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7.優しい王子
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「隣に座っても構いませんか?」
「ええ、どうぞ」
レリクス様は、私の隣にゆっくりと座った。
彼は、ずっと笑顔を浮かべている。その作り笑いも美しい。彼の顔を見て、私は改めてそう思っていた。
レリクス様は、綺麗な人である。
端正な顔立ちに、長い白髪。どこか儚げな雰囲気な彼の顔に、思わず私は見惚れてしまう。
「……私の顔に、何かついていますか?」
「え? いえ、そういう訳ではありません」
「……ああ、もしかして、この白髪が珍しいんですか?」
「そ、その……」
「大丈夫ですよ。慣れていますから」
レリクス様は、私が白髪を見ていたと思っていたようだ。
確かに、それは珍しいものである。だが、別にその一点に見惚れていた訳ではない。
ただ、それを素直に言うのも、少し恥ずかしかった。そのため、私は黙ってしまう。
しかし、それが良くないことだということはわかっている。
実は、レリクス様は白髪を気にしているのだ。恐らく、今彼はいい気分ではないだろう。
だが、今更取り繕っても意味はない。そんなことをしても、言い訳にしかならないだろう。
「……どうやら、悪い意味で私を見ていた訳ではないようですね」
「え?」
「あなたが、そういう目をしていましたから」
そんな私の考えをレリクス様は、一瞬で見抜いてきた。
驚いた私だったが、すぐに思い出す。そういえば、彼はそんな感じの人だったのだと。
レリクス様は、他者の機微に敏感な人なのだ。
人の様子をよく観察して、何を考えるかを当てる。ゲームの中でも、その特技を何度も発揮していた。
「本当は、何を考えていたのでしょうか? よろしかったら、教えてもらっても構いませんか?」
「えっと……実は、レリクス様が綺麗だと思ったのです」
「綺麗、ですか……」
隠しても無駄だと思ったので、私は素直に思ったことを言ってみた。
すると、レリクス様は驚いたような表情になる。流石に、綺麗と思われていたことは、彼でも驚くことだったようだ。
「なるほど……私に、見惚れていた、ということでしょうか?」
「はい、そういうことです」
「ありがとうございます……お礼を言うのもおかしいのかもしれませんが」
「そうですね……」
私とレリクス様は、笑い合った。
おかしな会話をしていると思ったからだ。
その笑顔を見ていて、私は少し考える。これも、作り笑いなのだろうかと。
根拠はないが、そうではない気がする。それは、願望といえるのかもしれない。
こんな風に笑い合っているのに、それが偽りだなんて、私は思いたくないのだろう。
「ええ、どうぞ」
レリクス様は、私の隣にゆっくりと座った。
彼は、ずっと笑顔を浮かべている。その作り笑いも美しい。彼の顔を見て、私は改めてそう思っていた。
レリクス様は、綺麗な人である。
端正な顔立ちに、長い白髪。どこか儚げな雰囲気な彼の顔に、思わず私は見惚れてしまう。
「……私の顔に、何かついていますか?」
「え? いえ、そういう訳ではありません」
「……ああ、もしかして、この白髪が珍しいんですか?」
「そ、その……」
「大丈夫ですよ。慣れていますから」
レリクス様は、私が白髪を見ていたと思っていたようだ。
確かに、それは珍しいものである。だが、別にその一点に見惚れていた訳ではない。
ただ、それを素直に言うのも、少し恥ずかしかった。そのため、私は黙ってしまう。
しかし、それが良くないことだということはわかっている。
実は、レリクス様は白髪を気にしているのだ。恐らく、今彼はいい気分ではないだろう。
だが、今更取り繕っても意味はない。そんなことをしても、言い訳にしかならないだろう。
「……どうやら、悪い意味で私を見ていた訳ではないようですね」
「え?」
「あなたが、そういう目をしていましたから」
そんな私の考えをレリクス様は、一瞬で見抜いてきた。
驚いた私だったが、すぐに思い出す。そういえば、彼はそんな感じの人だったのだと。
レリクス様は、他者の機微に敏感な人なのだ。
人の様子をよく観察して、何を考えるかを当てる。ゲームの中でも、その特技を何度も発揮していた。
「本当は、何を考えていたのでしょうか? よろしかったら、教えてもらっても構いませんか?」
「えっと……実は、レリクス様が綺麗だと思ったのです」
「綺麗、ですか……」
隠しても無駄だと思ったので、私は素直に思ったことを言ってみた。
すると、レリクス様は驚いたような表情になる。流石に、綺麗と思われていたことは、彼でも驚くことだったようだ。
「なるほど……私に、見惚れていた、ということでしょうか?」
「はい、そういうことです」
「ありがとうございます……お礼を言うのもおかしいのかもしれませんが」
「そうですね……」
私とレリクス様は、笑い合った。
おかしな会話をしていると思ったからだ。
その笑顔を見ていて、私は少し考える。これも、作り笑いなのだろうかと。
根拠はないが、そうではない気がする。それは、願望といえるのかもしれない。
こんな風に笑い合っているのに、それが偽りだなんて、私は思いたくないのだろう。
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