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13.騎士の兄弟
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「……レオール、お前は何を言っているんだ?」
「……何?」
レオールさんの質問にどう答えようかと私が迷っていると、ルバートさんが口を挟んできた。
彼は、鋭い視線で弟を見つめている。なんというか、二人は険悪な雰囲気だ。
「僕達騎士の仕事は、市民の安全を守ることだ。彼女が、市民の安全を脅かすように見えるのか?」
「……厄介ごとを持ち込んでくる可能性はあるだろう」
「それは、その時に対処すればいいことだ。彼女は正規の手続きで国に入り、この町に来た。それはレネシアさんが証明してくれるだろう。その事実があるならば、僕達が事情を聞くべきことではない。個人の問題に介入するのは、騎士の仕事ではないだろう」
「それは……」
ルバートさんは、レオールさんにゆっくりとそう言い聞かせた。
二人の判断は、どちらも間違っているとはいえないだろう。怪しいか怪しくないかなんて、所詮は個人の判断だ。
だが、どうやらレオールさんは自身の判断が間違いだったと判断したらしい。なんというか、彼は悔しそうにしているのだ。
「……申し訳なかった。あんたのことを不当に疑ってしまった」
「ああ、いえ、お気になさらずに……」
「少し頭を冷やしてくる」
私に一言謝罪をしてから、レオールさんは私達に背を向けて歩いていった。
その背中は、少し物悲しい。私はなんというか、彼のことが少し気になった。
「すみません。弟が無礼な真似をしてしまって……」
「大丈夫です。彼が私を怪しいと思うことは理解できますから」
「常に紳士であることを心掛けろと、いつも言っているんですけどね」
ルバートさんは、私に対してとても紳士的に接してきた。
その様子から、なんとなくわかる。彼が、優秀な兄であるのだということが。
レオールは、そんな彼の弟である。もしかしたら彼も、ここにいるルバートさんと比較されてきたのかもしれない。
「すみません。少し行ってきます」
「え?」
そう思った瞬間、私の体は自然と動いていた。
はっきりとわかるという訳ではないが、彼は恐らく私と同じなのだ。
きっと彼は、兄に劣等感を覚えている。先程のやり取りは、それが出てきたものなのだ。私は、それをなんとなく感じ取っていた。
「……徒労に終わるのかもしれないけれど」
だから私は、彼と話をしたいと思った。
もしも彼が、私と同じであるというならば、何かが掴めるかもしれない。
私の心の中にあるお姉様への想い、それを改めて見つめ直すために私は歩き始めるのだった。
「……何?」
レオールさんの質問にどう答えようかと私が迷っていると、ルバートさんが口を挟んできた。
彼は、鋭い視線で弟を見つめている。なんというか、二人は険悪な雰囲気だ。
「僕達騎士の仕事は、市民の安全を守ることだ。彼女が、市民の安全を脅かすように見えるのか?」
「……厄介ごとを持ち込んでくる可能性はあるだろう」
「それは、その時に対処すればいいことだ。彼女は正規の手続きで国に入り、この町に来た。それはレネシアさんが証明してくれるだろう。その事実があるならば、僕達が事情を聞くべきことではない。個人の問題に介入するのは、騎士の仕事ではないだろう」
「それは……」
ルバートさんは、レオールさんにゆっくりとそう言い聞かせた。
二人の判断は、どちらも間違っているとはいえないだろう。怪しいか怪しくないかなんて、所詮は個人の判断だ。
だが、どうやらレオールさんは自身の判断が間違いだったと判断したらしい。なんというか、彼は悔しそうにしているのだ。
「……申し訳なかった。あんたのことを不当に疑ってしまった」
「ああ、いえ、お気になさらずに……」
「少し頭を冷やしてくる」
私に一言謝罪をしてから、レオールさんは私達に背を向けて歩いていった。
その背中は、少し物悲しい。私はなんというか、彼のことが少し気になった。
「すみません。弟が無礼な真似をしてしまって……」
「大丈夫です。彼が私を怪しいと思うことは理解できますから」
「常に紳士であることを心掛けろと、いつも言っているんですけどね」
ルバートさんは、私に対してとても紳士的に接してきた。
その様子から、なんとなくわかる。彼が、優秀な兄であるのだということが。
レオールは、そんな彼の弟である。もしかしたら彼も、ここにいるルバートさんと比較されてきたのかもしれない。
「すみません。少し行ってきます」
「え?」
そう思った瞬間、私の体は自然と動いていた。
はっきりとわかるという訳ではないが、彼は恐らく私と同じなのだ。
きっと彼は、兄に劣等感を覚えている。先程のやり取りは、それが出てきたものなのだ。私は、それをなんとなく感じ取っていた。
「……徒労に終わるのかもしれないけれど」
だから私は、彼と話をしたいと思った。
もしも彼が、私と同じであるというならば、何かが掴めるかもしれない。
私の心の中にあるお姉様への想い、それを改めて見つめ直すために私は歩き始めるのだった。
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