勝手に期待しておいて「裏切られた」なんて言わないでください。

木山楽斗

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17.息子夫婦の失敗(モブ視点)

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 マーガレットは、息子夫婦から何が起こったのかを聞いた後、屋敷にいる使用人達から話を聞いていた。
 状況から考えて、息子夫婦二人の証言を完全に信頼することはできないと思ったのだ。
 様々な人から話を聞いた結果、マーガレットは状況を大方理解することができた。故に再度、息子夫婦と話すことにしたのだ。

「結論から言わせてもらいますが、あなた達はどうやらとんでもない愚か者だったようですね」
「……母上、それはどういうことですか?」
「ガルドラ、私は息子であるあなたのことを大切に思っていました。多少不出来な所があっても、その気持ちが揺らぐことなんてありませんでした。能力や才能なんて、私にとっては些細なことだったからです」
「むっ……」

 マーガレットは、息子の能力をよく知っている。
 勉強も魔法も秀でていた訳ではなかった彼が、孫の能力しか見ていなかった。その事実に、マーガレットはひどく心を痛めていた。
 彼女は息子が、そんなことよりも大切なことを知っていると思っていたのだ。だが、そんな彼女は自分の考えが浅はかであったことを悟っていた。

「イルフェリアをあなたが追い詰めたという事実は、非常に許すことができないことです。自分の娘を虐げるなど、なんと愚かなことでしょうか。ラムティリア、それはあなたも同じですよ?」
「わ、私は……」
「こういう言い方はしたくはありませんが、あなただって決して人に誇れる程の能力があった訳ではないでしょう?」
「そ、それは……」

 息子の嫁についても、マーガレットはそれなりに知っていた。
 嫁入りする前、彼女は自分が決して優秀な人間ではないと自負していた。それは当時、嘘偽りがないことだっただろう。
 しかし長い年月によって、彼女の根底にあった謙虚さは失われてしまった。マーガレットはその事実にも心を痛めていた。

「あなた達は、親として愚かなことをしました。その結果、このエルベルト侯爵家が子供という宝を失ったのです。因果応報とはこのことでしょう。さて、次期侯爵はあなた達の弟の息子であるエルガーに継がせるとしましょうか」
「なっ、それはあんまりではありませんか。それでは、私達は……」
「イルフェリアを見つけ出します。そうすれば、何も問題はありません」
「それは私が許しません。彼女は、自らの意思であなた達の元から旅立った。その意思を私は尊重するつもりです」

 既に一線を退いたマーガレットだったが、彼女の影響力はとても大きかった。
 多くの支持者を持つマーガレットの決定に、二人は逆らえないのである。

 弟の息子に侯爵の地位が継承されるということは、二人にとっては屈辱的なことだった。
 しかしそれを覆すことはできない。二人の元から、大事な宝は旅立った。その事実は、二人に重くのしかかってくるのだった。
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