本当に妹のことを愛しているなら、落ちぶれた彼女に寄り添うべきなのではありませんか?

木山楽斗

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11.父への報告

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 ラメルトン伯爵家の屋敷に戻って来た私は、早速お父様の部屋に行った。
 イネリアはまだ帰って来ていないようだが、既に彼女の手の使用人が話は通しているのだろう。お父様は事情を理解しているようだった。

「……という訳で、私は婚約破棄されました。そしてイネリアが、ロンベルト様と婚約しているのです。彼女は、ラメルトン伯爵家を手に入れたいと思っているようです」
「なるほど……」

 お父様は、私の言葉にゆっくりと頷いた。
 正直な所、このお父様という人のことを私はよくわかっていない。貴族としてしっかりした人という印象はあるのだが、今回の件にどのような決着をつけるだろうか。
 恐らく、イネリアもそれはわかっていないだろう。自信を持っていたような気はするが、それでも確信まではできていないはずである。

「使用人から、イネリアからの意見は既に預かっている。お前が言っていることは、それとは細部は異なっているが大筋は同じだ。要するにイネリアは、今回の婚約をお前との婚約ではなく自分との婚約に移し替えるように言っている。まあ、それ自体は別に構わん」
「か、構わないのですか?」
「落ち着け。別に二人の婚約については、反対する理由などはないということだ。勝手にすれば良いと思っている。もちろん、それはラメルトン伯爵家の当主としてロンベルトを迎え入れるということとは、話は別だがな」

 お父様の言葉に、私は一瞬ひどく動揺することになった。
 しかしさらなる発言に、私は安心する。どうやらお父様は、あのロンベルト様を当主に据えようなんてつもりはないらしい。

「当然のことだ。お前のことを平然と裏切るような者に、ラメルトン伯爵家を背負わせて良い訳がないだろう。そもそもの話、イネリアは駄目だ」
「駄目?」
「奴は下らない感情で暴走する所がある。このラメルトン伯爵家を背負う者としては、前々から不適切だと思っていた。我々貴族は、感情を律する必要がある。イネリアにはそれができない。私はそれを問題だと思っている」

 私は把握していなかったが、お父様はイネリアのことをよくわかっていたようだった。
 確かに私が疎ましいからといって、あのように大々的に煽るようなことをするイネリアに、家を背負わせるのは危険なことであるだろう。何かあったら癇癪を起して、余計な諍いを起こしかねない。

 それにしても、お父様がそのような資質などについて考えていたという事実は、驚きである。
 一応、私が姉であるからラメルトン伯爵家を背負わせようという訳では、ないということだろうか。消去法の可能性もあるが、それは私にとっては少しばかり嬉しいことである。
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