浮気して婚約破棄したあなたが、私の新しい婚約者にとやかく言う権利があるとお思いですか?

木山楽斗

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2.身勝手な言い分

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「ラカール様、本当なのですか?」
「ああ、紛れもない事実だ。僕だって信じたくはないが……シャルーナ・エレスビー子爵令嬢との間に、子供ができた」

 ラカール様は、ゆっくりとため息をつきながら私に事実を告げてきた。
 それを受け入れるということには、それなりに時間を有した。いくらなんでも、その事実は今の私に飲み込み切れるものではない。
 だがそれが事実であるというなら、受け止めるしかないのだろう。私はとりあえず深呼吸をして、自分の中で状況を整理していく。

「まさか、こんな年齢で父親になるなんて、思ってもいなかったことだ。どうしてこんなことになったのか、正直まだ信じられていない」
「……」

 そこで私の耳に入って来たのは、ラカール様の言葉だった。
 段々と冷静になってきた私には、その彼の言葉を考える余裕というものが生まれている。ラカール様の今回の件に対する態度というものに、私は段々と怒りが芽生えてきた。

 私との婚約破棄などは、最早どうでも良いことである。子供ができたというなら、その判断は当然ともいえるものだ。
 しかし、彼は何を嫌がっているのだろうか。それが私には、理解できないことだった。責任を取る覚悟というものを決めていない。この状況で、何をうだうだと言っているのだろうか。

「ラカール様、あなたは何か勘違いをしていませんか?」
「勘違い?」
「あなたは、さも自分が被害者のように語っていますが、それは大きな間違いです。あなたはただ、自分勝手な行動をしていただけではありませんか。その行動の責任を、取らなければならない立場にあります。それをあなたは、正しく理解するべきです」
「……」

 私の言葉に対して、ラカール様は不機嫌そうな顔をしていた。
 やはり彼は、わかりやすい人である。その不快さというものを、隠そうともしない。
 しかし、ここでそういった表情をされるのは、こちらとしても心外である。彼はどうやら、私が思っていた以上に身勝手な人間だったようだ。

「……どうせ君とは婚約破棄するんだ。そんな君にとやかく言われる筋合いはない」
「な、なんですって?」
「僕と彼女との関係は、最早君には関係がないことだと言っているんだ。とにかく君との話は、もう終わりだ。これ以上、ここにいられても困る。帰ってもらいたい」

 ラカール様は、私に対して鋭い視線を向けてきた。
 その視線には、私のことを責める意図が読み取れた。何故この状況で、私を責められるのかは理解できないが。
 ただ彼の言うことには、一理ないという訳でもなかった。結局の所、彼のことなど私には最早関係がないことだ。言われた通り、帰らせてもらうとしよう。
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