「優秀な妹の相手は疲れるので平凡な姉で妥協したい」なんて言われて、受け入れると思っているんですか?

木山楽斗

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13.正反対な兄

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「さてと、まずはここからですね」
「ええ……」

 私とゼルート様は、三年生のクラスにやって来ていた。
 ここに来たのは、オーディス様の兄であるエルヴァス様と会うためである。
 彼から弟及びトレファー侯爵家の話を聞く。それが私達の目的である。

「エルヴァス侯爵令息には、事前に知らせていますが……おっと、あそこですね」
「彼がエルヴァス様ですか……聞いた通りの人ですね」

 私達が教室の外に立っていると、大柄の三年生がこちらにやって来た。
 その人物がエルヴァス様であるということは、私でもわかった。フェルトさんから、話を聞いていたからだ。
 魔法の名手でありながら、筋骨隆々である。それがエルヴァス様の特徴であり、今このクラスにいる人達の中でそれに当てはまるのはその人だけだ。

「ゼルート公爵令息、お久し振りですね」
「ええ、お元気でしたか?」
「お陰様で元気です。そちらは、ラルーナ嬢ですね?」
「あ、はい。私がラルーナです。ロディオン子爵家の長女です」
「私はエルヴァス。トレファー侯爵家の長男です」

 私は差し出された大きな手を取って、エルヴァス様と握手を交わした。
 上級生でありながら丁寧なその言動は、とてもオーディス様の兄であるとは思えない。
 ただ、顔は確かに似ていた。彼も彼で、容姿端麗なのだ。それよりも筋肉に目が行くが、その辺りはご愛敬というものだろう。

「ふむ、お二人はオーディスのことを聞きたいということでしたが……」
「ええ、実はそうなのです。できればトレファー侯爵家における彼の位置について、聞きたいと思っています」
「位置、ですか?」
「例えば、家を継ぐ立場はどちらかなどです」

 ゼルート様は、私が気になっていたことを聞いてくれた。
 オーディス様はリメルナを嫁として迎えると言っていたが、それは本当なのだろうか。普通なら、エルヴァス様が家を継ぐものだと思うのだが。

「当然、私ですが」
「そうですか……」
「……オーディスが何か言っているのですか?」
「ええ、まあ、トレファー侯爵家を貰い受けるとか言っていましたね」
「なるほど、奴らしいと言えば奴らしいですね。まったく、なんということを……」

 私の言葉に、エルヴァス様はため息をついた。
 彼のその反応で、オーディス様がどういった人間か理解が深まった。どうやら彼は、大言壮語であるらしい。
 いや、ホラ吹きと言った方が良いだろうか。リメルナのことを考えると、そうとしか言いようがない。もしかしたら妹は、とても厄介な男に目をつけられたのかもしれない。
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