上 下
1 / 18

1.平凡な姉として

しおりを挟む
 廊下に張り出された成績表の真ん中くらいに、ラルーナという私の名前は記されていた。
 良くも悪くもないその順位は、私という人間をそのまま表しているといえる。

 多くの人が集うこの魔法学園の中で、私は平凡な人間であるといえるだろう。
 一応、ロディオン子爵家の貴族令嬢ではあるが、そもそも貴族が多いここではそれは特別なこととも言い難い。
 同時にここに通っているような平民は、特別な人である訳で、そういう意味で私という人間は没個性だといえるだろう。

「すごいな、また一位だ」
「入学してからずっとそうだよな……」

 一方で、この学園には天才といえる人が一人いた。
 彼女の名前は、リメルナ・ロディオン子爵令嬢。私の双子の妹だ。

 リメルナは、あらゆる科目において一位を取り続けている。
 彼女が入学してからというもの、その位置にある名前は一度も変わっていない。不動の一位と呼ばれており、この魔法学園において成績争いというのは実質的に二位争いだ。

 そんな彼女と私が双子の姉妹であるということを、一体この学園のどれだけの人が認識しているだろうか。
 違いがあり過ぎて、わかっていない人が多いかもしれない。双子と言っても、二卵性であるため、そっくりという訳でもないのも、その一因だといえるだろう。

 ただ、別に知られていることが良いこととも言い難い。
 なぜなら知っている人は、ほとんど私のことを馬鹿にするからだ。
 出涸らしなんて言われることも少なくはない。とにかく私は、侮られやすいのだ。まあそれは、仕方ないことではあるのだが。

「あれ? またリメルナが一位だったの?」
「あ、うん。そうみたい。でも、別に今更驚くことではないんじゃない?」
「まあ、そうなんだけどさ。よくやるよね、本当に」

 私が順位表を見ていると、友人であるテセネア・メルード子爵令嬢が話しかけてきた。
 彼女は、この学園に入学する前からの友人である。リメルナとも交流はあったのだが、今は基本的には二人で過ごすことが多い。

「本人はよくやっているという自覚すらないと思うけど……」
「天才だもんね。それで、今回の実質的に一位は誰なのかな?」
「ゼルート様みたい」
「おお、流石は公爵令息……」
「学力にそれが関係あるのかはわからないけれど、真面目な人だからね」

 順位表を見ながら、私とテセネアは下らない世間話をしていた。
 上位争いをしている人達は別なのかもしれないが、私達はこれを見ても、そこまで心が動くという訳でもない。
 結局の所、卒業することができればそれで良いのだ。一番になるとかそういったことを考えていない私達は、なんとも呑気であるといえる。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】何故こうなったのでしょう? きれいな姉を押しのけブスな私が王子様の婚約者!!!

りまり
恋愛
きれいなお姉さまが最優先される実家で、ひっそりと別宅で生活していた。 食事も自分で用意しなければならないぐらい私は差別されていたのだ。 だから毎日アルバイトしてお金を稼いだ。 食べるものや着る物を買うために……パン屋さんで働かせてもらった。 パン屋さんは家の事情を知っていて、毎日余ったパンをくれたのでそれは感謝している。 そんな時お姉さまはこの国の第一王子さまに恋をしてしまった。 王子さまに自分を売り込むために、私は王子付きの侍女にされてしまったのだ。 そんなの自分でしろ!!!!!

お金のために氷の貴公子と婚約したけど、彼の幼なじみがマウントとってきます

恋愛
キャロライナはウシュハル伯爵家の長女。 お人好しな両親は領地管理を任せていた家令にお金を持ち逃げされ、うまい投資話に乗って伯爵家は莫大な損失を出した。 お金に困っているときにその縁談は舞い込んできた。 ローザンナ侯爵家の長男と結婚すれば損失の補填をしてくれるの言うのだ。もちろん、一も二もなくその縁談に飛び付いた。 相手は夜会で見かけたこともある、女性のように線が細いけれど、年頃の貴族令息の中では断トツで見目麗しいアルフォンソ様。 けれど、アルフォンソ様は社交界では氷の貴公子と呼ばれているぐらい無愛想で有名。 おまけに、私とアルフォンソ様の婚約が気に入らないのか、幼馴染のマウントトール伯爵令嬢が何だか上から目線で私に話し掛けてくる。 この婚約どうなる? ※ゆるゆる設定 ※感想欄ネタバレ配慮ないのでご注意ください

強すぎる力を隠し苦悩していた令嬢に転生したので、その力を使ってやり返します

天宮有
恋愛
 私は魔法が使える世界に転生して、伯爵令嬢のシンディ・リーイスになっていた。  その際にシンディの記憶が全て入ってきて、彼女が苦悩していたことを知る。  シンディは強すぎる魔力を持っていて、危険過ぎるからとその力を隠して生きてきた。  その結果、婚約者のオリドスに婚約破棄を言い渡されて、友人のヨハンに迷惑がかかると考えたようだ。  それなら――この強すぎる力で、全て解決すればいいだけだ。  私は今まで酷い扱いをシンディにしてきた元婚約者オリドスにやり返し、ヨハンを守ろうと決意していた。

婚約破棄ですか、すでに解消されたはずですが

ふじよし
恋愛
 パトリツィアはティリシス王国ラインマイヤー公爵の令嬢だ。  隣国ルセアノ皇国との国交回復を祝う夜会の直前、パトリツィアは第一王子ヘルムート・ビシュケンスに婚約破棄を宣言される。そのかたわらに立つ見知らぬ少女を自らの結婚相手に選んだらしい。  けれど、破棄もなにもパトリツィアとヘルムートの婚約はすでに解消されていた。 ※現在、小説家になろうにも掲載中です

【完結】義母が斡旋した相手と婚約破棄することになりまして。~申し訳ありませんが、私は王子と結婚します~

西東友一
恋愛
義母と義理の姉妹と暮らしていた私。 義母も義姉も義妹も私をイジメてきて、雑用ばかりさせてきましたが、 結婚できる歳になったら、売り払われるように商人と結婚させられそうになったのですが・・・・・・ 申し訳ありませんが、王子と結婚します。 ※※ 別の作品だと会話が多いのですが、今回は地の文を増やして一人の少女が心の中で感じたことを書くスタイルにしてみました。 ダイジェストっぽくなったような気もしますが、それも含めてコメントいただけるとありがたいです。 この作品だけ読むだけでも、嬉しいですが、他の作品を読んだり、お気に入りしていただけると嬉しいです。よろしくお願いいたします。

【完結】婚約破棄され処刑された私は人生をやり直す ~女狐に騙される男共を強制的に矯正してやる~

かのん
恋愛
 断頭台に立つのは婚約破棄され、家族にも婚約者にも友人にも捨てられたシャルロッテは高らかに笑い声をあげた。 「私の首が飛んだ瞬間から、自分たちに未来があるとは思うなかれ……そこが始まりですわ」  シャルロッテの首が跳ねとんだ瞬間、世界は黒い闇に包まれ、時空はうねりをあげ巻き戻る。  これは、断頭台で首チョンパされたシャルロッテが、男共を矯正していくお話。

見た目を変えろと命令したのに婚約破棄ですか。それなら元に戻るだけです

天宮有
恋愛
私テリナは、婚約者のアシェルから見た目を変えろと命令されて魔法薬を飲まされる。 魔法学園に入学する前の出来事で、他の男が私と関わることを阻止したかったようだ。 薬の効力によって、私は魔法の実力はあるけど醜い令嬢と呼ばれるようになってしまう。 それでも構わないと考えていたのに、アシェルは醜いから婚約破棄すると言い出した。

伯爵家に仕えるメイドですが、不当に給料を減らされたので、辞職しようと思います。ついでに、ご令嬢の浮気を、婚約者に密告しておきますね。

冬吹せいら
恋愛
エイリャーン伯爵家に仕えるメイド、アンリカ・ジェネッタは、日々不満を抱きながらも、働き続けていた。 ある日、不当に給料を減らされることになったアンリカは、辞職を決意する。 メイドでなくなった以上、家の秘密を守る必要も無い。 アンリカは、令嬢の浮気を、密告することにした。 エイリャーン家の没落が、始まろうとしている……。

処理中です...