼の表情を見ながら、私は決意をする。ドラグス様は、真っ直ぐに言葉を伝えてくれたのだ。私の方も、勇気を出さなければならないだろう。
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