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11.責任を取るのは

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 ゼルフォン殿下の部屋を後にした私は、ゆっくりと廊下を歩いていた。
 彼から色々と言われた色々なことによって、私は自分がこれからどうなるのかということを概ね理解することができていた。

 その結論は、私にとってはある程度安心できるものである。
 もちろん何が起こるかはわからないが、それでも今までと比べると心の持ち用が楽だ。

「……あら?」
「……え?」

 そんな私は、前方から見知った人物が歩いて来ているのに気付いた。
 その人物とは、件のエムリーナ様である。

 彼女は私を見つけると、こちらに早足で近づいて来た。
 その表情には、嫌らしさがある。大方私のことを馬鹿にしようとしているということだろう。

「これはこれは、アルエリアさんではありませんか」
「エムリーナ様……私に何か御用ですか?」
「御用という程のことではありません。ただ、あなたを見かけたから声をかけただけです。まあ、これは私の老婆心のようなものかもしれませんね」
「老婆心ですか……」

 エムリーナ様は、私に対して嬉しそうに言葉をかけてきた。
 その様に私は少し呆れてしまう。一体彼女は、どれだけ人を煽りたいのだろうか。

「アルエリアさんは、大変な立場ですからね。王都の結界を崩壊させた戦犯であるあなたのことが、私は上司として心配なのです」
「……その立場に関しては、エムリーナ様の方が大変かと思いますが」
「……なんですって?」

 そんなエムリーナ様に、私は事実を伝えたくなっていた。
 冷静になるまで気付いていなかったが、ゼルファン殿下との契約だとか、エムリーナ様の思惑だとか、そういうものは関係なく、そもそも彼女の立場は危ういのだ。

「結界を崩壊させたのは確かに私ですが、エムリーナ様だってその場にいたのですよ? しかもあなたは、私の上司です。部下の失敗は上司の責任……エムリーナ様は、今の地位から退かざるを得ませんよね?」
「な、何を言って……」
「申し訳ありません。私のせいで……」

 私は、エムリーナ様に対してゆっくりと頭を下げた。
 当然のことながら、これは本心からの謝罪ではない。彼女へのささやかな反抗だ。

 エムリーナ様は、混乱しているのか視線を泳がせている。
 彼女は本当に、自分の立場というものを理解していないらしい。その作戦が立案から間違っていたことに、まだ気付いていないのだろうか。

 もっとも、それに関しては私も焦って気付けなかったことである。恐らく視野が狭くなっていると、わからなくなってしまうものなのだろう。
 エムリーナ様の一番の間違いとは、そもそも私を蹴落とそうなんて考えたことだ。人に危害を加える。そのことに関する認識が、彼女は甘かったのだろう。
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