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10.本当の婚約者
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魔法学園には、談話室というものが存在している。
ここは、人に聞かれたくない話をする時に便利な場所だ。生徒でも申請すれば借りられる場所であり、私も時々利用することがある。
その場において、私は一人の男性と顔を合わせていた。その見るからに優男である彼は、真っ直ぐに私の目を見てきている。
「初めまして、僕はフェルトといいます。リメルナ……じゃなくて、リメルナ様とお付き合いさせてもらっています」
「ご、ご丁寧にどうも」
緊張した面持ちで、フェルトという青年は挨拶をしてきた。
ただ、緊張しているのは彼だけではない。私の方も大いに緊張している。
「そんなに緊張することでは、ないと思うのだけれど」
「そういう訳にもいかないよ。僕は平民で、ただでさえ婚約を認めてもらえるかわからない立場である訳だし……」
「あなたの方は、まだ理解できるけれど、どうしてラルーナの方も同じくらい緊張しているのかしら?」
「だって、改まって挨拶されるとなると、気も引き締まるし」
妹の婚約者らしい人から挨拶をされるというのは、とても緊張することだということがよくわかった。こうして改まった場であることも関係しているのだろうか。とにかく私は、いつもよりも大量に汗をかいていた。
とはいえ、正直とても安心している。フェルトはなんというか、とても礼儀正しい好青年だ。彼ならば私も、その婚約を祝福することができる。
「いや、僕も安心していますよ」
「……私としては、どうしてあなたがここにいるのかがわからないのだけれど?」
「それは成り行き上仕方ないことですよ、リメルナ嬢。というか、僕がここにいることがそんなに不満なのですか?」
「別に、そういう訳ではないけれど」
この場には、共通の知人であるゼルート様もいた。
そんな彼のことをリメルナは警戒している。それは私にとっては、よくわからないことだった。何故そんなに警戒する必要があるのだろうか。彼は私に誤解を解くヒントをくれた、とても良い人であるというのに。
「ラルーナ様、そのですね、ゼルート様は僕の友人なんです。入学した時から、行動をともにしていて……」
「そうだったのですか? それは知りませんでした。でも、それが一体どうしたんですか?」
「えっと、端的に言ってしまえば、嫉妬というか」
「嫉妬……ああ、ふふっ」
「ラルーナ、笑わないでもらえるかしら?」
「ごめんごめん……」
リメルナの嫉妬がゼルート様に対して向けられている。その事実には、どうしても笑いを堪え切れなかった。
恋人が別の人と仲良くしているから嫉妬する。それは理解できない訳ではない。
しかし、その対象が男性であるというのは、少しおかしく思えた。別に二人は、友情を育んでいるだけだろうし。
「……ラルーナだって、いつかわかるわよ? 精々その時に後悔しなさい……」
リメルナは不機嫌そうに、私にそう言ってきた。
ただ、私は同じようにはならないだろう。仮に好きな人ができても、その人の同性の友達に嫉妬することなんて絶対にないと、断言することができる。私は、リメルナとは違うのだ。
ここは、人に聞かれたくない話をする時に便利な場所だ。生徒でも申請すれば借りられる場所であり、私も時々利用することがある。
その場において、私は一人の男性と顔を合わせていた。その見るからに優男である彼は、真っ直ぐに私の目を見てきている。
「初めまして、僕はフェルトといいます。リメルナ……じゃなくて、リメルナ様とお付き合いさせてもらっています」
「ご、ご丁寧にどうも」
緊張した面持ちで、フェルトという青年は挨拶をしてきた。
ただ、緊張しているのは彼だけではない。私の方も大いに緊張している。
「そんなに緊張することでは、ないと思うのだけれど」
「そういう訳にもいかないよ。僕は平民で、ただでさえ婚約を認めてもらえるかわからない立場である訳だし……」
「あなたの方は、まだ理解できるけれど、どうしてラルーナの方も同じくらい緊張しているのかしら?」
「だって、改まって挨拶されるとなると、気も引き締まるし」
妹の婚約者らしい人から挨拶をされるというのは、とても緊張することだということがよくわかった。こうして改まった場であることも関係しているのだろうか。とにかく私は、いつもよりも大量に汗をかいていた。
とはいえ、正直とても安心している。フェルトはなんというか、とても礼儀正しい好青年だ。彼ならば私も、その婚約を祝福することができる。
「いや、僕も安心していますよ」
「……私としては、どうしてあなたがここにいるのかがわからないのだけれど?」
「それは成り行き上仕方ないことですよ、リメルナ嬢。というか、僕がここにいることがそんなに不満なのですか?」
「別に、そういう訳ではないけれど」
この場には、共通の知人であるゼルート様もいた。
そんな彼のことをリメルナは警戒している。それは私にとっては、よくわからないことだった。何故そんなに警戒する必要があるのだろうか。彼は私に誤解を解くヒントをくれた、とても良い人であるというのに。
「ラルーナ様、そのですね、ゼルート様は僕の友人なんです。入学した時から、行動をともにしていて……」
「そうだったのですか? それは知りませんでした。でも、それが一体どうしたんですか?」
「えっと、端的に言ってしまえば、嫉妬というか」
「嫉妬……ああ、ふふっ」
「ラルーナ、笑わないでもらえるかしら?」
「ごめんごめん……」
リメルナの嫉妬がゼルート様に対して向けられている。その事実には、どうしても笑いを堪え切れなかった。
恋人が別の人と仲良くしているから嫉妬する。それは理解できない訳ではない。
しかし、その対象が男性であるというのは、少しおかしく思えた。別に二人は、友情を育んでいるだけだろうし。
「……ラルーナだって、いつかわかるわよ? 精々その時に後悔しなさい……」
リメルナは不機嫌そうに、私にそう言ってきた。
ただ、私は同じようにはならないだろう。仮に好きな人ができても、その人の同性の友達に嫉妬することなんて絶対にないと、断言することができる。私は、リメルナとは違うのだ。
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