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1.身分によって
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エムリーナ・パートンは、パートン伯爵家の長女であり、聖女である。
彼女の魔法の才能は、確かなものだ。決して貴族としての権力によって聖女に就任したという訳ではないことは、私もわかっている。
ただそれでも、私が彼女のよりも劣っているとは思えなかった。
魔法の才能でいえば、私の方がわずかに上であるだろう。そんな私が聖女になれなかったのは、まず間違いなく身分のせいだ。
「エムリーナ様よりも、アルエリアさんの方が優れているというのに、可哀想ですね」
「でも、それは仕方ないことではありませんか? だって、アルエリアさんは平民ですもの。田舎の娘と伯爵家の令嬢だったら、どちらが聖女に選ばれるかなんて明白ですわ」
「まあ、そうですね。でも、アルエリアさんにとっては屈辱的でしょうね。自分よりも明確に劣っている相手の部下として、毎日顔色を窺わなければならないなんて」
通りかかった廊下で、私は同僚二人の会話を偶々耳にしていた。
彼女達は、面白おかしく私とエムリーナ様のことを話している。
ただ少なくとも私に対する二人の認識は間違いとしか言いようがない。
なぜなら、私は別に今の地位に不満を持っている訳ではないからである。
聖女でなくとも、その部下というのは高給取りだ。莫大な給与は、農家のしがない娘でしかない私にとって、とてもありがたいものなのである。
充分以上の給料をもらっているのだから、文句などあるはずはない。というかむしろ、聖女なんて責任重大な役職を与えられなくて、安心しているくらいだ。
もしも私が貴族だったなら、別の考え方をしていたのかもしれない。
彼ら彼女らは、地位に固執する所がある。話している同僚二人は貴族なので、やはりそういった上とか下とかいう関係が、気になるのだろうか。
「……誰が、アルエリアよりも劣っているですって?」
「え?」
「あ、あなたは……」
そんな風に私が考えていると、同僚二人の前に件のエムリーナ様が現れた。
それに対して、二人はひどく怯えている。それは当然だ。彼女達はもろに、エムリーナ様の陰口を叩いていた。
それは実の所、とてもまずいことであるといえる。
エムリーナ様の気性は、少々荒い。そんな彼女が自分に対する陰口を聞いて、穏やかでいるとは思えない。
もっともこれに関しては、二人の自業自得ともいえる。
誰が聞いているかもわからない王城の廊下で、あんな話をしていい訳がない。
「私に対する非礼、許されるとは思わないことですね?」
「お、お待ちください、エムリーナ様」
「わ、私達はただ……」
二人の懇願も虚しく、エムリーナ様はその場から去っていく。
それに私は、少し焦りながら歩き始めた。ここで彼女に私が見つかったら、またややこしいことになりそうだからだ。
彼女の魔法の才能は、確かなものだ。決して貴族としての権力によって聖女に就任したという訳ではないことは、私もわかっている。
ただそれでも、私が彼女のよりも劣っているとは思えなかった。
魔法の才能でいえば、私の方がわずかに上であるだろう。そんな私が聖女になれなかったのは、まず間違いなく身分のせいだ。
「エムリーナ様よりも、アルエリアさんの方が優れているというのに、可哀想ですね」
「でも、それは仕方ないことではありませんか? だって、アルエリアさんは平民ですもの。田舎の娘と伯爵家の令嬢だったら、どちらが聖女に選ばれるかなんて明白ですわ」
「まあ、そうですね。でも、アルエリアさんにとっては屈辱的でしょうね。自分よりも明確に劣っている相手の部下として、毎日顔色を窺わなければならないなんて」
通りかかった廊下で、私は同僚二人の会話を偶々耳にしていた。
彼女達は、面白おかしく私とエムリーナ様のことを話している。
ただ少なくとも私に対する二人の認識は間違いとしか言いようがない。
なぜなら、私は別に今の地位に不満を持っている訳ではないからである。
聖女でなくとも、その部下というのは高給取りだ。莫大な給与は、農家のしがない娘でしかない私にとって、とてもありがたいものなのである。
充分以上の給料をもらっているのだから、文句などあるはずはない。というかむしろ、聖女なんて責任重大な役職を与えられなくて、安心しているくらいだ。
もしも私が貴族だったなら、別の考え方をしていたのかもしれない。
彼ら彼女らは、地位に固執する所がある。話している同僚二人は貴族なので、やはりそういった上とか下とかいう関係が、気になるのだろうか。
「……誰が、アルエリアよりも劣っているですって?」
「え?」
「あ、あなたは……」
そんな風に私が考えていると、同僚二人の前に件のエムリーナ様が現れた。
それに対して、二人はひどく怯えている。それは当然だ。彼女達はもろに、エムリーナ様の陰口を叩いていた。
それは実の所、とてもまずいことであるといえる。
エムリーナ様の気性は、少々荒い。そんな彼女が自分に対する陰口を聞いて、穏やかでいるとは思えない。
もっともこれに関しては、二人の自業自得ともいえる。
誰が聞いているかもわからない王城の廊下で、あんな話をしていい訳がない。
「私に対する非礼、許されるとは思わないことですね?」
「お、お待ちください、エムリーナ様」
「わ、私達はただ……」
二人の懇願も虚しく、エムリーナ様はその場から去っていく。
それに私は、少し焦りながら歩き始めた。ここで彼女に私が見つかったら、またややこしいことになりそうだからだ。
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