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11.堅いつもりは
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「それでですね、お姉様はそのドラグス様とかなり親密な様子で……」
「コーネリア、それは少し語弊があるのではないかしら?」
アガート伯爵の屋敷に戻って来た私とコーネリアは、中庭でお兄様とお茶していた。
そこでの話の議題というものは、当然直近であった舞踏会のことについてとなった。コーネリアは、その舞踏会であったことをお兄様に赤裸々に話している。私とドラグス様のことも、包み隠さず話してしまったのだ。
いや、別に話してしまったこと自体は大きな問題ではない。
問題は、言い方である。私とドラグス様は結局三曲も一緒に踊った訳ではあるが、それは状況がそうさせたに過ぎない。親密という言い方は、なんとか誤解させてしまうような言い方であるように思える。
「別に悪いことという訳でもないだろう」
「え?」
「クレーナ、お前は今回婚約者を探すために舞踏会に参加したはずだ。親密になったというなら、その目的を果たしていたともいえる」
「そ、それは……」
コーネリアの言葉を否定した私に対して、お兄様は鋭い指摘をしてきた。
言われてみれば、確かにドラグス様と親密になるのは良いことだ。上手く彼に取り入り、オルフェバー侯爵家との婚約に繋がることは願ってもないことである。
しかし私は、いまいち釈然としていなかった。ドラグス様と婚約するのが嫌という訳ではないはずなのに、どうしてそんなことを思ってしまうのだろうか。
「クレーナ、お前は昔から真面目過ぎる」
「真面目、ですか?」
「堅すぎるということだ。物事はもう少し柔軟に考えても良いということを覚えておいた方がいい」
「ど、どういうことですか?」
お兄様の言葉の意味が、私にはよくわからなかった。
確かに、私はそんなに柔軟な方ではないと思うが、堅すぎるということもないはずである。どうしてお兄様は、急にこんなことを言い出したのだろうか。
「まあ、確かにお姉様はそういう所がありますよね……」
「え?」
妹のコーネリアまで、お兄様の論を支持していた。
ということは、これは私が自覚していないだけで、そうだということなのだろうか。
よく考えてみれば、私は友達もいない。お堅い近寄りがたい人だと、思われていたということなのだろうか。
「ドラグス侯爵令息とは、これからも仲良くしていけば良い。オルフェバー侯爵家との繋がりは、アガート伯爵家にとって利益となる」
「あ、はい。そうですよね……そうした方が良いですよね」
「しかし、別にそこに個人の意思が介入していようとも、構いはしない」
「個人の意思……」
「肩の力を抜いて、ことにあたれば良いということだ」
お兄様の言葉は、少し抽象的なものであった。
しかしそれでも、私にとっては安心できるものではある。お兄様の言葉の節々には、いざとなったら自分がなんとかするという意思が隠れているとわかったからだ。
そういうことなら、本当に肩の力は抜くべきなのかもしれない。いや別に、力を入れていたつもりもなかったのだが。
「コーネリア、それは少し語弊があるのではないかしら?」
アガート伯爵の屋敷に戻って来た私とコーネリアは、中庭でお兄様とお茶していた。
そこでの話の議題というものは、当然直近であった舞踏会のことについてとなった。コーネリアは、その舞踏会であったことをお兄様に赤裸々に話している。私とドラグス様のことも、包み隠さず話してしまったのだ。
いや、別に話してしまったこと自体は大きな問題ではない。
問題は、言い方である。私とドラグス様は結局三曲も一緒に踊った訳ではあるが、それは状況がそうさせたに過ぎない。親密という言い方は、なんとか誤解させてしまうような言い方であるように思える。
「別に悪いことという訳でもないだろう」
「え?」
「クレーナ、お前は今回婚約者を探すために舞踏会に参加したはずだ。親密になったというなら、その目的を果たしていたともいえる」
「そ、それは……」
コーネリアの言葉を否定した私に対して、お兄様は鋭い指摘をしてきた。
言われてみれば、確かにドラグス様と親密になるのは良いことだ。上手く彼に取り入り、オルフェバー侯爵家との婚約に繋がることは願ってもないことである。
しかし私は、いまいち釈然としていなかった。ドラグス様と婚約するのが嫌という訳ではないはずなのに、どうしてそんなことを思ってしまうのだろうか。
「クレーナ、お前は昔から真面目過ぎる」
「真面目、ですか?」
「堅すぎるということだ。物事はもう少し柔軟に考えても良いということを覚えておいた方がいい」
「ど、どういうことですか?」
お兄様の言葉の意味が、私にはよくわからなかった。
確かに、私はそんなに柔軟な方ではないと思うが、堅すぎるということもないはずである。どうしてお兄様は、急にこんなことを言い出したのだろうか。
「まあ、確かにお姉様はそういう所がありますよね……」
「え?」
妹のコーネリアまで、お兄様の論を支持していた。
ということは、これは私が自覚していないだけで、そうだということなのだろうか。
よく考えてみれば、私は友達もいない。お堅い近寄りがたい人だと、思われていたということなのだろうか。
「ドラグス侯爵令息とは、これからも仲良くしていけば良い。オルフェバー侯爵家との繋がりは、アガート伯爵家にとって利益となる」
「あ、はい。そうですよね……そうした方が良いですよね」
「しかし、別にそこに個人の意思が介入していようとも、構いはしない」
「個人の意思……」
「肩の力を抜いて、ことにあたれば良いということだ」
お兄様の言葉は、少し抽象的なものであった。
しかしそれでも、私にとっては安心できるものではある。お兄様の言葉の節々には、いざとなったら自分がなんとかするという意思が隠れているとわかったからだ。
そういうことなら、本当に肩の力は抜くべきなのかもしれない。いや別に、力を入れていたつもりもなかったのだが。
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