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1.聖女の祈り

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 女神であるアルヴァリース様に祈りを捧げるのが、聖女の役目の一つだ。
 アルヴァル王国の国名の由来にもなっている女神様は、この国の五穀豊穣、無病息災、様々なご利益をもたらしてくれる。

「女神アルヴァリース様、どうか我らに加護をお与えください」

 祈りのために建てられた神殿の中央で、私は女神様にお願いをしていた。
 つい最近聖女になった私だが、祈りという面においては、他の人にも負けないという自負がある。というかその一点において、選ばれたといっても過言ではない。
 先代の聖女であるファナティア様は、祈りこそが聖女の神髄であると言っていた。その祈りの力が誰よりもある私こそが、聖女に相応しい。そう言って、私を次の聖女に指名してくれた。

『はーい。アルヴァリース様が、加護を与えちゃいますよ。わあ、それにしてもこんなにフルーツいっぱい……ありがとね』
「いえ……」
『あれ? ルナーラちゃん、また少し背が伸びた? 立派な聖女になって、女神様嬉しい』
「光栄です、アルヴァリース様」

 いつからだっただろうか、私には女神様の声が聞こえるようになっていた。
 ちなみに、姿も見えている。目の前にいる若い女性は、同性の私から見てもとても美しい。
 その神秘的な声色も合わせて、この世の者とは思えない。いや実際に、私達よりも高度な次元にいる方なのだから、それは当たり前か。

『あ、これって、竜人伝の最新刊? 丁度、気になっていたのよね。女神様一押しとか、帯に書いてもいいのよ?』
「はい、先方にお伝えしておきます」

 偉大なる女神様の姿を見られ、声が聞ける。そんな私は、とても恵まれているといえるだろう。
 こればかりは才能も関係しているため、後天的に身に着けるのも難しいらしい。人によっては、喉から手が出る程欲しい才能だ。それを有していたということに関しては、女神様に感謝しなければならないことだろう。

『私ももう少し自由に動き回れるといいのだけれどね……この神殿に紐づいちゃっているから、そういう訳にもいかないのよね。まあ、昔一緒に戦った人達の子孫のためだし、そのくらいは我慢しないとね』
「女神様の御心遣いに、感謝いたします」

 かつて女神アルヴァリース様は、アルヴァル王国の始祖であるアムテルド様とともに、大いなる闇を打ち払ったとされている。
 その縁で、アルヴァリース様はアムテルド様が治めていた地域に加護を与えた。そうして国というものが、形作られたのだ。
 以来、王国は女神様を崇め讃えてきた。その信仰によって、この国は栄えているのだ。

『でも最近は、あんまり力が出ないことも多いのよね……女神の存在を信じる者が少なくなっているのが原因かしら? 私としては、悲しい限りだわ』
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