誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。

木山楽斗

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13.話しかけるのは

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「……」
「エルファリナさん?」
「いえ、なんでもありません……」

 そこで、私は背中に熱を覚えた。
 もう声を出したりはしないが、それでも表情に出たのかレリクス様は指摘してきた。
 とりあえず、私は教室の入り口の方を見る。すると、そこからセリティナが入ってくるのが確認できる。

「……」
「……」


 彼女は、ゆっくりと歩いて私の隣の席に着く。
 その表情は、あまり明るくない。恐らく、まだ緊張しているのだろう。

 それは、無理もないことだ。
 セリティナは、平民である。基本的に貴族が多いこの学園で、そこまでのびのびとすることはできないだろう。

 さらに彼女には、聖痕と呼ばれる特別な証まである。
 そんなセリティナは、様々な感情を向けられる対象だ。
 例えば、羨望。例えば、嫉妬。その様々な感情が渦巻くこの学園で、彼女は色々と大変なのだろう。

「……話しかけないんですか?」
「え?」
「せっかく隣の席なのですから、話しかけてみてもいいんじゃないですか?」

 そんな私に、レリクス様がそう言ってきた。
 それは、彼女が現れて私の表情が変わったことを察しての言葉なのだろうか。

 もしそうだったとしたら、それは少々性格が悪い。
 だが、私は思い出す。彼は、性格が悪い人だったのだと。

「で、でも、彼女も急に公爵令嬢に話しかけられたくはないのではありませんか?」
「そうでしょうか? なんだか不安そうですし、安心するように話しかけてあげてもいいと思いますよ。多分、彼女は貴族が多いこの学園で緊張しているのでしょうし、貴族のあなたからフレンドリーに話しかければ、少しはその不安を拭えるのではありませんか?」
「いや、それは……」

 レリクス様の言っていることは、理解できないことではない。
 確かに、彼女の立場を考えれば、私から話しかけてあげた方がいいだろう。

 ただ、それには色々と問題がある。
 正直、私はあまりセリティナに関わりたくないのだ。

 ゲームをやっていた私は知っている。彼女の周りでは、様々なことが起こると。
 その学園生活は、充実していたが大変そうだった。私は、それに関わりたいとは思わない。

 私の目標は、平和に自由に生きることである。
 あまり、そういう騒ぎには参加したくない。だから、彼女と関わり合いたくないのである。

「何か問題でもあるんですか?」
「問題があるという訳ではないですけど……」

 そんな私に、レリクス様は滅茶苦茶踏み込んできた。
 やっぱり、彼は性格が悪いのかもしれない。私に何か秘密があるとわかっているのに、こんなことを言うなんて、本当にひどい人である。
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