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22.一線を引いた態度

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「僕は……あなたに聞きたいことがあるのです」
「……はい、なんですか?」
「あなたは、どこまで知っているんですか?」

 雰囲気が変わったレリクス様は、私にゆっくりと問いかけてきた。
 その質問は、少し抽象的である。どこまで知っているか、それは何を示しているのだろうか。

 いや、彼の質問の意図は、なんとなくわかっている。
 きっと、彼は自分の本性を知っているかどうかを問い掛けているのだろう。

「……どういうことですか?」
「はぐらかさなくてもいいですよ。もうわかっていますから。あなたは、僕の本性を知っていますよね?」
「……」
「沈黙……それは、肯定と受け取ってもよろしいのでしょうか?」
「えっと……」


 レリクス様の質問に、私は何も答えられなくなっていた。
 それは、彼の言っていることが図星だからである。

「……初めて会った時、僕はあなたに優しくしたという自覚があります。苦しんでいたあなたを、助けましたよね?」
「……ええ」
「それなのに、あなたはずっと僕のことを警戒していました。入学式に向かっている最中も、教室で再会した時も、あなたは僕に対して一線を引いていた。でも、あなたは僕のことを拒絶する訳でもなかった。その不思議な一線が、僕はずっと引っかかっていたんです」
「……」

 レリクス様は、自分が覚えていた違和感について話し始めた。
 確かに、私は彼のことをずっと警戒していた。それは、紛れもない事実である。

 その理由は、色々とあった。
 彼の本性を知っているという事実。自分のことがばれる可能性。その色々なことによって、私は彼から一線を引いていたのだ。

 その事実を彼がわかっていることも、理解していた。
 ただ、それはレリクス様にとって思っていたよりも重要なことだったようだ。

「そこで、僕はあなたに揺さぶりをかけてみることにしました。セリティナさんのことも、利用しながら、あなたがどういう人間かを計ることにしました」
「……」
「その結果、あなたがどういう人間かは大体わかりました。あなたは、優しい人だ。セリティナさんに手を差し伸べる人情がある。ただ、彼女からも少し線を引いていた。あなたの態度というものが、僕にとってはとても不思議だったのです」
「それは……」
「あなたは、何かを隠している……僕と同じように。そう思うようになったのです」

 レリクス様は、ゆっくりとそう呟いた。
 彼は、どこか遠い目をしている。それは、その隠し事に負い目を感じているからなのだろうか。
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