上 下
6 / 13

6.舞踏会への参加

しおりを挟む
 社交界では、噂なんてものはすぐに広まっていく。
 ラカール様が私との婚約を破棄したことは、既に知れ渡っていることだろう。
 そんな私が舞踏会に参加しているとなると、周囲の人々の視線も集中する。あまり良い気持ちはしないが、これに関してはもう仕方ないだろう。

「コーネリア、あなたは離れていてもいいのよ?」
「いいえ、大丈夫です。私は平気ですから……それにそもそも、少し言いにくいのですが、多分離れても視線が向けられるのは変わらないと思います。私はお姉様の妹ですから」
「それでも少しはマシになると思うのだけれどね」

 舞踏会に参加しているのは、私とコーネリアの二人である。
 アガート伯爵家で参加しているのは、私達だけだ。一応今回は、婚約者を探すための舞踏会であるため、既に婚約しているお兄様は来ていないのである。

「お姉様と離れる方が寂しくて嫌ですよ。私はまだ、そんなに場慣れしているという訳ではありませんし……」
「まあ、そうかしらね……」

 妹のコーネリアは、私の七つも年下だ。年の割にはしっかりとしているため忘れがちになるが、まだ一人で行動したいとは思わないらしい。
 そういうことなら、私がここに来られたというのも良いことなのかもしれない。これでも一応、少なくともコーネリアよりは七年分多くの経験を積んでいるので、色々と教えられることがあるはずだ。

「でも、そんなに緊張する必要はないのよ。舞踏会なんてものは、大半は踊っていれば良いから、楽なものだし」
「そうなんですか?」
「まあ、これは個人の感覚によっては違うのでしょうけれど、私としてはかなりマシな方だと思っているわ。踊っている間は、喋らなくても良いもの」

 貴族同士でする会話というものは、疲れるものだと私は思う。
 無礼があってもいけないため、色々と言葉も話題も選ばなければならないし、目上の人との会話というものは、特に疲れる。それが必要であることはわかっているのだが、そこまで乗り気にはなれない。

 舞踏会では踊っている間は割と喋らなくても乗り切れるため、それなりに楽だと私は認識している。
 とはいえ、よく考えてみれば、舞踏会も別に乗り気になれる場所という訳ではなかった。結局の所、疲れることはそれ程変わりないからだ。

「……失礼」
「え?」

 私がそんなことを考えていると、声をかけられた。
 そちらの方向に視線を向けると、一人の男性がいる。その男性が何者であるかはわからないが、状況的にどうやらダンスの誘いに来たらしい。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【9話完結】お茶会? 茶番の間違いでしょ?『毒を入れるのはやり過ぎです。婚約破棄を言い出す度胸もないなら私から申し上げますね』

西東友一
恋愛
「お姉様もいずれ王妃になるなら、お茶のマナーは大丈夫ですか?」 「ええ、もちろんよ」 「でも、心配ですよね、カイザー王子?」 「ああ」 「じゃあ、お茶会をしましょう。私がお茶を入れますから」  お茶会?  茶番の間違いでしょ?  私は妹と私の婚約者のカイザー第一王子が浮気しているのを知っている。  そして、二人が私を殺そうとしていることも―――

【完結】真実の愛とやらに目覚めてしまった王太子のその後

綾森れん
恋愛
レオノーラ・ドゥランテ侯爵令嬢は夜会にて婚約者の王太子から、 「真実の愛に目覚めた」 と衝撃の告白をされる。 王太子の愛のお相手は男爵令嬢パミーナ。 婚約は破棄され、レオノーラは王太子の弟である公爵との婚約が決まる。 一方、今まで男爵令嬢としての教育しか受けていなかったパミーナには急遽、王妃教育がほどこされるが全く進まない。 文句ばかり言うわがままなパミーナに、王宮の人々は愛想を尽かす。 そんな中「真実の愛」で結ばれた王太子だけが愛する妃パミーナの面倒を見るが、それは不幸の始まりだった。 周囲の忠告を聞かず「真実の愛」とやらを貫いた王太子の末路とは?

【完結】婚約破棄してやると言われたので迎え撃つことにした

灰銀猫
恋愛
「私、近いうちに婚約破棄されますわ」 親友の口から告げられた言葉に、アリーセは固まった。 言葉の主はアリーセの親友で、異母弟でもある第一王子の婚約者。この婚約は後ろ盾が弱い異母弟のために、王家が公爵家に頭を下げて取り付けたものだった。彼女と結婚しなければ異母弟の立太子は流れる可能性が高いのに、その異母弟は別の令嬢に夢中だという。 そしてその令嬢は、いつの間にか親友の義弟やアリーセの婚約者候補すらも篭絡していた。 婚約破棄は構わない。むしろ歓迎するが、彼らの望むような展開など許せない。 アリーセは親友と親友の義弟の婚約者と共に、婚約破棄を迎え撃つ準備を始めた。 R15は保険です。 タグは追加される可能性があります。 他サイトでも掲載しています。

無実の罪で聖女を追放した、王太子と国民のその後

柚木ゆず
恋愛
 ※6月30日本編完結いたしました。7月1日より番外編を投稿させていただきます。  聖女の祈りによって1000年以上豊作が続き、豊穣の国と呼ばれているザネラスエアル。そんなザネラスエアルは突如不作に襲われ、王太子グスターヴや国民たちは現聖女ビアンカが祈りを怠けたせいだと憤慨します。  ビアンカは否定したものの訴えが聞き入れられることはなく、聖女の資格剥奪と国外への追放が決定。彼女はまるで見世物のように大勢の前で連行され、国民から沢山の暴言と石をぶつけられながら、隣国に追放されてしまいました。  そうしてその後ザネラスエアルでは新たな聖女が誕生し、グスターヴや国民たちは『これで豊作が戻ってくる!』と喜んでいました。  ですが、これからやって来るのはそういったものではなく――

悪役断罪?そもそも何かしましたか?

SHIN
恋愛
明日から王城に最終王妃教育のために登城する、懇談会パーティーに参加中の私の目の前では多人数の男性に囲まれてちやほやされている少女がいた。 男性はたしか婚約者がいたり妻がいたりするのだけど、良いのかしら。 あら、あそこに居ますのは第二王子では、ないですか。 えっ、婚約破棄?別に構いませんが、怒られますよ。 勘違い王子と企み少女に巻き込まれたある少女の話し。

「期待外れ」という事で婚約破棄した私に何の用ですか? 「理想の妻(私の妹)」を愛でてくださいな。

百谷シカ
恋愛
「君ならもっとできると思っていたけどな。期待外れだよ」 私はトイファー伯爵令嬢エルミーラ・ヴェールマン。 上記の理由により、婚約者に棄てられた。 「ベリエス様ぁ、もうお会いできないんですかぁ…? ぐすん…」 「ああ、ユリアーナ。君とは離れられない。僕は君と結婚するのさ!」 「本当ですかぁ? 嬉しいです! キャハッ☆彡」 そして双子の妹ユリアーナが、私を蹴落とし、その方の妻になった。 プライドはズタズタ……(笑) ところが、1年後。 未だ跡継ぎの生まれない事に焦った元婚約者で現在義弟が泣きついて来た。 「君の妹はちょっと頭がおかしいんじゃないか? コウノトリを信じてるぞ!」 いえいえ、そういうのが純真無垢な理想の可愛い妻でしたよね? あなたが選んだ相手なので、どうぞ一生、愛でて魂すり減らしてくださいませ。

式前日に浮気現場を目撃してしまったので花嫁を交代したいと思います

おこめ
恋愛
式前日に一目だけでも婚約者に会いたいとやってきた邸で、婚約者のオリオンが浮気している現場を目撃してしまったキャス。 しかも浮気相手は従姉妹で幼馴染のミリーだった。 あんな男と結婚なんて嫌! よし花嫁を替えてやろう!というお話です。 オリオンはただのクズキモ男です。 ハッピーエンド。

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります

真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」 婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。  そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。  脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。  王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

処理中です...