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10.警戒する妹

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 シルファルド様を部屋に案内した後、私はエルリナの部屋に来ていた。
 まだ私のことを警戒しているのか、彼女の表情は固い。そろそろ、私の変化に適用してもいい頃だとは思うのだが。

「お姉様、何の用ですか?」
「用という程のことではないわ。少しあなたと話したくなって……」
「私は別に、話したいことはないのですけれど」
「まあまあ、そんなこと言わないで……」

 私は、ベッドに腰掛けるエルリナの隣に腰掛けた。
 すると彼女は、私から距離を開けていく。それには私も、少し驚いてしまう。

「エルリナ? なんだか、以前よりも距離があるような気がするのだけれど」
「自分の胸に手を当てて聞いてみればいいではありませんか。その理由は、きっとすぐにわかりますよ」
「え? わからないのだけれど……」

 彼女のことを叱っていた時よりも、心の距離が開いている。その事実に、私は困惑することしかできなかった。
 基本的に、私は彼女のことを甘やかしている。それなのに、どうして好かれないのだろうか。甘やかしてくれる私の方が好きだと、本人も公言していたというのに。

「お姉様が急に変わったからです。そんな風に変われると、困ってしまいます」
「私としては、叱るようになる前に戻ったつもりなのだけれど……」
「それはそうかもしれませんが、その変遷が奇妙で怖いのです」
「奇妙って、理由はきちんと話したわよね?」
「でも、怖いものは怖いんですから、仕方ないではありませんか」

 エルリナは、私に対してとても力説してきた。
 それ程私のことを、怖がっているということだろうか。正直、かなりショックである。

 私は、こんなにも真っ直ぐにエルリナのことを愛しているというのに、それを受け入れてもらえないのは辛い。
 しかし、本人がこう言っているのだから、あまり無理強いしてはいけないだろう。エルリナのためだ。ここは私が引くしかない。

「わかったわ。そういうことなら、今日はもうこれで失礼するわね」
「え? 帰るんですか?」
「ええ、私のことが怖いというなら、しばらくは会わない方がいいということよね? なるべく顔を合わせないようにするから……」
「い、いえ、別にそこまでやっていただく必要はありませんから、大丈夫です。これからも普段通りにしてください」

 すぐに部屋から出て行こうとしていた私を、エルリナは引き止めてきた。
 どうやら、彼女は心から私のことを拒絶している訳でもないらしい。その線引きは少々難しいような気もするが、なんとか見極めていくしかないと言った所か。

「エルリナは優しいのね……」
「そんなことはありませんから、とりあえず座ってください……」

 エルリナは今日の所は、話してくれるつもりであるらしい。
 それは私にとっては、嬉しい事実である。エルリナは、少し引いているような気もするが、それは気にしないことにしよう。
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