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11.妙な気配
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「……何かが変だ」
「変?」
散歩で村の外れまで来た所で、ロヴァイドがそのようなことを言い出した。
何かが変。それは恐らく、空気とかそういうことなのだろう。
長らく離れていたが、私には特に何も感じられない。だが、この村で暮らしているロヴァイドがこう言っているのだから、何かがおかしいのだろう。
「空気が揺れている……何か凶悪なものの気配を感じる」
「魔物がいるということ?」
「ああ、そうかもしれない。狩人に相談した方がいいか……」
「待って」
私は、目を瞑って魔力を集中させる。
村の周辺の様子を魔法で探知してみると、すぐにわかった。確かに凶悪な魔物が辺りにいるらしい。
「うん、魔物がいるみたい。しかも、結構厄介な部類かも」
「そうか……武器を持ってきておけばよかったな」
「ロヴァイド、戦えるの?」
「忘れたのか? 俺が剣や弓の訓練をしていたことを」
「それはそうだけど……」
「まあ、俺も成長したということさ」
「そうなんだ」
ロヴァイドがそういった魔物退治に参加する立場になっていたということは、知らなかった。
だが、考えてみれば特におかしいことではない。彼は剣や弓の訓練をしていた訳だし、熟練したなら狩りなどにも参加するということもあるはずだ。
そんな所にまで時が経ったことを感じながらも私は考える。恐らく、魔物は一体だ。厄介な魔物ではあるが、あれくらいなら私一人でもどうということはない。
「ロヴァイド、少しだけ待っていてくれる?」
「何をするつもりだ?」
「魔物を討伐してくる」
「一人じゃ危険だ」
「私も成長したんだよ?」
「む……」
ロヴァイドの制止を嬉しく思いながら、私は魔物がいる場所までの移動を開始する。
王都ではあまり使う機会がなかった浮遊魔法は、奇襲にとても有効だ。私は速度を上げて、魔物がいる場所を目指す。
目的の魔物は、すぐに見えて来た。それはそれ程までに、村に近づいて来ていたということだ。
ロヴァイドが気づいてくれてよかった。もし彼が気づいていなければ、何か被害が出ていたかもしれない。
「あの魔物、なんていったかな……まあ、なんでもいいか」
熊のような姿をしている魔物の名前は、すぐには思い出せなかった。だが、それはどうでもいいことだ。どのような魔物が相手でも、私は負けない。この程度の魔物に負けていては、聖女なんてやっていられないのだ。
「ギャシャアアッ!」
私は魔物に向かって炎の球を投げた。
それは魔物に当たり、その体を焼き尽くす。不意打ちであったため、魔物は躱すことすらできなかったようだ。案外早く終わって、私としても一安心である。
「変?」
散歩で村の外れまで来た所で、ロヴァイドがそのようなことを言い出した。
何かが変。それは恐らく、空気とかそういうことなのだろう。
長らく離れていたが、私には特に何も感じられない。だが、この村で暮らしているロヴァイドがこう言っているのだから、何かがおかしいのだろう。
「空気が揺れている……何か凶悪なものの気配を感じる」
「魔物がいるということ?」
「ああ、そうかもしれない。狩人に相談した方がいいか……」
「待って」
私は、目を瞑って魔力を集中させる。
村の周辺の様子を魔法で探知してみると、すぐにわかった。確かに凶悪な魔物が辺りにいるらしい。
「うん、魔物がいるみたい。しかも、結構厄介な部類かも」
「そうか……武器を持ってきておけばよかったな」
「ロヴァイド、戦えるの?」
「忘れたのか? 俺が剣や弓の訓練をしていたことを」
「それはそうだけど……」
「まあ、俺も成長したということさ」
「そうなんだ」
ロヴァイドがそういった魔物退治に参加する立場になっていたということは、知らなかった。
だが、考えてみれば特におかしいことではない。彼は剣や弓の訓練をしていた訳だし、熟練したなら狩りなどにも参加するということもあるはずだ。
そんな所にまで時が経ったことを感じながらも私は考える。恐らく、魔物は一体だ。厄介な魔物ではあるが、あれくらいなら私一人でもどうということはない。
「ロヴァイド、少しだけ待っていてくれる?」
「何をするつもりだ?」
「魔物を討伐してくる」
「一人じゃ危険だ」
「私も成長したんだよ?」
「む……」
ロヴァイドの制止を嬉しく思いながら、私は魔物がいる場所までの移動を開始する。
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目的の魔物は、すぐに見えて来た。それはそれ程までに、村に近づいて来ていたということだ。
ロヴァイドが気づいてくれてよかった。もし彼が気づいていなければ、何か被害が出ていたかもしれない。
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「ギャシャアアッ!」
私は魔物に向かって炎の球を投げた。
それは魔物に当たり、その体を焼き尽くす。不意打ちであったため、魔物は躱すことすらできなかったようだ。案外早く終わって、私としても一安心である。
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