16 / 18
16.下らない提案
しおりを挟む
「侯爵令息との婚約だ。あなたにとっても悪い話ではないだろう。侯爵夫人になれるのだからな」
オーディス様は、私に対してその手をゆっくりと伸ばしてきた。
下卑た笑みを浮かべたその表情も合わせて、その動きには言い知れぬものがある。
ただ、彼が言っていることは滅茶苦茶だ。一体どうして、こんな風に婚約を申し込むことができるのか、私にはまったくわからない。
「優秀な妹の相手は疲れるので平凡な姉で妥協したい……なんて言われて、受け入れると思っているんですか?」
「何?」
「あなたという人は、満足に求婚することすらできないのですね。今改めてわかりました。あなたがリメルナの相手として、まったく持って相応しくないということが」
オーディス様という人間は、ひどく矮小な人なのだろう。虚飾で自分を大きく見せなければならない程に、彼は小さな人間なのだ。
それが今の言葉で、よくわかった。彼とリメルナとの間には、大きな差がある。二人は釣り合いが取れていない。
私はこれでも、リメルナのことを評価している。彼女は優秀で、それでいて器も大きな人間だ。そんな二人が婚約者としてやっている訳はない。
「そもそも妹に相手にされなかった所か、あなたは告白すらもしていませんよね? 勇気がなかったんですか?」
「ぼ、僕を侮辱するのか!」
「私の妹を先に侮辱したのはあなたの方ですよ。私はあなたのことが許せません」
元々許すつもりはなかったが、オーディス様のことが益々許せなくなっていた。
彼という人間がこれ以上自由にしていることが、私にはとても許容できない。少なくとも、今回のように噂が広がることは、阻止したい所だ。
「ふん、結局の所、ロディオン子爵家の姉妹というものは、愚かな姉妹だったということか。この僕をここまで侮辱して、ただで済むと思わないことだな」
「オーディス侯爵令息、あなたは何か勘違いをしているようですね?」
「何?」
「あなたの味方なんて、誰もいませんよ。僕はあなたの行いを公表します。あなたの兄であるエルヴァス侯爵令息もこちらの味方です。あなたを擁護するような人はいませんよ。トレファー侯爵家の権力も使わせはしません」
「なっ……!」
オーディス様に対して、ゼルート様は厳しい言葉をかけていた。
それに彼は、視線を泳がせている。流石にまずいということを、悟ったのだろうか。
彼という人間がここまで大きく出られるのは、トレファー侯爵家の権力があってのことだ。それが行使できないとしたらどうなるか、想像できない程に愚かという訳ではなかったようである。
オーディス様は、私に対してその手をゆっくりと伸ばしてきた。
下卑た笑みを浮かべたその表情も合わせて、その動きには言い知れぬものがある。
ただ、彼が言っていることは滅茶苦茶だ。一体どうして、こんな風に婚約を申し込むことができるのか、私にはまったくわからない。
「優秀な妹の相手は疲れるので平凡な姉で妥協したい……なんて言われて、受け入れると思っているんですか?」
「何?」
「あなたという人は、満足に求婚することすらできないのですね。今改めてわかりました。あなたがリメルナの相手として、まったく持って相応しくないということが」
オーディス様という人間は、ひどく矮小な人なのだろう。虚飾で自分を大きく見せなければならない程に、彼は小さな人間なのだ。
それが今の言葉で、よくわかった。彼とリメルナとの間には、大きな差がある。二人は釣り合いが取れていない。
私はこれでも、リメルナのことを評価している。彼女は優秀で、それでいて器も大きな人間だ。そんな二人が婚約者としてやっている訳はない。
「そもそも妹に相手にされなかった所か、あなたは告白すらもしていませんよね? 勇気がなかったんですか?」
「ぼ、僕を侮辱するのか!」
「私の妹を先に侮辱したのはあなたの方ですよ。私はあなたのことが許せません」
元々許すつもりはなかったが、オーディス様のことが益々許せなくなっていた。
彼という人間がこれ以上自由にしていることが、私にはとても許容できない。少なくとも、今回のように噂が広がることは、阻止したい所だ。
「ふん、結局の所、ロディオン子爵家の姉妹というものは、愚かな姉妹だったということか。この僕をここまで侮辱して、ただで済むと思わないことだな」
「オーディス侯爵令息、あなたは何か勘違いをしているようですね?」
「何?」
「あなたの味方なんて、誰もいませんよ。僕はあなたの行いを公表します。あなたの兄であるエルヴァス侯爵令息もこちらの味方です。あなたを擁護するような人はいませんよ。トレファー侯爵家の権力も使わせはしません」
「なっ……!」
オーディス様に対して、ゼルート様は厳しい言葉をかけていた。
それに彼は、視線を泳がせている。流石にまずいということを、悟ったのだろうか。
彼という人間がここまで大きく出られるのは、トレファー侯爵家の権力があってのことだ。それが行使できないとしたらどうなるか、想像できない程に愚かという訳ではなかったようである。
129
お気に入りに追加
371
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
侯爵夫人のハズですが、完全に無視されています
猫枕
恋愛
伯爵令嬢のシンディーは学園を卒業と同時にキャッシュ侯爵家に嫁がされた。
しかし婚姻から4年、旦那様に会ったのは一度きり、大きなお屋敷の端っこにある離れに住むように言われ、勝手な外出も禁じられている。
本宅にはシンディーの偽物が奥様と呼ばれて暮らしているらしい。
盛大な結婚式が行われたというがシンディーは出席していないし、今年3才になる息子がいるというが、もちろん産んだ覚えもない。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
今まで尽してきた私に、妾になれと言うんですか…?
水垣するめ
恋愛
主人公伯爵家のメアリー・キングスレーは公爵家長男のロビン・ウィンターと婚約していた。
メアリーは幼い頃から公爵のロビンと釣り合うように厳しい教育を受けていた。
そして学園に通い始めてからもロビンのために、生徒会の仕事を請け負い、尽していた。
しかしある日突然、ロビンは平民の女性を連れてきて「彼女を正妻にする!」と宣言した。
そしえメアリーには「お前は妾にする」と言ってきて…。
メアリーはロビンに失望し、婚約破棄をする。
婚約破棄は面子に関わるとロビンは引き留めようとしたが、メアリーは婚約破棄を押し通す。
そしてその後、ロビンのメアリーに対する仕打ちを知った王子や、周囲の貴族はロビンを責め始める…。
※小説家になろうでも掲載しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
義妹のせいで、婚約した相手に会う前にすっかり嫌われて婚約が白紙になったのになぜか私のことを探し回っていたようです
珠宮さくら
恋愛
サヴァスティンカ・メテリアは、ルーニア国の伯爵家に生まれた。母を亡くし、父は何を思ったのか再婚した。その再婚相手の連れ子は、義母と一緒で酷かった。いや、義母よりうんと酷かったかも知れない。
そんな義母と義妹によって、せっかく伯爵家に婿入りしてくれることになった子息に会う前にサヴァスティンカは嫌われることになり、婚約も白紙になってしまうのだが、義妹はその子息の兄と婚約することになったようで、義母と一緒になって大喜びしていた
。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】まだ結婚しないの? 私から奪うくらい好きな相手でしょう?
横居花琉
恋愛
長い間婚約しているのに結婚の話が進まないことに悩むフローラ。
婚約者のケインに相談を持ち掛けても消極的な返事だった。
しかし、ある時からケインの行動が変わったように感じられた。
ついに結婚に乗り気になったのかと期待したが、期待は裏切られた。
それも妹のリリーによってだった。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
婚約破棄は別にいいですけど、優秀な姉と無能な妹なんて噂、本気で信じてるんですか?
リオール
恋愛
侯爵家の執務を汗水流してこなしていた私──バルバラ。
だがある日突然、婚約者に婚約破棄を告げられ、父に次期当主は姉だと宣言され。出て行けと言われるのだった。
世間では姉が優秀、妹は駄目だと思われてるようですが、だから何?
せいぜい束の間の贅沢を楽しめばいいです。
貴方達が遊んでる間に、私は──侯爵家、乗っ取らせていただきます!
=====
いつもの勢いで書いた小説です。
前作とは逆に妹が主人公。優秀では無いけど努力する人。
妹、頑張ります!
※全41話完結。短編としておきながら読みの甘さが露呈…
【完結】返してください
仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
ずっと我慢をしてきた。
私が愛されていない事は感じていた。
だけど、信じたくなかった。
いつかは私を見てくれると思っていた。
妹は私から全てを奪って行った。
なにもかも、、、、信じていたあの人まで、、、
母から信じられない事実を告げられ、遂に私は家から追い出された。
もういい。
もう諦めた。
貴方達は私の家族じゃない。
私が相応しくないとしても、大事な物を取り返したい。
だから、、、、
私に全てを、、、
返してください。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
婚約者から妾になれと言われた私は、婚約を破棄することにしました
天宮有
恋愛
公爵令嬢の私エミリーは、婚約者のアシェル王子に「妾になれ」と言われてしまう。
アシェルは子爵令嬢のキアラを好きになったようで、妾になる原因を私のせいにしたいようだ。
もうアシェルと関わりたくない私は、妾にならず婚約破棄しようと決意していた。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】私から奪っていく妹にさよならを
横居花琉
恋愛
妹のメラニーに物を奪われたジャスミン。
両親はメラニーを可愛がり、ジャスミンに我慢するように言った。
やがて婚約者ができたジャスミンだったが、メラニーは婚約者も奪った。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる