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8.最近の姉は(エルリナ視点)
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ここ最近のお姉様は、なんだか様子がおかしくなった。
私が何かすると、決まって説教をしていたお姉様が、今はそうしなくなっている。お父様やお母様のように、私を甘やかしてくれるのだ。
それは私が望んでいたことである。叱られるよりも、甘やかされる方がいいのは当然なのだから、これは嬉しいことであるはずだ。
しかし、私はまったく持って喜べなかった。むしろ、怖いくらいである。
お姉様に何があったのか、私はとても気になっていた。何か心境の変化でもあったのだろうか。
「お姉様、一体何があったのですか?」
「何って?」
「だって、最近のお姉様はおかしいではありませんか」
私は、思い切って本人にそれを聞いてみた。
するとお姉様は、きょとんとした表情を返してくる。なんというか、私の質問の意図がまったくわかっていないといった感じだ。
「おかしい? 何がかしら?」
「私を叱りつけていたお姉様は、どこへ行ってしまったのですか?」
「ああ、まあ、少し厳し過ぎたのかもしれないと思ってきたのよ。あなたのために心を鬼にしていたつもりだったけれど、それはきっと逆効果だったのでしょうね。だから、昔の私に戻ることにしたのよ」
お姉様は、どこか昔を懐かしむような目をしていた。
確かに、少し前まではお姉様も両親と同じように私を甘やかしてくれていたような気がする。
そんなお姉様が怒るようになった時は、とても悲しかった。だからこそ、今の今まで反発してきた訳で、私はお姉様が以前のように戻ったことを喜ぶべきなのである。
「そもそもの話、アヴォイル伯爵家は私とシルファルド様で支えていけばいいのだし、あなたに対してそんなに厳しくする必要はないのかもしれないわね」
「そ、それはどういうことですか?」
「家のことは私達に任せて、あなたは自由に生きればいいの。お金のことなんかは、私がなんとかするし、心配しなくても大丈夫よ」
「……」
お姉様は、とても優しい目をしていた。
その目は、見たことがある。両親もいつも同じ目をしているのだ。
私の望みをなんでも叶えてくれる。そういう目をされるのは好きなはずだった。
だけど、今は気分が悪い。私はお姉様に、こういう目をされたいという訳ではなかったようだ。
「ああ、私はこれからシルファルド様の所に行くから、しばらくは留守にすることになるのだけれど……」
「え? 先日、来たばかりですよね?」
「なんだか、会いたくなってしまって……」
「そ、そうですか……」
お姉様は私に対してだけではなく、婚約者であるシルファルド様に対しても、態度が変わっていたような気がする。
元々、婚約者に対しては愛情を抱いていた節があるが、今はそれがよりわかりやすい。
それからお姉様は、驚くべきことにシルファルド様を連れて帰って来た。いくら会いたかったからといって、そんなことをしていいのだろうか。私はお姉様の大胆な行動に、ただただ困惑することしかできなかった。
私が何かすると、決まって説教をしていたお姉様が、今はそうしなくなっている。お父様やお母様のように、私を甘やかしてくれるのだ。
それは私が望んでいたことである。叱られるよりも、甘やかされる方がいいのは当然なのだから、これは嬉しいことであるはずだ。
しかし、私はまったく持って喜べなかった。むしろ、怖いくらいである。
お姉様に何があったのか、私はとても気になっていた。何か心境の変化でもあったのだろうか。
「お姉様、一体何があったのですか?」
「何って?」
「だって、最近のお姉様はおかしいではありませんか」
私は、思い切って本人にそれを聞いてみた。
するとお姉様は、きょとんとした表情を返してくる。なんというか、私の質問の意図がまったくわかっていないといった感じだ。
「おかしい? 何がかしら?」
「私を叱りつけていたお姉様は、どこへ行ってしまったのですか?」
「ああ、まあ、少し厳し過ぎたのかもしれないと思ってきたのよ。あなたのために心を鬼にしていたつもりだったけれど、それはきっと逆効果だったのでしょうね。だから、昔の私に戻ることにしたのよ」
お姉様は、どこか昔を懐かしむような目をしていた。
確かに、少し前まではお姉様も両親と同じように私を甘やかしてくれていたような気がする。
そんなお姉様が怒るようになった時は、とても悲しかった。だからこそ、今の今まで反発してきた訳で、私はお姉様が以前のように戻ったことを喜ぶべきなのである。
「そもそもの話、アヴォイル伯爵家は私とシルファルド様で支えていけばいいのだし、あなたに対してそんなに厳しくする必要はないのかもしれないわね」
「そ、それはどういうことですか?」
「家のことは私達に任せて、あなたは自由に生きればいいの。お金のことなんかは、私がなんとかするし、心配しなくても大丈夫よ」
「……」
お姉様は、とても優しい目をしていた。
その目は、見たことがある。両親もいつも同じ目をしているのだ。
私の望みをなんでも叶えてくれる。そういう目をされるのは好きなはずだった。
だけど、今は気分が悪い。私はお姉様に、こういう目をされたいという訳ではなかったようだ。
「ああ、私はこれからシルファルド様の所に行くから、しばらくは留守にすることになるのだけれど……」
「え? 先日、来たばかりですよね?」
「なんだか、会いたくなってしまって……」
「そ、そうですか……」
お姉様は私に対してだけではなく、婚約者であるシルファルド様に対しても、態度が変わっていたような気がする。
元々、婚約者に対しては愛情を抱いていた節があるが、今はそれがよりわかりやすい。
それからお姉様は、驚くべきことにシルファルド様を連れて帰って来た。いくら会いたかったからといって、そんなことをしていいのだろうか。私はお姉様の大胆な行動に、ただただ困惑することしかできなかった。
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