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44.ゲームでは

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「確か……」

 私は、ゲームのレリクス様がどうなったのかを思い出す。
 当然のことながら、主人公であるセリティナは最終的にレリクス様と結ばれる。
 それは、ハッピーエンドだった。もっとも、仮に今と同じ状況であるならば、それが幸福な結末とはいえないのかもしれないが。

「うーん……」
『どうしたのだ?』

 私は改めて、ゲームのことを振り返っていた。
 あのゲームにおいて、セリティナやレリクス様は龍や悪しき王が宿っていたのだろうか。
 少なくとも、ゲーム中にそのような描写はなかったはずである。ただ、聖痕や呪われた痣という設定はあったので、そちらもありそうなものではある。

 ただ、裏設定としてそれがあったのだとしたら、それは余計なものであるように思える。
 せっかくハッピーエンドになったのに、実は違ったなんて、それは悪趣味でしかないのではないだろうか。
 というか、そんな設定に何の意味があるのだろうか。わざわざ、そんなことをするとは思えない。

 ということは、ゲームにそんな設定はなかったということだろうか。
 それなら、前世の記憶を辿っても仕方ないのかもしれない。

「いや、でも……」
『む?』

 しかし、そこで私はあることを思い出した。
 そういえば、ゲームでの彼とこちらの世界での彼は、同じような人物だったのだ。
 私は、その振る舞いに違和感を覚えていなかった。それは、どう判断するべきなのだろうか。

「そっちも、考えても仕方ないか……」
『ふむ……』

 色々と考えた結果、私はそのような結論を出していた。
 ゲームの内容にも、特に手がかりはなさそうである。こちらも、考えても無駄なようだ。

『……前世のことを考えていたのか?』
「え?」

 そんなことを考えていると、ズグヴェルさんがそのようなことを言ってきた。
 それに、私は驚いていた。どうして彼がそれを知っているのだろうか。

『お前はよくそんなことを言っていただろう……お前の考えていることが全てわかるという訳ではないが、独り言は聞こえていたぞ』
「独り言……あっ」

 ズグヴェルさんの指摘に、私は気付いた。
 そういえば、私は考えを整理するために、よく独り言を呟いていたのだ。
 ズグヴェルさんは、私達の呼びかけには応えてくれる。それは、外のことが聞こえているからだ。
 ということは、当然独り言も聞こえている。それは、普通に考えられることだった。

『別に、気にする必要はない。前世や別の世界などといったことは、我ら龍にとってはそこまで驚くべきことではない』
「そ、そうですか……」

 ズグヴェルさんは、意外にすんなりと私の事情を受け入れてくれていた。
 そのことに、私は少し安心する。もしかして、案外私の転生という事実は、些細なことなのだろうか。
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