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56.自由への宣言
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「彼女と僕には、同じ痣があります。僕と彼女は、同胞なのですよ」
「なっ……それは、一体?」
「この痣というのは、確かに呪われた痣なのかもしれません。最近、聖痕と同じかもしれないという調査結果を得られましたが、真偽は定かではありません」
「……」
レリクス様の言葉に、お父様もお母様も黙っていた。
まだ彼の体に私と同じ痣があるという事実が、受け入れられていないのだろう。
「ただ、僕は同じ痣を持つ者として、彼女の受けてきたことが許せないのです。それは、理解していただけますよね?」
「むっ……」
同じ痣を持っているレリクス様が、私の境遇に同情する。それは、かなり自然なことだろう。
もっとも、それは真っ赤な嘘である。彼の痣は、私から移ったものだ。
「レリクスよ、少し待て」
「父上、どうかされましたか?」
そこで、今まで黙っていた国王様がゆっくりと口を開いた。
その言葉に、お父様とお母様は表情を変える。それは期待と不安が入り混じった表情だ。国王様が、どのような考えを抱いているかわからないため、そんな表情なのだろう。
「お主の怒りは、わしもわかる。ただ、少し落ち着くのだ」
「別に、僕は冷静ですよ」
「いや、今のお主が冷静であるとはとても思えない。ここは、わしに話をまとめさせてもらいたい」
「父上が?」
レリクス様と国王様は、そんなやり取りを交わしていた。
それは、自然なやり取りのように見える。だが、実際の所、これはとても白々しいやり取りだ。
国王様とレリクス様は、事前に打ち合わせをしていた。つまり、このやり取りは元々決まっていたものなのである。
「オルフェント公爵よ。わしは、子供は宝であると思っておる。娘が生まれた時、お主はそうは思わなかったのか?」
「……」
「呪われた痣、そのようなものがあろうとも、なかろうとも、自らの子供に対してお主達が愛を抱けるならば、冷遇などしなかったはずだ。根本的に、お主は人間的な心を失っているとしか、わしには思えない」
「そ、それは……」
国王様は、二人のことを大きく批判した。
その怒りは、恐らく本心であるだろう。その表情を見れば、それはわかる。
「わしは、お主達には相応の罰を与えるべきだと思っている。同時に、これ以上エルファリナ嬢をお主達の元におらせるわけにはいかん。この国王の名の元に、彼女は保護させてもらう」
「……」
「今後一切、お主達がエルファリナに関わることをわしは許さない」
国王様は、堂々とそう宣言してくれた。
それは、私にとって嬉しいことである。この国の最高権力者が、私の自由を約束してくれたのだ。
「なっ……それは、一体?」
「この痣というのは、確かに呪われた痣なのかもしれません。最近、聖痕と同じかもしれないという調査結果を得られましたが、真偽は定かではありません」
「……」
レリクス様の言葉に、お父様もお母様も黙っていた。
まだ彼の体に私と同じ痣があるという事実が、受け入れられていないのだろう。
「ただ、僕は同じ痣を持つ者として、彼女の受けてきたことが許せないのです。それは、理解していただけますよね?」
「むっ……」
同じ痣を持っているレリクス様が、私の境遇に同情する。それは、かなり自然なことだろう。
もっとも、それは真っ赤な嘘である。彼の痣は、私から移ったものだ。
「レリクスよ、少し待て」
「父上、どうかされましたか?」
そこで、今まで黙っていた国王様がゆっくりと口を開いた。
その言葉に、お父様とお母様は表情を変える。それは期待と不安が入り混じった表情だ。国王様が、どのような考えを抱いているかわからないため、そんな表情なのだろう。
「お主の怒りは、わしもわかる。ただ、少し落ち着くのだ」
「別に、僕は冷静ですよ」
「いや、今のお主が冷静であるとはとても思えない。ここは、わしに話をまとめさせてもらいたい」
「父上が?」
レリクス様と国王様は、そんなやり取りを交わしていた。
それは、自然なやり取りのように見える。だが、実際の所、これはとても白々しいやり取りだ。
国王様とレリクス様は、事前に打ち合わせをしていた。つまり、このやり取りは元々決まっていたものなのである。
「オルフェント公爵よ。わしは、子供は宝であると思っておる。娘が生まれた時、お主はそうは思わなかったのか?」
「……」
「呪われた痣、そのようなものがあろうとも、なかろうとも、自らの子供に対してお主達が愛を抱けるならば、冷遇などしなかったはずだ。根本的に、お主は人間的な心を失っているとしか、わしには思えない」
「そ、それは……」
国王様は、二人のことを大きく批判した。
その怒りは、恐らく本心であるだろう。その表情を見れば、それはわかる。
「わしは、お主達には相応の罰を与えるべきだと思っている。同時に、これ以上エルファリナ嬢をお主達の元におらせるわけにはいかん。この国王の名の元に、彼女は保護させてもらう」
「……」
「今後一切、お主達がエルファリナに関わることをわしは許さない」
国王様は、堂々とそう宣言してくれた。
それは、私にとって嬉しいことである。この国の最高権力者が、私の自由を約束してくれたのだ。
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