2 / 24
2.身勝手な言い分
しおりを挟む
「ラカール様、本当なのですか?」
「ああ、紛れもない事実だ。僕だって信じたくはないが……シャルーナ・エレスビー子爵令嬢との間に、子供ができた」
ラカール様は、ゆっくりとため息をつきながら私に事実を告げてきた。
それを受け入れるということには、それなりに時間を有した。いくらなんでも、その事実は今の私に飲み込み切れるものではない。
だがそれが事実であるというなら、受け止めるしかないのだろう。私はとりあえず深呼吸をして、自分の中で状況を整理していく。
「まさか、こんな年齢で父親になるなんて、思ってもいなかったことだ。どうしてこんなことになったのか、正直まだ信じられていない」
「……」
そこで私の耳に入って来たのは、ラカール様の言葉だった。
段々と冷静になってきた私には、その彼の言葉を考える余裕というものが生まれている。ラカール様の今回の件に対する態度というものに、私は段々と怒りが芽生えてきた。
私との婚約破棄などは、最早どうでも良いことである。子供ができたというなら、その判断は当然ともいえるものだ。
しかし、彼は何を嫌がっているのだろうか。それが私には、理解できないことだった。責任を取る覚悟というものを決めていない。この状況で、何をうだうだと言っているのだろうか。
「ラカール様、あなたは何か勘違いをしていませんか?」
「勘違い?」
「あなたは、さも自分が被害者のように語っていますが、それは大きな間違いです。あなたはただ、自分勝手な行動をしていただけではありませんか。その行動の責任を、取らなければならない立場にあります。それをあなたは、正しく理解するべきです」
「……」
私の言葉に対して、ラカール様は不機嫌そうな顔をしていた。
やはり彼は、わかりやすい人である。その不快さというものを、隠そうともしない。
しかし、ここでそういった表情をされるのは、こちらとしても心外である。彼はどうやら、私が思っていた以上に身勝手な人間だったようだ。
「……どうせ君とは婚約破棄するんだ。そんな君にとやかく言われる筋合いはない」
「な、なんですって?」
「僕と彼女との関係は、最早君には関係がないことだと言っているんだ。とにかく君との話は、もう終わりだ。これ以上、ここにいられても困る。帰ってもらいたい」
ラカール様は、私に対して鋭い視線を向けてきた。
その視線には、私のことを責める意図が読み取れた。何故この状況で、私を責められるのかは理解できないが。
ただ彼の言うことには、一理ないという訳でもなかった。結局の所、彼のことなど私には最早関係がないことだ。言われた通り、帰らせてもらうとしよう。
「ああ、紛れもない事実だ。僕だって信じたくはないが……シャルーナ・エレスビー子爵令嬢との間に、子供ができた」
ラカール様は、ゆっくりとため息をつきながら私に事実を告げてきた。
それを受け入れるということには、それなりに時間を有した。いくらなんでも、その事実は今の私に飲み込み切れるものではない。
だがそれが事実であるというなら、受け止めるしかないのだろう。私はとりあえず深呼吸をして、自分の中で状況を整理していく。
「まさか、こんな年齢で父親になるなんて、思ってもいなかったことだ。どうしてこんなことになったのか、正直まだ信じられていない」
「……」
そこで私の耳に入って来たのは、ラカール様の言葉だった。
段々と冷静になってきた私には、その彼の言葉を考える余裕というものが生まれている。ラカール様の今回の件に対する態度というものに、私は段々と怒りが芽生えてきた。
私との婚約破棄などは、最早どうでも良いことである。子供ができたというなら、その判断は当然ともいえるものだ。
しかし、彼は何を嫌がっているのだろうか。それが私には、理解できないことだった。責任を取る覚悟というものを決めていない。この状況で、何をうだうだと言っているのだろうか。
「ラカール様、あなたは何か勘違いをしていませんか?」
「勘違い?」
「あなたは、さも自分が被害者のように語っていますが、それは大きな間違いです。あなたはただ、自分勝手な行動をしていただけではありませんか。その行動の責任を、取らなければならない立場にあります。それをあなたは、正しく理解するべきです」
「……」
私の言葉に対して、ラカール様は不機嫌そうな顔をしていた。
やはり彼は、わかりやすい人である。その不快さというものを、隠そうともしない。
しかし、ここでそういった表情をされるのは、こちらとしても心外である。彼はどうやら、私が思っていた以上に身勝手な人間だったようだ。
「……どうせ君とは婚約破棄するんだ。そんな君にとやかく言われる筋合いはない」
「な、なんですって?」
「僕と彼女との関係は、最早君には関係がないことだと言っているんだ。とにかく君との話は、もう終わりだ。これ以上、ここにいられても困る。帰ってもらいたい」
ラカール様は、私に対して鋭い視線を向けてきた。
その視線には、私のことを責める意図が読み取れた。何故この状況で、私を責められるのかは理解できないが。
ただ彼の言うことには、一理ないという訳でもなかった。結局の所、彼のことなど私には最早関係がないことだ。言われた通り、帰らせてもらうとしよう。
335
お気に入りに追加
778
あなたにおすすめの小説

【完結】「別れようって言っただけなのに。」そう言われましてももう遅いですよ。
まりぃべる
恋愛
「俺たちもう終わりだ。別れよう。」
そう言われたので、その通りにしたまでですが何か?
自分の言葉には、責任を持たなければいけませんわよ。
☆★
感想を下さった方ありがとうございますm(__)m
とても、嬉しいです。

婚約破棄ってこんな日にするのね。私は何とお答えすればよろしいのでしょうか。
まりぃべる
恋愛
私は、ユファ=ライヴァン子爵令嬢です。
チルチェイン=ヤーヌス伯爵令息が、婚約者だったのですけれど、婚約破棄したいと言われました。
こんな日に!?
私は、何とお答えすれば良いのでしょう…。
☆現実とは違う、この作品ならではの世界観で書いております。
緩い設定だと思ってお読み下さると幸いです。

【完結】身分に見合う振る舞いをしていただけですが…ではもう止めますからどうか平穏に暮らさせて下さい。
まりぃべる
恋愛
私は公爵令嬢。
この国の高位貴族であるのだから身分に相応しい振る舞いをしないとね。
ちゃんと立場を理解できていない人には、私が教えて差し上げませんと。
え?口うるさい?婚約破棄!?
そうですか…では私は修道院に行って皆様から離れますからどうぞお幸せに。
☆
あくまでもまりぃべるの世界観です。王道のお話がお好みの方は、合わないかと思われますので、そこのところ理解いただき読んでいただけると幸いです。
☆★
全21話です。
出来上がってますので随時更新していきます。
途中、区切れず長い話もあってすみません。
読んで下さるとうれしいです。
婚約破棄されましたが、帝国皇女なので元婚約者は投獄します
けんゆう
ファンタジー
「お前のような下級貴族の養女など、もう不要だ!」
五年間、婚約者として尽くしてきたフィリップに、冷たく告げられたソフィア。
他の貴族たちからも嘲笑と罵倒を浴び、社交界から追放されかける。
だが、彼らは知らなかった――。
ソフィアは、ただの下級貴族の養女ではない。
そんな彼女の元に届いたのは、隣国からお兄様が、貿易利権を手土産にやってくる知らせ。
「フィリップ様、あなたが何を捨てたのかーー思い知らせて差し上げますわ!」
逆襲を決意し、華麗に着飾ってパーティーに乗り込んだソフィア。
「妹を侮辱しただと? 極刑にすべきはお前たちだ!」
ブチギレるお兄様。
貴族たちは青ざめ、王国は崩壊寸前!?
「ざまぁ」どころか 国家存亡の危機 に!?
果たしてソフィアはお兄様の暴走を止め、自由な未来を手に入れられるか?
「私の未来は、私が決めます!」
皇女の誇りをかけた逆転劇、ここに開幕!

自由に生きたいと私の婚約者と駆け落ちした姉が、婚約破棄され家に戻って来ました。
coco
恋愛
自由に生きたいと私の婚約者と駆け落ちした姉。
そこまでしたのに、婚約破棄され家に戻って来た。
この家に置いて欲しいと言う姉に私は─?
私の入る余地なんてないことはわかってる。だけど……。
さくしゃ
恋愛
キャロルは知っていた。
許嫁であるリオンと、親友のサンが互いを想い合っていることを。
幼い頃からずっと想ってきたリオン、失いたくない大切な親友であるサン。キャロルは苦悩の末に、リオンへの想いを封じ、身を引くと決めていた——はずだった。
(ああ、もう、)
やり過ごせると思ってた。でも、そんなことを言われたら。
(ずるいよ……)
リオンはサンのことだけを見ていると思っていた。けれど——違った。
こんな私なんかのことを。
友情と恋情の狭間で揺れ動くキャロル、リオン、サンの想い。
彼らが最後に選ぶ答えとは——?
⚠️好みが非常に分かれる作品となっております。

【完結】婚約者は私を大切にしてくれるけれど、好きでは無かったみたい。
まりぃべる
恋愛
伯爵家の娘、クラーラ。彼女の婚約者は、いつも優しくエスコートしてくれる。そして蕩けるような甘い言葉をくれる。
少しだけ疑問に思う部分もあるけれど、彼が不器用なだけなのだと思っていた。
そんな甘い言葉に騙されて、きっと幸せな結婚生活が送れると思ったのに、それは偽りだった……。
そんな人と結婚生活を送りたくないと両親に相談すると、それに向けて動いてくれる。
人生を変える人にも出会い、学院生活を送りながら新しい一歩を踏み出していくお話。
☆※感想頂いたからからのご指摘により、この一文を追加します。
王道(?)の、世間にありふれたお話とは多分一味違います。
王道のお話がいい方は、引っ掛かるご様子ですので、申し訳ありませんが引き返して下さいませ。
☆現実にも似たような名前、言い回し、言葉、表現などがあると思いますが、作者の世界観の為、現実世界とは少し異なります。
作者の、緩い世界観だと思って頂けると幸いです。
☆以前投稿した作品の中に出てくる子がチラッと出てきます。分かる人は少ないと思いますが、万が一分かって下さった方がいましたら嬉しいです。(全く物語には響きませんので、読んでいなくても全く問題ありません。)
☆完結してますので、随時更新していきます。番外編も含めて全35話です。
★感想いただきまして、さすがにちょっと可哀想かなと最後の35話、文を少し付けたしました。私めの表現の力不足でした…それでも読んで下さいまして嬉しいです。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる