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第10話 正義感の強さ

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「……ところで、一つ聞いてもいいですか?」
「はい、なんですか?」
「アドナス様は、どうして事件をここまで解決しようと動いているのですか? ケットラの行為が許せないと言っていましたが、本当にそれだけなのでしょうか?」

 そこで、私は聞きたくなってしまった。
 アドナス様は、事件について色々と考えている。しかし、どうしてそこまで事件を解決しようとしているのだろうか。
 ケットラの行いが一人の人間として許せないと、アドナス様は以前言っていた。
 しかし、それ以外にも何か理由があるように思える。今のアドナス様を見ていると、そう思えてしまうのだ。

「なるほど、そういうことでしたか。確かに、僕がここまで積極的に事件を解決しようとしていると、何か裏があるのかと思ってしまいますよね」
「あ、いえ、アドナス様が正義感の強い人だということはわかっています。だから、何かを企んでいるとか、そういうことは思っていません。ただ、何か今回の事件にこだわる理由があるのかと思いまして……」

 私は、アドナス様が裏で何かを企んでいるなどとは考えていなかった。
 だが、今回の事件にこだわる理由があるのかと思っただけだ。

「事件にこだわる理由ですか……確かに、ない訳ではないですね」
「あ、そうなのですね……」

 私の質問に、アドナス様はそう答えてくれた。
 私の予想通り、何かこだわる理由があるようだ。

「それを聞いてもいいでしょうか?」
「……そうですね。ミルトナ様には話しておいた方がいいかもしれません」

 私がさらに聞いてみると、アドナス様はそう言ってくれた。
 どうやら、理由を聞いてもいいようだ。それなら、聞かせてもらおう。

「単純に、僕はケットラのやり方が気に入っていない。これは、前に話しましたね」
「はい、そうですね」
「それに付け加えるなら、僕は前々からケットラという人間を快く思っていませんでした。何度か会いましたが、人をあざ笑う彼に僕は不快感を覚えていました」
「あ、アドナス様もそうだったのですね」

 アドナス様が話し始めたのは、ケットラに対する評価だった。
 前々から、アドナス様はケットラが気に入らなかったようだ。
 それは、私と同じだった。人をあざ笑うケットラは、やはり不快に思うようである。

「だから、私怨があったと言えるかもしれません。彼のような人間を心から許せないから、ここまでやる気になっているのかもしれませんね」
「そうなのですね……やはり、アドナス様は正義感が強いということがよくわかりました」

 アドナス様は、自身の私怨と言った。
 しかし、それは違うだろう。
 アドナス様は、正義感の強さからケットラのような人間が許せないのだ。
 だからこそ、アドナス様は燃えている。ケットラに正しき裁きを下そうとしているのだ。
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