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38.王が宿るのは
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「えっと……」
「これは……」
ズグヴェルさんは、私達の前でペンを走らせた。
その内容を声に出そうとした私は、その言葉を飲み込む。
なぜなら、その内容は何も声に出すなというものだったからである。
「……」
「……」
私とセリティナは、目を見合わせた。
そのまま、私達は黙る。その指示に従うことにしたのだ。
『壁を背にしろ』
ズグヴェルさんは、私達の前でさらにペンを走らせて、そう書き記した。
その指示に、私達はまた従う。恐らく、これは重要なことだ。これから話すことは、誰かにも知られたくないことなのだろう。
『悪しき王……ドグマードは、お前達のよく知る人物に宿っている』
ズグヴェルさんは、ゆっくりとそう書いた。
その内容に、私達は驚いた。その内容だけで、ある程度人物が絞られたからだ。
私のよく知る人物、それは一体誰なのだろう。
『奴は、レリクスという男に宿っている……あの男を陰で操っているのだ』
「……っ!」
私は、ズグヴェルさんの書いたことに思わず声を出しそうになった。
それをなんとか踏み止まって、再び彼の書いた文字に目を通す。
もちろん、私達がよく知る人物という時点で、それを予想していない訳ではなかった。
だが、それでもその内容は動揺するものだったのである。
『恐らく、奴はまだこちらが気づいているということをわかっていない。しかし、先程の会話で、ある程度悟られた可能性はある。奴は、お前達を監視させているはずだからな……』
ズグヴェルさんの言葉に、私は思い出した。
そういえば、レリクス様はセリティナのことを監視していたのである。
それは、恐らく今も続いているだろう。今までの会話も、聞かれていた可能性があるのだ。
『だが、情報を隠しておくことは必要だ。故に、お前達にはこの手紙の内容を隠しておいてもらいたい。会話が終わった後は、この手紙は破棄してくれ』
私は、レリクス様は王子としての責務で行動していると思っていた。
しかし、そうではなかったのだ。彼は、悪しき王に操られて、行動していたのである。
それは恐るべきことだ。彼の今までの行動は、一体どこまでが本当の彼だったのだろうか。
『悪しき王が、レリクスにどこまで干渉しているのかはわからない。しかし、奴が権力者に宿っているという事実は、恐ろしいものだ』
ズグヴェルさんは、レリクス様の状態に対してそのように書き記した。
権力者の王子であるレリクスは、色々なことができる。そんな彼に悪しき王が宿っている状況は、かなりまずいものだろう。
「これは……」
ズグヴェルさんは、私達の前でペンを走らせた。
その内容を声に出そうとした私は、その言葉を飲み込む。
なぜなら、その内容は何も声に出すなというものだったからである。
「……」
「……」
私とセリティナは、目を見合わせた。
そのまま、私達は黙る。その指示に従うことにしたのだ。
『壁を背にしろ』
ズグヴェルさんは、私達の前でさらにペンを走らせて、そう書き記した。
その指示に、私達はまた従う。恐らく、これは重要なことだ。これから話すことは、誰かにも知られたくないことなのだろう。
『悪しき王……ドグマードは、お前達のよく知る人物に宿っている』
ズグヴェルさんは、ゆっくりとそう書いた。
その内容に、私達は驚いた。その内容だけで、ある程度人物が絞られたからだ。
私のよく知る人物、それは一体誰なのだろう。
『奴は、レリクスという男に宿っている……あの男を陰で操っているのだ』
「……っ!」
私は、ズグヴェルさんの書いたことに思わず声を出しそうになった。
それをなんとか踏み止まって、再び彼の書いた文字に目を通す。
もちろん、私達がよく知る人物という時点で、それを予想していない訳ではなかった。
だが、それでもその内容は動揺するものだったのである。
『恐らく、奴はまだこちらが気づいているということをわかっていない。しかし、先程の会話で、ある程度悟られた可能性はある。奴は、お前達を監視させているはずだからな……』
ズグヴェルさんの言葉に、私は思い出した。
そういえば、レリクス様はセリティナのことを監視していたのである。
それは、恐らく今も続いているだろう。今までの会話も、聞かれていた可能性があるのだ。
『だが、情報を隠しておくことは必要だ。故に、お前達にはこの手紙の内容を隠しておいてもらいたい。会話が終わった後は、この手紙は破棄してくれ』
私は、レリクス様は王子としての責務で行動していると思っていた。
しかし、そうではなかったのだ。彼は、悪しき王に操られて、行動していたのである。
それは恐るべきことだ。彼の今までの行動は、一体どこまでが本当の彼だったのだろうか。
『悪しき王が、レリクスにどこまで干渉しているのかはわからない。しかし、奴が権力者に宿っているという事実は、恐ろしいものだ』
ズグヴェルさんは、レリクス様の状態に対してそのように書き記した。
権力者の王子であるレリクスは、色々なことができる。そんな彼に悪しき王が宿っている状況は、かなりまずいものだろう。
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