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23.彼の本性

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「僕の隠し事……それは、この本性です」
「本性……」
「ええ、これが素の僕です。あなたは、それをわかっていたのでしょう?」
「……」
「また沈黙ですか……」

 レリクス様は、いつも猫を被っている。それを私は、確かに知っていた。
 彼は、悪い人ではない。だが、その丁寧な対応も柔らかい態度も、全ては偽りなのだ。

「何故わかったのか。それは、あなたが隠していることが関係している。それはきっと、セリティナさんのことも関係しているのでしょうね?」
「……」
「……少しは、喋っていただけませんか?」

 レリクス様の呼びかけに、私は答えられなかった。
 彼が全てを見抜いている。その事実に、私はとても驚いていた。
 そのため、上手く言葉が出てこない。今の彼に対して、何を言えばいいのかがわからないのである。

「それだけではありません。あなたは、バウールのことも知っていた。彼の僕に対するあの態度を見ても、左程驚いていなかったはずです」
「……」
「でも、不思議なことに、あなたは限られた人間にしかそういう反応を見せない。クラスメイトの自己紹介などの時には、普通の反応をしていました」

 レリクス様は、私のことをとてもよく見ていた。
 それだけ、私の隠し事が気になったということなのかもしれない。

 それはきっと、自分の不利益になることを危惧しているからだろう。
 彼にとって、その本性は隠しておきたいものだ。それを知っているかもしれない私は、警戒するべき対象だったのである。

「……さて、あなたが何を隠しているのか。それは、僕にとってとても重要なことです。なぜなら、それは僕にとって手札になるからです」
「手札?」
「あなたが僕の秘密を握っているのなら、僕もあなたの秘密を握っておきたいのです。そうすれば、あなたも滅多なことはしないはずですから」

 レリクス様は、安心したいようだ。
 私が本性をばらすかもしれない。そんな恐怖を打ち消すためにも、交渉する材料を持っておきたいのだろう。
 それは、わからない訳ではない。確かに、人に知られたくないことを他人に握られているという状況なら、そういう考えが思い浮かんできても、左程不思議ではない。

「……信用していただけませんか? 私は、あなたの友人であると」
「……ええ」

 私の言葉に対して、レリクス様は短く返答してきた。
 色々と言いたいことはあるが、私は彼のことも友人だと思っている。そんな彼に対して、そんなものは必要ないとそう思ってもらいたかった。
 だが、それは無理なようだ。どうやら、彼は絶対的な材料が欲しいらしい。
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