44 / 58
44.ゲームでは
しおりを挟む
「確か……」
私は、ゲームのレリクス様がどうなったのかを思い出す。
当然のことながら、主人公であるセリティナは最終的にレリクス様と結ばれる。
それは、ハッピーエンドだった。もっとも、仮に今と同じ状況であるならば、それが幸福な結末とはいえないのかもしれないが。
「うーん……」
『どうしたのだ?』
私は改めて、ゲームのことを振り返っていた。
あのゲームにおいて、セリティナやレリクス様は龍や悪しき王が宿っていたのだろうか。
少なくとも、ゲーム中にそのような描写はなかったはずである。ただ、聖痕や呪われた痣という設定はあったので、そちらもありそうなものではある。
ただ、裏設定としてそれがあったのだとしたら、それは余計なものであるように思える。
せっかくハッピーエンドになったのに、実は違ったなんて、それは悪趣味でしかないのではないだろうか。
というか、そんな設定に何の意味があるのだろうか。わざわざ、そんなことをするとは思えない。
ということは、ゲームにそんな設定はなかったということだろうか。
それなら、前世の記憶を辿っても仕方ないのかもしれない。
「いや、でも……」
『む?』
しかし、そこで私はあることを思い出した。
そういえば、ゲームでの彼とこちらの世界での彼は、同じような人物だったのだ。
私は、その振る舞いに違和感を覚えていなかった。それは、どう判断するべきなのだろうか。
「そっちも、考えても仕方ないか……」
『ふむ……』
色々と考えた結果、私はそのような結論を出していた。
ゲームの内容にも、特に手がかりはなさそうである。こちらも、考えても無駄なようだ。
『……前世のことを考えていたのか?』
「え?」
そんなことを考えていると、ズグヴェルさんがそのようなことを言ってきた。
それに、私は驚いていた。どうして彼がそれを知っているのだろうか。
『お前はよくそんなことを言っていただろう……お前の考えていることが全てわかるという訳ではないが、独り言は聞こえていたぞ』
「独り言……あっ」
ズグヴェルさんの指摘に、私は気付いた。
そういえば、私は考えを整理するために、よく独り言を呟いていたのだ。
ズグヴェルさんは、私達の呼びかけには応えてくれる。それは、外のことが聞こえているからだ。
ということは、当然独り言も聞こえている。それは、普通に考えられることだった。
『別に、気にする必要はない。前世や別の世界などといったことは、我ら龍にとってはそこまで驚くべきことではない』
「そ、そうですか……」
ズグヴェルさんは、意外にすんなりと私の事情を受け入れてくれていた。
そのことに、私は少し安心する。もしかして、案外私の転生という事実は、些細なことなのだろうか。
私は、ゲームのレリクス様がどうなったのかを思い出す。
当然のことながら、主人公であるセリティナは最終的にレリクス様と結ばれる。
それは、ハッピーエンドだった。もっとも、仮に今と同じ状況であるならば、それが幸福な結末とはいえないのかもしれないが。
「うーん……」
『どうしたのだ?』
私は改めて、ゲームのことを振り返っていた。
あのゲームにおいて、セリティナやレリクス様は龍や悪しき王が宿っていたのだろうか。
少なくとも、ゲーム中にそのような描写はなかったはずである。ただ、聖痕や呪われた痣という設定はあったので、そちらもありそうなものではある。
ただ、裏設定としてそれがあったのだとしたら、それは余計なものであるように思える。
せっかくハッピーエンドになったのに、実は違ったなんて、それは悪趣味でしかないのではないだろうか。
というか、そんな設定に何の意味があるのだろうか。わざわざ、そんなことをするとは思えない。
ということは、ゲームにそんな設定はなかったということだろうか。
それなら、前世の記憶を辿っても仕方ないのかもしれない。
「いや、でも……」
『む?』
しかし、そこで私はあることを思い出した。
そういえば、ゲームでの彼とこちらの世界での彼は、同じような人物だったのだ。
私は、その振る舞いに違和感を覚えていなかった。それは、どう判断するべきなのだろうか。
「そっちも、考えても仕方ないか……」
『ふむ……』
色々と考えた結果、私はそのような結論を出していた。
ゲームの内容にも、特に手がかりはなさそうである。こちらも、考えても無駄なようだ。
『……前世のことを考えていたのか?』
「え?」
そんなことを考えていると、ズグヴェルさんがそのようなことを言ってきた。
それに、私は驚いていた。どうして彼がそれを知っているのだろうか。
『お前はよくそんなことを言っていただろう……お前の考えていることが全てわかるという訳ではないが、独り言は聞こえていたぞ』
「独り言……あっ」
ズグヴェルさんの指摘に、私は気付いた。
そういえば、私は考えを整理するために、よく独り言を呟いていたのだ。
ズグヴェルさんは、私達の呼びかけには応えてくれる。それは、外のことが聞こえているからだ。
ということは、当然独り言も聞こえている。それは、普通に考えられることだった。
『別に、気にする必要はない。前世や別の世界などといったことは、我ら龍にとってはそこまで驚くべきことではない』
「そ、そうですか……」
ズグヴェルさんは、意外にすんなりと私の事情を受け入れてくれていた。
そのことに、私は少し安心する。もしかして、案外私の転生という事実は、些細なことなのだろうか。
56
お気に入りに追加
1,948
あなたにおすすめの小説

村娘になった悪役令嬢
枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。
ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。
村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。
※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります)
アルファポリスのみ後日談投稿しております。

【コミカライズ決定】地味令嬢は冤罪で処刑されて逆行転生したので、華麗な悪女を目指します!~目隠れ美形の天才王子に溺愛されまして~
胡蝶乃夢
恋愛
婚約者である王太子の望む通り『理想の淑女』として尽くしてきたにも関わらず、婚約破棄された挙句に冤罪で処刑されてしまった公爵令嬢ガーネット。
時間が遡り目覚めたガーネットは、二度と自分を犠牲にして尽くしたりしないと怒り、今度は自分勝手に生きる『華麗な悪女』になると決意する。
王太子の弟であるルベリウス王子にガーネットは留学をやめて傍にいて欲しいと願う。
処刑された時、留学中でいなかった彼がガーネットの傍にいることで運命は大きく変わっていく。
これは、不憫な地味令嬢が華麗な悪女へと変貌して周囲を魅了し、幼馴染の天才王子にも溺愛され、ざまぁして幸せになる物語です。

家族に裏切られて辺境で幸せを掴む?
しゃーりん
恋愛
婚約者を妹に取られる。
そんな小説みたいなことが本当に起こった。
婚約者が姉から妹に代わるだけ?しかし私はそれを許さず、慰謝料を請求した。
婚約破棄と共に跡継ぎでもなくなったから。
仕事だけをさせようと思っていた父に失望し、伯父のいる辺境に行くことにする。
これからは辺境で仕事に生きよう。そう決めて王都を旅立った。
辺境で新たな出会いがあり、付き合い始めたけど?というお話です。
性悪という理由で婚約破棄された嫌われ者の令嬢~心の綺麗な者しか好かれない精霊と友達になる~
黒塔真実
恋愛
公爵令嬢カリーナは幼い頃から後妻と義妹によって悪者にされ孤独に育ってきた。15歳になり入学した王立学園でも、悪知恵の働く義妹とカリーナの婚約者でありながら義妹に洗脳されている第二王子の働きにより、学園中の嫌われ者になってしまう。しかも再会した初恋の第一王子にまで軽蔑されてしまい、さらに止めの一撃のように第二王子に「性悪」を理由に婚約破棄を宣言されて……!? 恋愛&悪が報いを受ける「ざまぁ」もの!! ※※※主人公は最終的にチート能力に目覚めます※※※アルファポリスオンリー※※※皆様の応援のおかげで第14回恋愛大賞で奨励賞を頂きました。ありがとうございます※※※
すみません、すっきりざまぁ終了したのでいったん完結します→※書籍化予定部分=【本編】を引き下げます。【番外編】追加予定→ルシアン視点追加→最新のディー視点の番外編は書籍化関連のページにて、アンケートに答えると読めます!!

ランプの令嬢は妹の婚約者に溺愛され過ぎている
ユウ
恋愛
銀髪に紫の瞳を持つ伯爵令嬢のフローレンスには社交界の華と呼ばれる絶世の美女の妹がいた。
ジェネットは幼少期の頃に病弱だったので両親から溺愛され甘やかされ育つ。
婚約者ですらジェネットを愛し、婚約破棄を突きつけられてしまう。
そして何もかも奪われ社交界でも醜聞を流され両親に罵倒され没落令嬢として捨てられたフローレンスはジェネットの身代わりとして東南を統べる公爵家の子息、アリシェの婚約者となる。
褐色の肌と黒髪を持つ風貌で口数の少ないアリシェは令嬢からも嫌われていたが、伯爵家の侮辱にも顔色を変えず婚約者の交換を受け入れるのだが…。
大富豪侯爵家に迎えられ、これまでの生活が一変する。
対する伯爵家でフローレンスがいなくなった所為で領地経営が上手くいかず借金まみれとなり、再び婚約者の交換を要求するが…
「お断りいたします」
裏切った婚約者も自分を捨てた家族も拒絶するのだった。
修道女エンドの悪役令嬢が実は聖女だったわけですが今更助けてなんて言わないですよね
星里有乃
恋愛
『お久しぶりですわ、バッカス王太子。ルイーゼの名は捨てて今は洗礼名のセシリアで暮らしております。そちらには聖女ミカエラさんがいるのだから、私がいなくても安心ね。ご機嫌よう……』
悪役令嬢ルイーゼは聖女ミカエラへの嫌がらせという濡れ衣を着せられて、辺境の修道院へ追放されてしまう。2年後、魔族の襲撃により王都はピンチに陥り、真の聖女はミカエラではなくルイーゼだったことが判明する。
地母神との誓いにより祖国の土地だけは踏めないルイーゼに、今更助けを求めることは不可能。さらに、ルイーゼには別の国の王子から求婚話が来ていて……?
* この作品は、アルファポリスさんと小説家になろうさんに投稿しています。
* 2025年2月1日、本編完結しました。予定より少し文字数多めです。番外編や後日談など、また改めて投稿出来たらと思います。ご覧いただきありがとうございました!

【完結】 悪役令嬢が死ぬまでにしたい10のこと
淡麗 マナ
恋愛
2022/04/07 小説ホットランキング女性向け1位に入ることができました。皆様の応援のおかげです。ありがとうございます。
第3回 一二三書房WEB小説大賞の最終選考作品です。(5,668作品のなかで45作品)
※コメント欄でネタバレしています。私のミスです。ネタバレしたくない方は読み終わったあとにコメントをご覧ください。
原因不明の病により、余命3ヶ月と診断された公爵令嬢のフェイト・アシュフォード。
よりによって今日は、王太子殿下とフェイトの婚約が発表されるパーティの日。
王太子殿下のことを考えれば、わたくしは身を引いたほうが良い。
どうやって婚約をお断りしようかと考えていると、王太子殿下の横には容姿端麗の女性が。逆に婚約破棄されて傷心するフェイト。
家に帰り、一冊の本をとりだす。それはフェイトが敬愛する、悪役令嬢とよばれた公爵令嬢ヴァイオレットが活躍する物語。そのなかに、【死ぬまでにしたい10のこと】を決める描写があり、フェイトはそれを真似してリストを作り、生きる指針とする。
1.余命のことは絶対にだれにも知られないこと。
2.悪役令嬢ヴァイオレットになりきる。あえて人から嫌われることで、自分が死んだ時の悲しみを減らす。(これは実行できなくて、後で変更することになる)
3.必ず病気の原因を突き止め、治療法を見つけだし、他の人が病気にならないようにする。
4.ノブレス・オブリージュ 公爵令嬢としての責務をいつもどおり果たす。
5.お父様と弟の問題を解決する。
それと、目に入れても痛くない、白蛇のイタムの新しい飼い主を探さねばなりませんし、恋……というものもしてみたいし、矛盾していますけれど、友達も欲しい。etc.
リストに従い、持ち前の執務能力、するどい観察眼を持って、人々の問題や悩みを解決していくフェイト。
ただし、悪役令嬢の振りをして、人から嫌われることは上手くいかない。逆に好かれてしまう! では、リストを変更しよう。わたくしの身代わりを立て、遠くに嫁いでもらうのはどうでしょう?
たとえ失敗しても10のリストを修正し、最善を尽くすフェイト。
これはフェイトが、余命3ヶ月で10のしたいことを実行する物語。皆を自らの死によって悲しませない為に足掻き、運命に立ち向かう、逆転劇。
【注意点】
恋愛要素は弱め。
設定はかなりゆるめに作っています。
1人か、2人、苛立つキャラクターが出てくると思いますが、爽快なざまぁはありません。
2章以降だいぶ殺伐として、不穏な感じになりますので、合わないと思ったら辞めることをお勧めします。

シナリオ通り追放されて早死にしましたが幸せでした
黒姫
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生しました。神様によると、婚約者の王太子に断罪されて極北の修道院に幽閉され、30歳を前にして死んでしまう設定は変えられないそうです。さて、それでも幸せになるにはどうしたら良いでしょうか?(2/16 完結。カテゴリーを恋愛に変更しました。)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる