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9.入学式を終えて
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入学式を無事に終えて、私は教室の前まで来ていた。
これから私は、この教室で一年を過ごすことになる。
改めてそれを実感してから、私は教室の戸に張ってあるクラス表に目を通す。クラスの面々を確認しておきたかったのである。
どうやら、クラスメイトはゲームと変わらないようだ。
私が知っている人達は、過不足なくいる。なんとなく察していたが、運命は変わらないらしい。
「さてと……」
とりあえず、私は自分の席に着く。
入学した直後のエルファリナの席は、よく覚えている。窓際の一番後ろの主人公の横だ。
「ふう……」
私は、少し緊張していた。
今の所、セリティナはまだ来ていない。
その理由はわかっている。彼女は今、攻略対象の一人と出会っているのだ。
それが終わって、彼女がここにやって来たら、私はどうなるのだろうか。
先程のように痣がうずくのだろうか。それが少し恐ろしい。
入学式の間は大丈夫だった。ただ、それは彼女と距離が離れていたからだろう。
しかし、この教室では絶対に近づかなければならない。彼女を避けることはできないのだ。
「こんにちは、エルファリナさん」
「あ、レリクス王子……」
「浮かない顔をしていますね? また、何かあったのですか?」
「い、いえ……」
「そうですか? それなら、いいのですけど……」
そんな私に、レリクス様が話しかけてきた。
彼は、セリティナやエルファリナと同じクラスなのである。
よく考えてみれば、彼がクラスメイトであるというのは中々に厄介なことかもしれない。
聡い彼のことだ。私の隠していることなどを簡単に見抜いてくる可能性がある。
「さて、私の席は、ここですね」
「え?」
「隣の席みたいです。これから、よろしくお願いしますね」
「は、はい……」
レリクス様は、私に向かって笑みを浮かべてきた。
そういえば、彼はエルファリナの隣の席だったのだ。今まですっかり忘れていたが、最初はそんな配置だったような気がする。
ゲームでは、しばらくしてから席替えがあり、そこで主人公と彼が隣の席になるのだが、それまでの席はあまり作中にも出てこなかった。そのため、忘れていたのだ。
「黒板が、少々遠いですね……まあ、目はいい方ですから、問題はありませんが。エルファリナさんは、どうですか?」
「私も、目は悪くありません」
「そうですか、それなら良かった」
レリクス様に言われて、私は黒板の方を見てみた。
そこには、クラスの席と番号が書いてある。どうやら、普通はそこを見て席に座るようだ。
そして、私は気付いた。私が、そこをまったく見ていなかったということに。
これから私は、この教室で一年を過ごすことになる。
改めてそれを実感してから、私は教室の戸に張ってあるクラス表に目を通す。クラスの面々を確認しておきたかったのである。
どうやら、クラスメイトはゲームと変わらないようだ。
私が知っている人達は、過不足なくいる。なんとなく察していたが、運命は変わらないらしい。
「さてと……」
とりあえず、私は自分の席に着く。
入学した直後のエルファリナの席は、よく覚えている。窓際の一番後ろの主人公の横だ。
「ふう……」
私は、少し緊張していた。
今の所、セリティナはまだ来ていない。
その理由はわかっている。彼女は今、攻略対象の一人と出会っているのだ。
それが終わって、彼女がここにやって来たら、私はどうなるのだろうか。
先程のように痣がうずくのだろうか。それが少し恐ろしい。
入学式の間は大丈夫だった。ただ、それは彼女と距離が離れていたからだろう。
しかし、この教室では絶対に近づかなければならない。彼女を避けることはできないのだ。
「こんにちは、エルファリナさん」
「あ、レリクス王子……」
「浮かない顔をしていますね? また、何かあったのですか?」
「い、いえ……」
「そうですか? それなら、いいのですけど……」
そんな私に、レリクス様が話しかけてきた。
彼は、セリティナやエルファリナと同じクラスなのである。
よく考えてみれば、彼がクラスメイトであるというのは中々に厄介なことかもしれない。
聡い彼のことだ。私の隠していることなどを簡単に見抜いてくる可能性がある。
「さて、私の席は、ここですね」
「え?」
「隣の席みたいです。これから、よろしくお願いしますね」
「は、はい……」
レリクス様は、私に向かって笑みを浮かべてきた。
そういえば、彼はエルファリナの隣の席だったのだ。今まですっかり忘れていたが、最初はそんな配置だったような気がする。
ゲームでは、しばらくしてから席替えがあり、そこで主人公と彼が隣の席になるのだが、それまでの席はあまり作中にも出てこなかった。そのため、忘れていたのだ。
「黒板が、少々遠いですね……まあ、目はいい方ですから、問題はありませんが。エルファリナさんは、どうですか?」
「私も、目は悪くありません」
「そうですか、それなら良かった」
レリクス様に言われて、私は黒板の方を見てみた。
そこには、クラスの席と番号が書いてある。どうやら、普通はそこを見て席に座るようだ。
そして、私は気付いた。私が、そこをまったく見ていなかったということに。
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