上 下
4 / 12

4.お風呂上りに

しおりを挟む
 お風呂上りに婚約者を訪ねるのは、少し緊張する。
 シルファルド様は真面目な方なので、まず手は出してこないだろうが、それでも色々と意識してしまうのが正直な所だ。
 ただ、私はどうしても彼と話しておきたかった。とりあえずエルリナには接触してみたが、今後が不安だ。そのことについて、彼と今の内に話し合いたかった。

「ウルティナさんは、少々無防備すぎますね」
「え?」
「こんな時間に、僕を訪ねて来るなんて、少し驚いています」

 そんな訳で訪ねた私に、シルファルド様は呆れたような顔をしていた。
 彼にしては珍しく、動揺しているということだろうか。それは少し嬉しい。

 お風呂上りというのが、良かったのだろうか。今後の参考のためにも、それは聞いておいた方がいいかもしれない。
 というか、シルファルド様も中々に色っぽい。そのような効果が、私の方にもあってくれるといいのだが。

「それとも、僕のことを特に意識していないということなのでしょうか? 男として見ていないとか。そうだとしたら、少し落ち込んでしまいますが……」
「まさか、そんなことはありません。シルファルド様のことは、素敵な男性であると思っていますから」
「……ありがとうございます。ただ、そういう発言を堂々とされると、なんだか益々自信がなくなってくるのですが」

 シルファルド様は、なんだか少し落ち込んでいる様子だった。
 しっかりと褒めたはずなのに、どうして落ち込まれるのだろうか。それが私には、よくわからない。

「ああそういえば、エルリナ嬢に会いましたよ」
「え? あ、そうなんですか?」
「ええ、彼女から聞かれましたよ。お姉様に何かあったのではないかと。どうやら、僕の案を早速試しているようですね」
「はい、そうなんです。実はそのことで相談したくて……」
「そういうことでしたか」

 こちらから話を振る前に、シルファルド様がエルリナのことを話してきた。
 それなら話が早い。早速、これからのことを相談するとしよう。

「少し長い話になるかもしれませんが、シルファルド様は構いませんか?」
「え? ええ、ウルティナ嬢が構わないというなら大丈夫ですが……」
「私はもちろん大丈夫ですよ。提案した側なのですから」

 シルファルド様の言葉に、私は力強く頷く。
 すると彼は、また落ち込んだような表情をする。一体、どうしてそんな顔をするのだろうか。

「……やはり、意識されていないということなのでしょうか?」
「いえ、そんなことありませんって」

 何故かわからないが、シルファルド様は頑なに自分が意識されていないと思っていた。
 しかし実際の所、私はちゃんと彼のことを意識している。それなりに覚悟もしているというのに、どうしてわかってもらえないのだろうか。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

夢のテンプレ幼女転生、はじめました。 憧れののんびり冒険者生活を送ります

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:54,180pt お気に入り:4,784

【完結】彼女を恋愛脳にする方法

恋愛 / 完結 24h.ポイント:198pt お気に入り:364

もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:219,952pt お気に入り:6,635

私のことを愛していなかった貴方へ

恋愛 / 完結 24h.ポイント:1,263pt お気に入り:6,467

婚約者の姉を婚約者にしろと言われたので独立します!

恋愛 / 完結 24h.ポイント:326pt お気に入り:4,670

処理中です...