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30.無茶な要求

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「ホルルナ嬢という奴は、とんでもない奴みたいだな……」
「ええ、そうなんです……とりあえず、ロナード様もこの手紙を読んでいただけますか?」
「ああ、もちろんだとも」

 私にロナード様と離婚しろという指示だって、とんでもないものである。
 しかし、その先の自分が王妃になるという部分はさらにすごい。ホルルナは、本当にそんなことができると思っているのだろうか。

「……呆れたな。こんな要求、馬鹿げているぜ。大体、離婚と結婚には王家の意思も関わってくるというのに」
「はい、仰る通りだと思います」
「王妃になりたいという気持ちが大きいってことだろうかね……」

 ホルルナは、ずっと両親に甘やかされて生きてきた。願えばなんでも叶う。彼女の根底にあるのは、そんな考えなのかもしれない。
 今回のことも、両親がなんとかしてくれると思っているから、こんな無茶なお願いができるのだ。
 しかし、流石の両親でも彼女のこの願いを叶えるのはかなり難しいだろう。王家に対してそんな要求をするのがどういうことなのか、それはいくらあの両親でもわかっているはずである。

「まあ、こんな要求を受け入れる必要はないさ。そもそも、離婚も結婚も俺を通さなければできることではないしな」
「ええ、もちろん、受け入れるつもりはありません」
「とりあえず無視がいいだろうな。そうすれば、また何か仕掛けてくるだろう」
「そうですね……」

 ホルルナは、そう簡単に諦めるような人間ではない。王妃の座が欲しいと思っているなら、必ずまた何かを仕掛けてくるだろう。
 とはいえ、道理を知っている両親が無茶なことをするとは考えにくい。それなら、何をしてくるだろうか。

「そこで、今回はその仕掛けを利用させてもらうことにしよう」
「……どういうことですか?」
「一つ妙案を思いついた。まあ、少々気が引ける手ではあるがな」

 ロナード様は、そこでエリクスさんの方に目を向けた。
 彼は頭に手を当てながら、目を瞑る。何かを考えているのだろう。

「エリクシス、カルランド公爵家に働きかけられそうな奴はいるか?」
「働きかけるというのは、どういった意味でしょうか?」
「あっちから信頼されているような者はいないか?」
「そうですね……商人を頼りましょうか。ゴドルスであるならば、上手くやってくれるでしょう」
「ふむ、それなら後はあなたがどう思うかだ。俺の作戦を聞いてくれ」
「……はい、わかりました」

 ロナード様の言葉に、私はゆっくりと頷く。
 こうして私は、ロナード様からホルルナに対抗する手を聞くのだった。
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