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4.待っていた時

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 時が経つのは、早いものである。
 前世の記憶を思い出してから、私はエルファリナとして生きてきた。
 悲惨な環境にも耐えながら、私はずっと待っていた。この王立魔法学園への入学を待っていたのである。

「魔法学園……乙女ゲームの舞台か」

 私は、目の前にある校舎を見ながら、ゆっくりと呟いた。
 この魔法学園は、ゲームの舞台である。主人公がここに入学する所から、物語は始まるのだ。

「これで、ある程度の自由は約束される……」

 魔法学園は、全寮制である。
 つまり、ここに入学すれば、私はあの家に帰らなくていいのだ。

 それは、私がこの時を待っていた一番の理由である。
 ここには、私を縛りつけるものはない。あの息苦しい家とは違い、この魔法学園では自由が約束されているのだ。

「さて……」

 これからどうするかは、色々と考え中である。
 この自由は、私にとってとても大切なものだ。どうにか有効に使いたい所である。
 その方法を、私はずっと考えてきた。そして、今も考えている。

「……あれは」

 そこで、私はある人物を見つけた。
 それは、私の婚約者であるアルクルド様だ。
 彼は、私と同い年である。当然、彼もこの魔法学園に入学するのだ。

「ここで、彼はあの子に出会うということなのね……」

 アルクルド様は、ゲームの攻略対象の一人である。
 主人公は、この魔法学園で彼と劇的な出会いを果たして、恋に落ちるのだ。

 もっとも、それは可能性の一つでしかない。
 主人公の選択によって、彼女が結ばれる相手は変わる。
 この世界の彼女は、どんな選択をするのだろうか。それは、少しだけ気になる所だ。

「まあ、そんなことを私が気にしても仕方がない訳だけど……」

 ゲームをプレイした身として、主人公の恋愛は気にならない訳ではない。
 だが、実際にこの世界に暮らしている私としては他に由々しき問題があるので、それを気にしている場合ではないのだ。

 その辺りのことは、勝手に進めてくれればいい。
 結果くらいは聞けるだろうし、それで満足するとしよう。

「そもそもの話、私は彼女とあまり関わらない方が身のためだろうし……」

 エルファリナは、主人公のことを疎んでいた。
 平民でありながら稀有な才能を持ち、自身の婚約者からも興味を持たれている彼女に嫉妬して、虐め抜くことを決めたのである。

 もちろん、私はそんなことをするつもりはない。
 だが、なるべく関わるべきではないだろう。エルファリナを抜きにしても、彼女の周りでは色々なことが起こる。
 面倒ごとを避けたい私としては、主人公と関わる益がないのだ。
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