誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。

５７．これからのこと

　私は、レリクス様と客室にいた。
　彼と色々と話し合うためだ。

「さて、これであなたの自由は約束されたという訳です。おめでとうございます。というべきでしょうか？」
「ええ……ありがとうございます、レリクス様。私のことを助けていただいて……」
「いえ、お気になさらず。あなたには恩がありますから、これくらいはお安い御用ですよ」

　私のお礼に、レリクス様はそのように返してきた。
　しかし、別に私は彼に大したことをした訳ではない。ズグヴェルさんやシェリウェントさんが、なんとかしてくれただけである。

　もっとも、彼が言っていることは真実ではないだろう。
　きっとレリクス様は、何もなくても私を助けてくれたはずだ。

「それで、これからどうするつもりですか？」
「どうするつもりか、ですか……」
「もちろん、あなたの生活は保障するつもりです。父上は、オルフェント公爵夫妻にこれまであなたにしてきた行いに対する対価を求めるつもりです。その資金があれば、あなたの生活は保障されます。もっとも、一生遊んで暮らせるという訳ではないでしょうが……」
「ええ、それは問題ありません」

　レリクス様には、私がオルフェント公爵家を抜け出したいという旨を伝えていた。
　それを受けて、彼は国王様に相談してくれたのである。

　結果的に、私は公爵家を抜け出せた。
　それによって、私の今後の生活に関する保証がなくなることも、わかっていたことだ。

　私は、それでも構わないと思っていた。
　あの公爵家に囚われているよりも、その方がずっといいからである。

「学園は、どうされるつもりですか？」
「……そうですね。できることなら、卒業まで通いたいとは思っていますが」
「僕もその方がいいと思っています。学園では、色々なことが学べます。それは、あなたの今後に活かされるはずです」

　私の言葉に、レリクス様はゆっくりと頷いた。
　学園に通うことは、私も望んでいることだ。

　授業などが億劫だと思うこともあるが、魔法学園というのは非常に優れた教育機関である。
　そこでこちらの世界の常識をしっかりと学んで、今後の人生に活かしていく。それは、かなり有益なことだろう。

「ただ、あなたの状況から、色々なことを言われるかもしれません。その覚悟は、決めておいた方がいいと思います」
「そうですね……でも、まあ、その辺りのことは問題ありません。私の友人は、そんな悪評に流されない人達だと思っていますから」
「……そうですね」

　学園で悪い噂が立つことも、覚悟の上である。
　それでも構わない。公爵家での扱いに比べれば、そんなものは大したことではない。
　公爵家と違って、学園には味方がいる。それだけで、雲泥の差があるのだ。