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18.それぞれの事情で
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アルディス様は、しばらくルーミルに留まるつもりらしい。
ヴェリトン伯爵にも、許可は貰っているようだ。家としても、マートン伯爵家との婚約を望んでいるということだろうか。
そのアルディス様の来訪によって、私の正体はバラント商会にほぼ知られてしまった。
しかし当日にも気にされなくなったように、次の日に出勤した時も特に何も言われなかった。皆、仕事に忙殺されているということかもしれない。
「まあ、色々とある人も多いですからね。ミリーシャさんのような方は流石に珍しいものではありますが、例がない訳でもありません」
「そうなのですか……」
その件について、チャルテッドさんからはそのようなことを告げられた。
バラント商会は大きな商会であるため、色々なことを経験しているということなのだろう。それなら特に心配する必要はなさそうだ。
「ミリーシャさんにも色々とあるとは思いますが、私達としてはとりあえずいてもらえると助かります。貴重な戦力ですからね」
「そう言ってもらえるのは、嬉しいです」
「言っておきますが、お世辞ではありませんよ」
チャルテッドさんは、私に対して笑顔を向けてきた。その表情からは、本当に心から私を頼りにしてくれていることが伝わってくる。
それが私は、とても嬉しかった。誰かに頼られるというのは、やはり良いものだと改めて思う。
「まあとにかく、ミリーシャさんが特別何かを気にする必要はないということです」
「ありがとうございます、チャルテッドさん。色々とお世話になって……」
「いえいえ、私は別に何も……」
「……さてと、私はお先に失礼させてもらいますね」
「はい、お疲れ様です」
就業時間は、既に過ぎている。ただチャルテッドさんはまとめ役ということもあって、まだ色々とやることがあるようだ。
大変だと思いながらも、私はバラント商会の拠点から出て行く。チャルテッドさんには悪いが、私はもうくたくただ。メセリアやリエネッタさんも部屋で待っているだろうし、できるだけ早く帰りたい所である。
「もう日も暮れそうだし……うん?」
外に出てきた私は、周囲を見渡して動きを止めることになった。
商会の拠点の近くに豪勢な馬車が止まっていたからだ。それは明らかに、貴族の馬車である。
その馬車の目的が、誰であるかは考えるまでもない。十中八九、私であるだろう。これは少し、気を引き締めなければならない。
「……やっと出てきたか」
「……バラント商会の仕事は、やはり大変ということかしらね」
「まあ、そういうことだろう。少し気が引けるな……だが、行くしかない」
それから私の耳に、聞き覚えがある声が聞こえてきた。
ある程度予測していたことではあるが、やはり二人は私の元に来たようだ。イグニスとシスティア、その二人は何故かアルディス様とともに、馬車から出てきた。
ヴェリトン伯爵にも、許可は貰っているようだ。家としても、マートン伯爵家との婚約を望んでいるということだろうか。
そのアルディス様の来訪によって、私の正体はバラント商会にほぼ知られてしまった。
しかし当日にも気にされなくなったように、次の日に出勤した時も特に何も言われなかった。皆、仕事に忙殺されているということかもしれない。
「まあ、色々とある人も多いですからね。ミリーシャさんのような方は流石に珍しいものではありますが、例がない訳でもありません」
「そうなのですか……」
その件について、チャルテッドさんからはそのようなことを告げられた。
バラント商会は大きな商会であるため、色々なことを経験しているということなのだろう。それなら特に心配する必要はなさそうだ。
「ミリーシャさんにも色々とあるとは思いますが、私達としてはとりあえずいてもらえると助かります。貴重な戦力ですからね」
「そう言ってもらえるのは、嬉しいです」
「言っておきますが、お世辞ではありませんよ」
チャルテッドさんは、私に対して笑顔を向けてきた。その表情からは、本当に心から私を頼りにしてくれていることが伝わってくる。
それが私は、とても嬉しかった。誰かに頼られるというのは、やはり良いものだと改めて思う。
「まあとにかく、ミリーシャさんが特別何かを気にする必要はないということです」
「ありがとうございます、チャルテッドさん。色々とお世話になって……」
「いえいえ、私は別に何も……」
「……さてと、私はお先に失礼させてもらいますね」
「はい、お疲れ様です」
就業時間は、既に過ぎている。ただチャルテッドさんはまとめ役ということもあって、まだ色々とやることがあるようだ。
大変だと思いながらも、私はバラント商会の拠点から出て行く。チャルテッドさんには悪いが、私はもうくたくただ。メセリアやリエネッタさんも部屋で待っているだろうし、できるだけ早く帰りたい所である。
「もう日も暮れそうだし……うん?」
外に出てきた私は、周囲を見渡して動きを止めることになった。
商会の拠点の近くに豪勢な馬車が止まっていたからだ。それは明らかに、貴族の馬車である。
その馬車の目的が、誰であるかは考えるまでもない。十中八九、私であるだろう。これは少し、気を引き締めなければならない。
「……やっと出てきたか」
「……バラント商会の仕事は、やはり大変ということかしらね」
「まあ、そういうことだろう。少し気が引けるな……だが、行くしかない」
それから私の耳に、聞き覚えがある声が聞こえてきた。
ある程度予測していたことではあるが、やはり二人は私の元に来たようだ。イグニスとシスティア、その二人は何故かアルディス様とともに、馬車から出てきた。
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