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 私は、レパンディア王国に暮らしていた。
 そんな私の元に、一人の女性が訪ねて来た。
 その女性の顔を、私はよく知っている。何度も見たことがあるし、いつも鏡で見る自分の顔にそっくりだからだ。

「イルリナ……無事でよかった」
「それはこっちの台詞かな。アルリナが無事で、本当によかった」

 私達は、それぞれ髪飾りを外す。 
 もう私達は、入れ替わっている必要がないからだ。
 私は、赤い花の髪飾りを右側に、イルリナは青い花の髪飾りを左側に。そうやって、お互いの存在を示すものを身に着けて、元の自分に戻るのだ。
 赤い髪飾りからは、イルリナがこれまで何をしたかが伝わってきた。彼女の思いが、この髪飾りには込められているのかもしれない。

「全部終わったみたいだね……」
「うん、終わらせてきた。これで、私達を縛りつけるものは何もないよ」
「よかった……それなら、これからはまた二人でゆっくりと歩んで行けるよね?」
「うん、そうだよ」

 私の言葉に、妹は満面の笑みで答えてくれた。
 それに対して、私も笑顔を返す。すると、イルリナは少し驚いたような顔になる。

「どうかしたの?」
「その……アルリナが、こんなに明るい表情をしているなんて、少し驚いて……」
「ああ、そういうことだったんだね……」

 イルリナが驚いていたのは、私の表情の変化だった。
 かつて私は、上手く笑えなくなっていた。苦痛に溢れた人生に嫌気が差し、笑顔などできなくなっていたのだ。
 しかし、それが今はできるようになっている。その差に、イルリナは驚いていたのだ。

「この国に来てから、イルリナの思いを知って……それから、ソルバン様に支えられて、私、なんだか明るくなったんだ」
「そうだったんだ……それはよかった。アルリナが笑顔だと、私も嬉しいよ」

 私が笑顔になると、イルリナも喜んでくれる。
 その事実が、とても嬉しかった。彼女が喜ぶと、私まで嬉しくなってしまうのだ。
 私達は、双子である。魂を分け合った存在だから、そのように思うのだろうか。

「アルリナさん、ソルバンです。少しいいですか?」
「あ、はい……」

 そこで、部屋の戸を叩く音とソルバン様の声が聞こえてきた。
 どうやら、私に何か用事があるようだ。
 私は、イルリナを少し見つめる。すると、イルリナは目でいいと言ってくれた。

「入ってください」

 だから、ソルバン様を部屋に招いた。
 イルリナがここに来ていることを、彼は知っているだろう。
 だが、実際に見ると驚くかもしれない。双子というのが、ここまで似ているのかと。
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