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4.兄と妹と

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「クレーナ、ここにいたのか?」
「お兄様……それに、コーネリアも」

 私が庭で日向ぼっこしていると、兄であるガルネアスお兄様と妹のコーネリアがやって来た。
 屋敷に帰って来た時に、お父様とお母様にはそれぞれ挨拶をした。ただ、二人とは会っていない。丁度出掛けていたのだ。
 なんでも、領地内で行われている慈善事業に領主一家の一員として参加していたらしい。その帰りとなると、結構疲れているはずだろうに、わざわざ私のことを探してくれていたようである。

「お姉様、お父様から聞きましたよ。婚約破棄されたそうですね」
「ええ、実はそうなのよ」
「大丈夫ですか?」

 コーネリアは、ベンチに座っていた私の隣に素早くやって来て、隣に腰掛けた。
 妹は私の顔をそっと覗き込んで来る。婚約破棄によって、私が落ち込んでいないか心配してくれているようだ。

「大丈夫よ。その、実の所婚約破棄についてはもうどうでも良いと思っているの。それに関するショックというものは受けなかったわ」
「そうなのですか?」

 私はコーネリアに、自分の率直な現在の感情を告げた。
 正直な所、婚約破棄に関する衝撃というものは最早欠片も残っていない。そもそも言われた時もそこまで驚きはなかった。
 それよりもその後に言われたことの方が、私にとっては衝撃であった。今でもラカール様の身勝手さには、憤りを覚えているくらいだ。

「クレーナ、心優しきお前のことだ。どうせ、ラカール……というよりも、その浮気相手のことまで心配しているのだろう」
「え? あ、いや、それは……」

 そんな私の心中というものを、お兄様は察していた。
 コーネリアとは反対側の隣に座りながら、お兄様は遠くを見つめている。今回の件について、色々と考えているということだろうか。

「敢えて言っておこう。そのようなことは、下らないことだと。お前には関係がないことだ。一々気に病んでいても仕方ない」
「はい、わかっています」
「そもそも、ラカールの浮気相手というシャルーナ嬢がどのような者かもわからないだろう。案外、強かな女かもしれないぞ? 浮気とわかっていながらラカールと関係を持ったくらいだ。そのくらいの方がむしろしっくりと来る」
「心配する必要は、ないという訳ですか……」
「そう判断するべき状況だということだ。今はこの俺に従っておけ。それで何かあっても、俺を恨めばいい」

 お兄様は、私が背負っているもやもやを取り払おうとしてくれているようだった。
 その気遣いというものは、とてもありがたい。ただ、私の考えの責任をお兄様に背負わせようとは思わない。私は自分の判断で、一連の出来事を忘れるつもりだ。
 そもそもの話、私の心配というものは杞憂でしかないのかもしれない。ラカール様があのようないい加減な態度というものも、シャルーナ嬢とは案外相性が良い可能性もある訳だし。
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