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8.遅い目覚め
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私は、ゆっくりと目を覚ます。
昨日は、事情を両親に話してから程なくして眠りについた。疲れていたこともあって、すぐに眠りに落ちたのだが、もしかしたら寝すぎたかもしれない。
窓から外の様子を窺ってみると、明らかにお昼くらいだ。どうやら随分と寝過ごしてしまったらしい。
「はあ、いくら疲れているとはいえ、昼前まで寝るなんていくらなんでも寝すぎだよね……お父さんとお母さん、どうしたのかな?」
身支度をしながら、私は体の様子を確かめていた。
最近は仕事が忙しくてろくに休んでいなかったため、魔力が完全に回復するということがなかった。
だが、この帰宅するための旅と今日の安心しきった睡眠によって、私の魔力は完全に回復したようだ。
この感覚は、随分と久し振りである。そもそも、それがおかしいのだが。
「よし……」
部屋から出た私は、とりあえず外に出ることにした。
この時間にお父さんとお母さんがいるとしたら、畑であるだろう。そう思って外に出ると、予想通り二人の姿が見えてくる。
「アフィーリ、起きたの?」
「うん、お母さん。どうやら、かなり寝坊してしまったみたいだね」
「別にいいのよ。あなたは、長旅から帰って来たばかりなのだから」
「でも、あんまりいいことではないよね」
「それだけ疲れていたということでしょう?」
お母さんは、私に対して笑顔でそう言ってくれた。
小さな頃は寝坊したら怒られていたのだが、今日はとても優しい。もちろん、事情がまったく違うという前提があるため、当然といえば当然なのだが。
「お腹は空いてない?」
「あ、うん。まあ、それなりに空いているかな」
「もうすぐお昼だから、少しだけ待ってもらえる?」
「うん、わかった。何か手伝えることはある?」
「今日も休んでいなさい」
「でも……」
「あなたは長い間頑張ったんだから、しばらくは休んでいていいのよ」
「そっか……」
家に帰ったからには畑を手伝わなければならない。私はずっとそう思っていた。
だが、私は聖女としてそれなりに頑張ったのだから、しばらくの間は休暇を取らせてもらってもいいのかもしれない。
これから私は、この村で暮らすのだ。親孝行はこれからいくらでもできるのだから、そこまで焦らなくてもいいのかもしれない。
「まあ、それならしばらくそうさせてもらおうかな……」
「ええ、そうしなさい」
お母さんもお父さんも、きっとそれを望んでいるのだろう。
それなら、そうするべきだ。今の私が手伝っても、きっと二人は喜ばない。
こうして、私はしばらく村でゆっくりと過ごすことにするのだった。
昨日は、事情を両親に話してから程なくして眠りについた。疲れていたこともあって、すぐに眠りに落ちたのだが、もしかしたら寝すぎたかもしれない。
窓から外の様子を窺ってみると、明らかにお昼くらいだ。どうやら随分と寝過ごしてしまったらしい。
「はあ、いくら疲れているとはいえ、昼前まで寝るなんていくらなんでも寝すぎだよね……お父さんとお母さん、どうしたのかな?」
身支度をしながら、私は体の様子を確かめていた。
最近は仕事が忙しくてろくに休んでいなかったため、魔力が完全に回復するということがなかった。
だが、この帰宅するための旅と今日の安心しきった睡眠によって、私の魔力は完全に回復したようだ。
この感覚は、随分と久し振りである。そもそも、それがおかしいのだが。
「よし……」
部屋から出た私は、とりあえず外に出ることにした。
この時間にお父さんとお母さんがいるとしたら、畑であるだろう。そう思って外に出ると、予想通り二人の姿が見えてくる。
「アフィーリ、起きたの?」
「うん、お母さん。どうやら、かなり寝坊してしまったみたいだね」
「別にいいのよ。あなたは、長旅から帰って来たばかりなのだから」
「でも、あんまりいいことではないよね」
「それだけ疲れていたということでしょう?」
お母さんは、私に対して笑顔でそう言ってくれた。
小さな頃は寝坊したら怒られていたのだが、今日はとても優しい。もちろん、事情がまったく違うという前提があるため、当然といえば当然なのだが。
「お腹は空いてない?」
「あ、うん。まあ、それなりに空いているかな」
「もうすぐお昼だから、少しだけ待ってもらえる?」
「うん、わかった。何か手伝えることはある?」
「今日も休んでいなさい」
「でも……」
「あなたは長い間頑張ったんだから、しばらくは休んでいていいのよ」
「そっか……」
家に帰ったからには畑を手伝わなければならない。私はずっとそう思っていた。
だが、私は聖女としてそれなりに頑張ったのだから、しばらくの間は休暇を取らせてもらってもいいのかもしれない。
これから私は、この村で暮らすのだ。親孝行はこれからいくらでもできるのだから、そこまで焦らなくてもいいのかもしれない。
「まあ、それならしばらくそうさせてもらおうかな……」
「ええ、そうしなさい」
お母さんもお父さんも、きっとそれを望んでいるのだろう。
それなら、そうするべきだ。今の私が手伝っても、きっと二人は喜ばない。
こうして、私はしばらく村でゆっくりと過ごすことにするのだった。
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