誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。

木山楽斗

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15.認識を改めて

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「あの……エルファリナ様も、よろしくお願いします」
「え? あ、ええ、よろしくお願いします」

 レリクス様との挨拶が終わってから、セリティナは私にそう言ってきた。
 それに対して、私は少し驚いてしまう。

 だが、別にセリティナがしたことはおかしなことではない。
 この流れで私に挨拶をするのは、至極自然なことである。

「エルファリナさん、まだ緊張しているんですか?」
「それは……まあ、はい」

 レリクス様の言葉に、私はゆっくりと頷いた。
 恐らく、今のは彼の助け舟だろう。私の変な反応を誤魔化してくれたのだ。

 とりあえず、私は一度深呼吸をする。
 この状況を、改めて考えるために、落ち着きたかったからだ。

 私は、セリティナのことを避けようと思っていた。
 それは、面倒なことに巻き込まれたくなかったからである。

 しかし、別に彼女自身が嫌いだとかそういう訳ではない。むしろ、ゲームをプレイした身なので、どちらかというと好きだ。
 そんな彼女に対して、まるで嫌っているかのような対応をするのはなんだか心苦しい。ここは、普通に接するとしよう。

 面倒なことに巻き込まれるかどうかなどといったことは、後で考えればいい。
 今は、ただ隣の席になったクラスメイトというだけの認識で接する。私は、そう決めるのだった。

「セリティナさん、ごめんなさいね……私、結構人見知りするタイプなんです」
「いえ、私も人見知りするタイプなので、全然大丈夫です」

 私は、セリティナに謝罪しておくことにした。
 先程までの私の態度は、きっと彼女からしてみれば、嫌なものだっただろう。
 その理由はとても複雑なものなので、人見知りということで誤魔化させてもらうことにした。嘘をつくのは少々申し訳ないが、これは仕方ないことである。

「なんだか、初々しいですね……」
「レリクス様、茶化しているんですか?」
「いえ、そういう訳ではありませんよ」

 そんな私達の様子を、レリクス様は笑顔で見ていた。
 彼は、なんだか楽しそうだ。それは、セリティナと私が無事に話せたからなのだろうか。

 もちろん、彼のその優しさはわかっている。
 だが、それでもなんだか少し怒りを覚えてしまう。ここまでの話で、どうしてもそう思ってしまうのだ。

 私は、だんだんとレリクス様の厄介さがわかるようになっていた。
 ゲームをプレイしている時も、それはわかっているつもりだった。だが、端から見ているのと自分が体験するのでは、それの理解度がまったく違う。

 実際に接してわかったのは、それがすごく面倒であるということだ。
 彼は本当にいい性格をしている。今日何度目かわからないが、私は改めてそれを認識するのだった。
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