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8.家族との関係

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 私は、ドラグス様と舞踏会で踊っていた。
 コーネリアは、同年代の男子と一緒に踊っている。ドラグス様と会った後、お誘いがあったのだ。少し緊張しているようだが、多分彼女なら大丈夫だろう。この場をしっかりと乗り切れるはずである。

「……コーネリア嬢のことが気になりますか?」
「え? あ、はい。そうですね……」

 妹の方に視線を向けたことに気付いたのか、ドラグス様は私に小声で話しかけてきた。
 これは少々、失礼だったかもしれない。今は目の前にいる彼とのダンスに、集中しなければならない時だというのに。

「すみません。余所見してしまって」
「いいえ、お気になさらず。私にも妹がいますから、気持ちはよくわかります。もっとも、私の場合は逆に妹に助けられることの方が多かったのですが……」
「いいえ、私も同じようなものですよ。妹のコーネリアはしっかりとしていますから」

 姉として気に掛けてはいるが、コーネリアは非常にしっかりとした子だ。
 末の子ということもあって、お父様やお母様もそれなりに甘やかしていたにも関わらず、立派に育ったものだと思う。
 そんな彼女は、私が気に掛けるまでもないといえる。ただ私も一応姉なので、どうしても意識を向けてしまうのだ。

「クレーナ嬢とコーネリア嬢は、随分と年が離れているような気もしますが……」
「ああ、ええ、実は遅くにできた子供なのです。私とお兄様は二つ違いなのですが、私とあの子は七つも違って……だからでしょうかね、仲が良い姉妹をやれています。まあ、お兄様とも元々仲は良かったのですが」
「家族の仲が良いは、喜ばしいことですよ。私も家族には随分と助けられてきました」

 ドラグス様は、どこか遠くを見つめていた。
 病弱だったということもあって、家族と過ごす時間が長かった彼は、色々と思う所があるということだろうか。
 彼以外のオルフェバー侯爵家の人々は、何度か見かけたことはある。挨拶も交わしたことがあるはずだが、その時は表面上の会話しかしていないので、特に印象というものはない。

「私が今こうしていらえるのも、家族のお陰です。だからこそ、オルフェバー侯爵家の役に立てるように努めたいと思っています。といっても、それは貴族としては当然のことなのでしょうが……」
「いいえ、立派なことだと思いますよ。そうやって、意識を持ってことに取り組むのは……」

 ドラグス様の言葉に、私は自分の婚約者だった人のことを思い出していた。
 ラカール様にはきっと、貴族としての自覚などというものはなかったのだろう。私はそれを理解していなかった。理解していれば、もっとできることがあったかもしれない。
 そういえば、今彼はどうしているのだろうか。それは少し気になる所だ。あれからあまり、話も聞かないし。
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