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12.昔のままの

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 魔物を無事に討伐した私は、ロヴァイドの元に戻って来た。
 彼は、心配そうな顔をしながら私を見てくる。

「アフィーリ、無事か?」
「うん、もちろん無事だよ。これでも私は、元聖女だからね」

 彼の傍に着地しながら、私は笑顔を見せておく。これで、安心してくれるといいのだが、そういう訳にもいかないようだ。

「一人で魔物の討伐なんて危険なことはよしてくれ」
「ロヴァイド、こういうことは言いたくないけど、私は元聖女なんだよ。この国で最も優れた魔法使いなんだから、そんなに心配しなくても大丈夫だよ」
「どんなに強くても、油断は禁物だ。一人よりも二人の方がいいに決まっている」

 ロヴァイドは、少し怒っているような気がする。
 私が優れた魔法使いであることは、彼だって理解しているだろう。それでも、怒っている。それ程までに、私を心配してくれていたということだろうか。

「私にとっては、足手纏いかもしれないよ?」
「……確かにそれはそうかもしれない。だが、俺も強くなった。お前よりも強くなったとは言えないかもしれないが、油断したお前を助けられる程にはなったと自負している」

 ロヴァイドの剣や弓の実力などを私は知らない。だが、狩りや魔物の討伐に参加しているらしいので、それなりではあるのだろう。
 ただ、それなりの人間では私にとっては足手纏いだ。その事実は揺るがない。

「それに、俺にとってお前は大切な人だ。お前が聖女になろうがどんなに強くなろうが、それは変わらない。だから、無闇に危険に飛び込むようなことはしないでくれ」
「ロヴァイド……」

 そう思っていた私は、言葉を詰まらせてしまう。ロヴァイドの真っ直ぐな言葉は、私の色々な前提を一気に崩れさせてしまったからだ。
 大切な人に危険な目に合って欲しくない。それは、理解できる。
 ロヴァイドにとって、私は昔のままということなのだろう。彼にとって、私は守るべき女の子。そう思ってもらえることは、素直に嬉しい。

「ごめん。確かに軽率に飛び出しちゃった。今度からは気を付ける」
「ああ、そうしてもらえるとこちらとしてもありがたい」
「でも、私はこういうことが起こった時後ろに下がっているなんて嫌だよ。それで誰かが傷つくことになったら嫌だし」
「……そうか」

 私は、ロヴァイドの気持ちを考えていなかった。彼が私をどれだけ心配していたか、そんなことは少し考えればわかったはずだ。
 どうやら、帰って来て少々浮かれ過ぎてしまっていたらしい。これは、反省するべきだ。
 今度からはもっと冷静な行動を心がけよう。私はそう思うのだった。
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