4 / 13
4.兄と妹と
しおりを挟む
「クレーナ、ここにいたのか?」
「お兄様……それに、コーネリアも」
私が庭で日向ぼっこしていると、兄であるガルネアスお兄様と妹のコーネリアがやって来た。
屋敷に帰って来た時に、お父様とお母様にはそれぞれ挨拶をした。ただ、二人とは会っていない。丁度出掛けていたのだ。
なんでも、領地内で行われている慈善事業に領主一家の一員として参加していたらしい。その帰りとなると、結構疲れているはずだろうに、わざわざ私のことを探してくれていたようである。
「お姉様、お父様から聞きましたよ。婚約破棄されたそうですね」
「ええ、実はそうなのよ」
「大丈夫ですか?」
コーネリアは、ベンチに座っていた私の隣に素早くやって来て、隣に腰掛けた。
妹は私の顔をそっと覗き込んで来る。婚約破棄によって、私が落ち込んでいないか心配してくれているようだ。
「大丈夫よ。その、実の所婚約破棄についてはもうどうでも良いと思っているの。それに関するショックというものは受けなかったわ」
「そうなのですか?」
私はコーネリアに、自分の率直な現在の感情を告げた。
正直な所、婚約破棄に関する衝撃というものは最早欠片も残っていない。そもそも言われた時もそこまで驚きはなかった。
それよりもその後に言われたことの方が、私にとっては衝撃であった。今でもラカール様の身勝手さには、憤りを覚えているくらいだ。
「クレーナ、心優しきお前のことだ。どうせ、ラカール……というよりも、その浮気相手のことまで心配しているのだろう」
「え? あ、いや、それは……」
そんな私の心中というものを、お兄様は察していた。
コーネリアとは反対側の隣に座りながら、お兄様は遠くを見つめている。今回の件について、色々と考えているということだろうか。
「敢えて言っておこう。そのようなことは、下らないことだと。お前には関係がないことだ。一々気に病んでいても仕方ない」
「はい、わかっています」
「そもそも、ラカールの浮気相手というシャルーナ嬢がどのような者かもわからないだろう。案外、強かな女かもしれないぞ? 浮気とわかっていながらラカールと関係を持ったくらいだ。そのくらいの方がむしろしっくりと来る」
「心配する必要は、ないという訳ですか……」
「そう判断するべき状況だということだ。今はこの俺に従っておけ。それで何かあっても、俺を恨めばいい」
お兄様は、私が背負っているもやもやを取り払おうとしてくれているようだった。
その気遣いというものは、とてもありがたい。ただ、私の考えの責任をお兄様に背負わせようとは思わない。私は自分の判断で、一連の出来事を忘れるつもりだ。
そもそもの話、私の心配というものは杞憂でしかないのかもしれない。ラカール様があのようないい加減な態度というものも、シャルーナ嬢とは案外相性が良い可能性もある訳だし。
「お兄様……それに、コーネリアも」
私が庭で日向ぼっこしていると、兄であるガルネアスお兄様と妹のコーネリアがやって来た。
屋敷に帰って来た時に、お父様とお母様にはそれぞれ挨拶をした。ただ、二人とは会っていない。丁度出掛けていたのだ。
なんでも、領地内で行われている慈善事業に領主一家の一員として参加していたらしい。その帰りとなると、結構疲れているはずだろうに、わざわざ私のことを探してくれていたようである。
「お姉様、お父様から聞きましたよ。婚約破棄されたそうですね」
「ええ、実はそうなのよ」
「大丈夫ですか?」
コーネリアは、ベンチに座っていた私の隣に素早くやって来て、隣に腰掛けた。
妹は私の顔をそっと覗き込んで来る。婚約破棄によって、私が落ち込んでいないか心配してくれているようだ。
「大丈夫よ。その、実の所婚約破棄についてはもうどうでも良いと思っているの。それに関するショックというものは受けなかったわ」
「そうなのですか?」
私はコーネリアに、自分の率直な現在の感情を告げた。
正直な所、婚約破棄に関する衝撃というものは最早欠片も残っていない。そもそも言われた時もそこまで驚きはなかった。
それよりもその後に言われたことの方が、私にとっては衝撃であった。今でもラカール様の身勝手さには、憤りを覚えているくらいだ。
「クレーナ、心優しきお前のことだ。どうせ、ラカール……というよりも、その浮気相手のことまで心配しているのだろう」
「え? あ、いや、それは……」
そんな私の心中というものを、お兄様は察していた。
コーネリアとは反対側の隣に座りながら、お兄様は遠くを見つめている。今回の件について、色々と考えているということだろうか。
「敢えて言っておこう。そのようなことは、下らないことだと。お前には関係がないことだ。一々気に病んでいても仕方ない」
「はい、わかっています」
「そもそも、ラカールの浮気相手というシャルーナ嬢がどのような者かもわからないだろう。案外、強かな女かもしれないぞ? 浮気とわかっていながらラカールと関係を持ったくらいだ。そのくらいの方がむしろしっくりと来る」
「心配する必要は、ないという訳ですか……」
「そう判断するべき状況だということだ。今はこの俺に従っておけ。それで何かあっても、俺を恨めばいい」
お兄様は、私が背負っているもやもやを取り払おうとしてくれているようだった。
その気遣いというものは、とてもありがたい。ただ、私の考えの責任をお兄様に背負わせようとは思わない。私は自分の判断で、一連の出来事を忘れるつもりだ。
そもそもの話、私の心配というものは杞憂でしかないのかもしれない。ラカール様があのようないい加減な態度というものも、シャルーナ嬢とは案外相性が良い可能性もある訳だし。
206
お気に入りに追加
646
あなたにおすすめの小説
【完結】4人の令嬢とその婚約者達
cc.
恋愛
仲の良い4人の令嬢には、それぞれ幼い頃から決められた婚約者がいた。
優れた才能を持つ婚約者達は、騎士団に入り活躍をみせると、その評判は瞬く間に広まっていく。
年に、数回だけ行われる婚約者との交流も活躍すればする程、回数は減り気がつけばもう数年以上もお互い顔を合わせていなかった。
そんな中、4人の令嬢が街にお忍びで遊びに来たある日…
有名な娼館の前で話している男女数組を見かける。
真昼間から、騎士団の制服で娼館に来ているなんて…
呆れていると、そのうちの1人…
いや、もう1人…
あれ、あと2人も…
まさかの、自分たちの婚約者であった。
貴方達が、好き勝手するならば、私達も自由に生きたい!
そう決意した4人の令嬢の、我慢をやめたお話である。
*20話完結予定です。
【9話完結】お茶会? 茶番の間違いでしょ?『毒を入れるのはやり過ぎです。婚約破棄を言い出す度胸もないなら私から申し上げますね』
西東友一
恋愛
「お姉様もいずれ王妃になるなら、お茶のマナーは大丈夫ですか?」
「ええ、もちろんよ」
「でも、心配ですよね、カイザー王子?」
「ああ」
「じゃあ、お茶会をしましょう。私がお茶を入れますから」
お茶会?
茶番の間違いでしょ?
私は妹と私の婚約者のカイザー第一王子が浮気しているのを知っている。
そして、二人が私を殺そうとしていることも―――
【完結】真実の愛とやらに目覚めてしまった王太子のその後
綾森れん
恋愛
レオノーラ・ドゥランテ侯爵令嬢は夜会にて婚約者の王太子から、
「真実の愛に目覚めた」
と衝撃の告白をされる。
王太子の愛のお相手は男爵令嬢パミーナ。
婚約は破棄され、レオノーラは王太子の弟である公爵との婚約が決まる。
一方、今まで男爵令嬢としての教育しか受けていなかったパミーナには急遽、王妃教育がほどこされるが全く進まない。
文句ばかり言うわがままなパミーナに、王宮の人々は愛想を尽かす。
そんな中「真実の愛」で結ばれた王太子だけが愛する妃パミーナの面倒を見るが、それは不幸の始まりだった。
周囲の忠告を聞かず「真実の愛」とやらを貫いた王太子の末路とは?
断罪される一年前に時間を戻せたので、もう愛しません
天宮有
恋愛
侯爵令嬢の私ルリサは、元婚約者のゼノラス王子に断罪されて処刑が決まる。
私はゼノラスの命令を聞いていただけなのに、捨てられてしまったようだ。
処刑される前日、私は今まで試せなかった時間を戻す魔法を使う。
魔法は成功して一年前に戻ったから、私はゼノラスを許しません。
「期待外れ」という事で婚約破棄した私に何の用ですか? 「理想の妻(私の妹)」を愛でてくださいな。
百谷シカ
恋愛
「君ならもっとできると思っていたけどな。期待外れだよ」
私はトイファー伯爵令嬢エルミーラ・ヴェールマン。
上記の理由により、婚約者に棄てられた。
「ベリエス様ぁ、もうお会いできないんですかぁ…? ぐすん…」
「ああ、ユリアーナ。君とは離れられない。僕は君と結婚するのさ!」
「本当ですかぁ? 嬉しいです! キャハッ☆彡」
そして双子の妹ユリアーナが、私を蹴落とし、その方の妻になった。
プライドはズタズタ……(笑)
ところが、1年後。
未だ跡継ぎの生まれない事に焦った元婚約者で現在義弟が泣きついて来た。
「君の妹はちょっと頭がおかしいんじゃないか? コウノトリを信じてるぞ!」
いえいえ、そういうのが純真無垢な理想の可愛い妻でしたよね?
あなたが選んだ相手なので、どうぞ一生、愛でて魂すり減らしてくださいませ。
【完結】お父様。私、悪役令嬢なんですって。何ですかそれって。
紅月
恋愛
小説家になろうで書いていたものを加筆、訂正したリメイク版です。
「何故、私の娘が処刑されなければならないんだ」
最愛の娘が冤罪で処刑された。
時を巻き戻し、復讐を誓う家族。
娘は前と違う人生を歩み、家族は元凶へ復讐の手を伸ばすが、巻き戻す前と違う展開のため様々な事が見えてきた。
式前日に浮気現場を目撃してしまったので花嫁を交代したいと思います
おこめ
恋愛
式前日に一目だけでも婚約者に会いたいとやってきた邸で、婚約者のオリオンが浮気している現場を目撃してしまったキャス。
しかも浮気相手は従姉妹で幼馴染のミリーだった。
あんな男と結婚なんて嫌!
よし花嫁を替えてやろう!というお話です。
オリオンはただのクズキモ男です。
ハッピーエンド。
冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります
真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」
婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。
そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。
脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。
王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる