4 / 24
4.兄と妹と
しおりを挟む
「クレーナ、ここにいたのか?」
「お兄様……それに、コーネリアも」
私が庭で日向ぼっこしていると、兄であるガルネアスお兄様と妹のコーネリアがやって来た。
屋敷に帰って来た時に、お父様とお母様にはそれぞれ挨拶をした。ただ、二人とは会っていない。丁度出掛けていたのだ。
なんでも、領地内で行われている慈善事業に領主一家の一員として参加していたらしい。その帰りとなると、結構疲れているはずだろうに、わざわざ私のことを探してくれていたようである。
「お姉様、お父様から聞きましたよ。婚約破棄されたそうですね」
「ええ、実はそうなのよ」
「大丈夫ですか?」
コーネリアは、ベンチに座っていた私の隣に素早くやって来て、隣に腰掛けた。
妹は私の顔をそっと覗き込んで来る。婚約破棄によって、私が落ち込んでいないか心配してくれているようだ。
「大丈夫よ。その、実の所婚約破棄についてはもうどうでも良いと思っているの。それに関するショックというものは受けなかったわ」
「そうなのですか?」
私はコーネリアに、自分の率直な現在の感情を告げた。
正直な所、婚約破棄に関する衝撃というものは最早欠片も残っていない。そもそも言われた時もそこまで驚きはなかった。
それよりもその後に言われたことの方が、私にとっては衝撃であった。今でもラカール様の身勝手さには、憤りを覚えているくらいだ。
「クレーナ、心優しきお前のことだ。どうせ、ラカール……というよりも、その浮気相手のことまで心配しているのだろう」
「え? あ、いや、それは……」
そんな私の心中というものを、お兄様は察していた。
コーネリアとは反対側の隣に座りながら、お兄様は遠くを見つめている。今回の件について、色々と考えているということだろうか。
「敢えて言っておこう。そのようなことは、下らないことだと。お前には関係がないことだ。一々気に病んでいても仕方ない」
「はい、わかっています」
「そもそも、ラカールの浮気相手というシャルーナ嬢がどのような者かもわからないだろう。案外、強かな女かもしれないぞ? 浮気とわかっていながらラカールと関係を持ったくらいだ。そのくらいの方がむしろしっくりと来る」
「心配する必要は、ないという訳ですか……」
「そう判断するべき状況だということだ。今はこの俺に従っておけ。それで何かあっても、俺を恨めばいい」
お兄様は、私が背負っているもやもやを取り払おうとしてくれているようだった。
その気遣いというものは、とてもありがたい。ただ、私の考えの責任をお兄様に背負わせようとは思わない。私は自分の判断で、一連の出来事を忘れるつもりだ。
そもそもの話、私の心配というものは杞憂でしかないのかもしれない。ラカール様があのようないい加減な態度というものも、シャルーナ嬢とは案外相性が良い可能性もある訳だし。
「お兄様……それに、コーネリアも」
私が庭で日向ぼっこしていると、兄であるガルネアスお兄様と妹のコーネリアがやって来た。
屋敷に帰って来た時に、お父様とお母様にはそれぞれ挨拶をした。ただ、二人とは会っていない。丁度出掛けていたのだ。
なんでも、領地内で行われている慈善事業に領主一家の一員として参加していたらしい。その帰りとなると、結構疲れているはずだろうに、わざわざ私のことを探してくれていたようである。
「お姉様、お父様から聞きましたよ。婚約破棄されたそうですね」
「ええ、実はそうなのよ」
「大丈夫ですか?」
コーネリアは、ベンチに座っていた私の隣に素早くやって来て、隣に腰掛けた。
妹は私の顔をそっと覗き込んで来る。婚約破棄によって、私が落ち込んでいないか心配してくれているようだ。
「大丈夫よ。その、実の所婚約破棄についてはもうどうでも良いと思っているの。それに関するショックというものは受けなかったわ」
「そうなのですか?」
私はコーネリアに、自分の率直な現在の感情を告げた。
正直な所、婚約破棄に関する衝撃というものは最早欠片も残っていない。そもそも言われた時もそこまで驚きはなかった。
それよりもその後に言われたことの方が、私にとっては衝撃であった。今でもラカール様の身勝手さには、憤りを覚えているくらいだ。
「クレーナ、心優しきお前のことだ。どうせ、ラカール……というよりも、その浮気相手のことまで心配しているのだろう」
「え? あ、いや、それは……」
そんな私の心中というものを、お兄様は察していた。
コーネリアとは反対側の隣に座りながら、お兄様は遠くを見つめている。今回の件について、色々と考えているということだろうか。
「敢えて言っておこう。そのようなことは、下らないことだと。お前には関係がないことだ。一々気に病んでいても仕方ない」
「はい、わかっています」
「そもそも、ラカールの浮気相手というシャルーナ嬢がどのような者かもわからないだろう。案外、強かな女かもしれないぞ? 浮気とわかっていながらラカールと関係を持ったくらいだ。そのくらいの方がむしろしっくりと来る」
「心配する必要は、ないという訳ですか……」
「そう判断するべき状況だということだ。今はこの俺に従っておけ。それで何かあっても、俺を恨めばいい」
お兄様は、私が背負っているもやもやを取り払おうとしてくれているようだった。
その気遣いというものは、とてもありがたい。ただ、私の考えの責任をお兄様に背負わせようとは思わない。私は自分の判断で、一連の出来事を忘れるつもりだ。
そもそもの話、私の心配というものは杞憂でしかないのかもしれない。ラカール様があのようないい加減な態度というものも、シャルーナ嬢とは案外相性が良い可能性もある訳だし。
371
お気に入りに追加
778
あなたにおすすめの小説

【完結】「別れようって言っただけなのに。」そう言われましてももう遅いですよ。
まりぃべる
恋愛
「俺たちもう終わりだ。別れよう。」
そう言われたので、その通りにしたまでですが何か?
自分の言葉には、責任を持たなければいけませんわよ。
☆★
感想を下さった方ありがとうございますm(__)m
とても、嬉しいです。

婚約破棄ってこんな日にするのね。私は何とお答えすればよろしいのでしょうか。
まりぃべる
恋愛
私は、ユファ=ライヴァン子爵令嬢です。
チルチェイン=ヤーヌス伯爵令息が、婚約者だったのですけれど、婚約破棄したいと言われました。
こんな日に!?
私は、何とお答えすれば良いのでしょう…。
☆現実とは違う、この作品ならではの世界観で書いております。
緩い設定だと思ってお読み下さると幸いです。

【完結】身分に見合う振る舞いをしていただけですが…ではもう止めますからどうか平穏に暮らさせて下さい。
まりぃべる
恋愛
私は公爵令嬢。
この国の高位貴族であるのだから身分に相応しい振る舞いをしないとね。
ちゃんと立場を理解できていない人には、私が教えて差し上げませんと。
え?口うるさい?婚約破棄!?
そうですか…では私は修道院に行って皆様から離れますからどうぞお幸せに。
☆
あくまでもまりぃべるの世界観です。王道のお話がお好みの方は、合わないかと思われますので、そこのところ理解いただき読んでいただけると幸いです。
☆★
全21話です。
出来上がってますので随時更新していきます。
途中、区切れず長い話もあってすみません。
読んで下さるとうれしいです。
婚約破棄されましたが、帝国皇女なので元婚約者は投獄します
けんゆう
ファンタジー
「お前のような下級貴族の養女など、もう不要だ!」
五年間、婚約者として尽くしてきたフィリップに、冷たく告げられたソフィア。
他の貴族たちからも嘲笑と罵倒を浴び、社交界から追放されかける。
だが、彼らは知らなかった――。
ソフィアは、ただの下級貴族の養女ではない。
そんな彼女の元に届いたのは、隣国からお兄様が、貿易利権を手土産にやってくる知らせ。
「フィリップ様、あなたが何を捨てたのかーー思い知らせて差し上げますわ!」
逆襲を決意し、華麗に着飾ってパーティーに乗り込んだソフィア。
「妹を侮辱しただと? 極刑にすべきはお前たちだ!」
ブチギレるお兄様。
貴族たちは青ざめ、王国は崩壊寸前!?
「ざまぁ」どころか 国家存亡の危機 に!?
果たしてソフィアはお兄様の暴走を止め、自由な未来を手に入れられるか?
「私の未来は、私が決めます!」
皇女の誇りをかけた逆転劇、ここに開幕!

自由に生きたいと私の婚約者と駆け落ちした姉が、婚約破棄され家に戻って来ました。
coco
恋愛
自由に生きたいと私の婚約者と駆け落ちした姉。
そこまでしたのに、婚約破棄され家に戻って来た。
この家に置いて欲しいと言う姉に私は─?
私の入る余地なんてないことはわかってる。だけど……。
さくしゃ
恋愛
キャロルは知っていた。
許嫁であるリオンと、親友のサンが互いを想い合っていることを。
幼い頃からずっと想ってきたリオン、失いたくない大切な親友であるサン。キャロルは苦悩の末に、リオンへの想いを封じ、身を引くと決めていた——はずだった。
(ああ、もう、)
やり過ごせると思ってた。でも、そんなことを言われたら。
(ずるいよ……)
リオンはサンのことだけを見ていると思っていた。けれど——違った。
こんな私なんかのことを。
友情と恋情の狭間で揺れ動くキャロル、リオン、サンの想い。
彼らが最後に選ぶ答えとは——?
⚠️好みが非常に分かれる作品となっております。

【完結】婚約者は私を大切にしてくれるけれど、好きでは無かったみたい。
まりぃべる
恋愛
伯爵家の娘、クラーラ。彼女の婚約者は、いつも優しくエスコートしてくれる。そして蕩けるような甘い言葉をくれる。
少しだけ疑問に思う部分もあるけれど、彼が不器用なだけなのだと思っていた。
そんな甘い言葉に騙されて、きっと幸せな結婚生活が送れると思ったのに、それは偽りだった……。
そんな人と結婚生活を送りたくないと両親に相談すると、それに向けて動いてくれる。
人生を変える人にも出会い、学院生活を送りながら新しい一歩を踏み出していくお話。
☆※感想頂いたからからのご指摘により、この一文を追加します。
王道(?)の、世間にありふれたお話とは多分一味違います。
王道のお話がいい方は、引っ掛かるご様子ですので、申し訳ありませんが引き返して下さいませ。
☆現実にも似たような名前、言い回し、言葉、表現などがあると思いますが、作者の世界観の為、現実世界とは少し異なります。
作者の、緩い世界観だと思って頂けると幸いです。
☆以前投稿した作品の中に出てくる子がチラッと出てきます。分かる人は少ないと思いますが、万が一分かって下さった方がいましたら嬉しいです。(全く物語には響きませんので、読んでいなくても全く問題ありません。)
☆完結してますので、随時更新していきます。番外編も含めて全35話です。
★感想いただきまして、さすがにちょっと可哀想かなと最後の35話、文を少し付けたしました。私めの表現の力不足でした…それでも読んで下さいまして嬉しいです。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる