浮気して婚約破棄したあなたが、私の新しい婚約者にとやかく言う権利があるとお思いですか?

木山楽斗

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3.父への報告

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「……もちろん、良いことであるとは言い難いな」

 アガート伯爵家の屋敷に戻って来た私は、早速お父様に婚約破棄されたということを伝えた。
 それを受け止めたお父様は、ゆっくりとため息をつき、頭を抱えている。当然のことながら、これは大きな問題であったようだ。
 婚約というものは、それなりの覚悟を持って結ぶものである。それを破棄されるということは、大きな損害に繋がっていく。

「もっとも、今回に関してはラカールの身勝手な婚約破棄だ。こちらは被害者ということになる。傷の中でも浅い方だ」
「まあ、そうですね。こちらには何も非はない訳ですし……」

 婚約破棄というものは、した者が非難されるのが世の常だ。もちろん、された側に余程ひどい理由でもあれば話は別だが、今回の場合はそうではない。
 今回の婚約破棄は、ラカール様及びウォンデン伯爵家側に非がある。私達は、堂々としていればいいのだ。
 こういった時は、何故か被害者の方も非難されることもある。それらを躱すためにも、しっかりと主張していかなければならないことだ。

「今回のことは、ウォンデン伯爵家も正直に話さざるを得まい。ラカールの子供というなら、その子供はウォンデン伯爵家の正当なる後継者になり得る存在だ。その存在を公表しないということはないだろう」
「まあ、私との婚約も破棄した訳ですし、二人が結ばれることへの体裁上の問題は、ない訳ですしね……」
「む? 何か他に問題があるような言い方だな?」
「え? ああいえ、なんでもありません」

 お父様の言葉に、私は目をそらすことになった。
 大まかなことは伝えたが、ラカール様の態度などをお父様には伝えていない。それは余計な情報でしかないからだ。
 結局の所、ラカール様とシャルーナ・エレスビー子爵令嬢の事情は、私達には関係がないことである。個人的には色々と心配しているが、わざわざ伝える必要もないだろう。

「……まあ、当然のことながら、ウォンデン伯爵家には補償を求めるとしよう。しかし問題は、お前の婚約のことだな」
「あ、そうですよね。新しい相手を見つけなければならない訳ですし……」
「難しい問題ではあるな。だが、その辺りは私が何とかすることだ。お前は特に気にする必要はない。それよりも、色々と疲れただろう。ゆっくりと休むといい」
「お父様……ありがとうございます」

 お父様の気遣いに、私はゆっくりとお礼を述べた。
 色々とあったため、少し疲れている。せっかくなので、しっかりと休ませてもらうとしよう。どうせしばらくは、暇だろうし。
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