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2.裏庭での密会

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「……ここなら大丈夫だろうか?」
「ええ、そうですね」

 王城の裏庭というものは、あまり人が来ない場所だ。私もそれはよく知っている。リヴェンド殿下とも、そこで何度かやり取りを交わしてきたはずだ。
 そんな裏庭に、リヴェンド殿下は私以外の人と来ている。身なりからして、彼女は恐らく貴族の令嬢だ。何度か見たことがあるような気がする。名前などは知らないが。

「クルルネ、しかし一体どうしたんだ。急に訪ねて来るなんて、驚きだ」
「……リヴェンド殿下の婚約について耳にしましたので」
「ああ、そのことか……」

 クルルネと呼ばれた令嬢は、リヴェンド殿下に対して鋭い視線を向けていた。
 その視線を見ればわかる。二人はきっと、只ならぬ関係なのだ。
 それを認識して、私の額からゆっくりと汗が流れ始めていた。リヴェンド殿下にそのような関係の女性がいたなんてことは、私にとっては思ってもいないことだったからだ。

「君には悪いことをしているとは思っている。だが、それは仕方ないことなんだ。王家の決定というものは、僕一人の意思で捻じ曲げられるようなことではない」
「それでは、私との関係はここで終わりということですか?」
「そういう訳ではないさ。ただ今は待ってもらいたいというだけだ。僕は時間を必要としている。父上を説得するのにも、婚約したエゼルス伯爵家を納得させるためにも、時間がいる」
「それは……そうかもしれませんが」

 リヴェンド殿下の言葉に、クルルネ嬢は不服そうにしていた。
 彼女としては、自分こそが彼の婚約者として相応しいと思っているのだろう。今の状況が、相当に不満であるらしい。
 しかし、それが私以上のものであるだろうか。婚約者として友人として信用していたリヴェンド殿下から裏切られた。私はそのことに、ひどく衝撃を受けている。

「心配する必要はない。僕達は運命で繋がっているのだから」
「運命、ですか?」
「ああ、君と最初に出会った時から思っていたことだ。僕は君と結ばれるのだとね。言うならば君は、僕にとって運命の相手なんだよ」

 リヴェンド殿下は、意気揚々とどこかで聞いたことがあるような言葉を発していた。
 それはもしかしたら、彼の中での定型なのだろうか。それに対して、少しでも心を動かされた自分が、今はとても恥ずかしい。

 しかしながら、リヴェンド殿下のそれらの言葉は明らかに許容できないものである。私は貴族の令嬢として、自分にはやらなければならないことがあることを理解した。
 その行動は、慎重に行わなければならないものである。私は足音を立てないようにそっと、その場を後にするのだった。
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