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第一章 婚約者と母の裏切り
19.意を決して
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「……失礼します!」
「え?」
「なっ……」
意を決した私は、勢いよく扉を開け放った。
するとそこには確かに私達のお母様とリビルト様がいた。
問題なのは、二人の姿であるだろう。ある程度予想はしていたが、ベッドの上にいる一糸纏わぬ姿をした二人を実際に見ると中々心にくるものがある。
だが、この状況は私達にとってはありがたいものだ。
一糸纏わぬ姿で逃げるのは流石に難しいだろう。今だって二人とも体を隠して動かないし、こちらにとっても好都合だ。
「……お二人とも、お久し振りですね。お元気そうで何よりです」
「アメリア……これは、違うんだ」
「リビルト様、違うということはないでしょう。この状況で、一体何が違うというのでしょうか?」
「君は誤解をしているんだ。そう、少し話し合うとしよう。それできっと、誤解は解ける」
私の言葉にまず答えたのは、リビルト様の方だった。
彼は、いつも通りの優しく紳士的な口調で私に語りかけてくる。
しかし私は、それが偽りだらけのものだということをもう知っている。いや例え知らなかったとしても、この状況で言い逃れなんてさせないが。
「往生際が悪いですね、リビルト様。お母様も、同じ意見なのでしょうか?」
「アメリア……無礼よ?」
「無礼?」
「このように大勢で急に押しかけて、無礼としか言いようがないわ」
お母様は、少しヒステリック気味にそんなことを言ってきた。
散々な仕打ちをしておいて、この態度とは呆れてしまう。いや、最早そうすることくらいしかお母様にはできないのだろうか。
「無礼であるというなら、あなたが私にしてきた仕打ちの方が無礼であると思いますが……あなたも認めないということですか? リビルト様とそういう関係ではないと」
「……」
「ちなみに、ここのことはとあるメイドが教えてくれました。彼女は、自分こそがリビルト様の本命であると……恋人であると思っているようですが」
「……それは違うわね」
私の言葉に、お母様は鼻を鳴らした。
それはまるで、エルシーのことを嘲笑っているかのようだ。いや、実際にそうなのだろう。
「あの小娘は、利用されているだけだということに気付いていない哀れな娘よ。リビルトが本当に愛しているのは、この私なのだから」
「なるほど、本当にどうしようもない程に愚かですね、お母様は……」
お母様もエルシーも、リビルト様の本命が自分だと信じ込んでいる。それが私は、とても滑稽に思ってしまった。どうして二人とも、自分が利用されているだけだとわからないのだろうか。
恋は盲目、二人の様子に私はそんな言葉を思い出した。二人がそんな風になる程に、このリビルト様は口が上手いとでもいうのだろうか。
「え?」
「なっ……」
意を決した私は、勢いよく扉を開け放った。
するとそこには確かに私達のお母様とリビルト様がいた。
問題なのは、二人の姿であるだろう。ある程度予想はしていたが、ベッドの上にいる一糸纏わぬ姿をした二人を実際に見ると中々心にくるものがある。
だが、この状況は私達にとってはありがたいものだ。
一糸纏わぬ姿で逃げるのは流石に難しいだろう。今だって二人とも体を隠して動かないし、こちらにとっても好都合だ。
「……お二人とも、お久し振りですね。お元気そうで何よりです」
「アメリア……これは、違うんだ」
「リビルト様、違うということはないでしょう。この状況で、一体何が違うというのでしょうか?」
「君は誤解をしているんだ。そう、少し話し合うとしよう。それできっと、誤解は解ける」
私の言葉にまず答えたのは、リビルト様の方だった。
彼は、いつも通りの優しく紳士的な口調で私に語りかけてくる。
しかし私は、それが偽りだらけのものだということをもう知っている。いや例え知らなかったとしても、この状況で言い逃れなんてさせないが。
「往生際が悪いですね、リビルト様。お母様も、同じ意見なのでしょうか?」
「アメリア……無礼よ?」
「無礼?」
「このように大勢で急に押しかけて、無礼としか言いようがないわ」
お母様は、少しヒステリック気味にそんなことを言ってきた。
散々な仕打ちをしておいて、この態度とは呆れてしまう。いや、最早そうすることくらいしかお母様にはできないのだろうか。
「無礼であるというなら、あなたが私にしてきた仕打ちの方が無礼であると思いますが……あなたも認めないということですか? リビルト様とそういう関係ではないと」
「……」
「ちなみに、ここのことはとあるメイドが教えてくれました。彼女は、自分こそがリビルト様の本命であると……恋人であると思っているようですが」
「……それは違うわね」
私の言葉に、お母様は鼻を鳴らした。
それはまるで、エルシーのことを嘲笑っているかのようだ。いや、実際にそうなのだろう。
「あの小娘は、利用されているだけだということに気付いていない哀れな娘よ。リビルトが本当に愛しているのは、この私なのだから」
「なるほど、本当にどうしようもない程に愚かですね、お母様は……」
お母様もエルシーも、リビルト様の本命が自分だと信じ込んでいる。それが私は、とても滑稽に思ってしまった。どうして二人とも、自分が利用されているだけだとわからないのだろうか。
恋は盲目、二人の様子に私はそんな言葉を思い出した。二人がそんな風になる程に、このリビルト様は口が上手いとでもいうのだろうか。
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