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21(イルリナ視点)

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 私は、自身に裁きを下した王子の前に立っていた。
 彼に、全てが冤罪だったことを伝えるためである。

「王子、理解されましたか? あなたの裁きは間違えだったのです」
「そんな……僕は、なんということを……」

 目の前の王子は、自身の行いを後悔していた。
 私が犯した罪が間違いであったことは、多くの令嬢が証言してくれた。
 私を陥れようとした者達は数を集めるために、様々な令嬢に声をかけていたらしい。その中には脅されていた者もいる。そういう者達は、少し揺さぶっただけで協力してくれたのだ。
 これなら、初めからこうしていれば良かった。どうでもいいと思って、姉を追放させてしまったことは、私の一番の失敗である。

「君の妹には、とんでもないことをしてしまった……謝って済むことではないが……」
「ええ、謝っても無駄です。私の心は、特に動きません」

 ただ、そもそもこの王子がきちんと調査していれば、今回のことは起こらなかった。
 私一人で、この事実を突き止められたのだ。王国という大きな組織を動かせる王子に、それができなかったはずはない。

「どうすればいいのだろうか……彼女を探し出そうか。まだ、生きている可能性は……」
「あなたの愚かな行為に対して、一番償える方法は、妹の無罪をこの国の全土に伝えることです。彼女にかかった汚名を全て晴らしてください……いえ、あなたは晴らさなければならないのです」
「……わかりました。そのように取り計らいましょう」

 王子に望むのは、ただ一つだった。
 私の汚名を晴らすことである。それが、彼ができる一番の償いだ。
 最も、私は家のために汚名を晴らしたいとは思っていない。あの両親がいるため、汚名を被ったままでも別に構わないと考えることもできる。
 しかし、これから私がすることを考えると、その汚名はない方がいい。きちんと冤罪を晴らして、それを他国にも証明しておいた方が都合がいいのだ。

「さて、私はこれで失礼します」
「ええ……」

 私は、ゆっくりと歩んで王子の元から去って行く。
 結局、彼は私が誰なのかを見抜くことができなかった。かつて、ともに過ごした婚約者であっても、私とアルリナを見分けることはできないようだ。
 だが、そんなことは私にとってどうでもいいことだった。彼は、私にとって利用するためだけの存在でしかなかったからだ。彼に心を動かすことそのものが無駄なのである。
 私が気にするべきことは、アルリナのことだろう。彼女との再会、それが今の私にとって、一番大切なことなのである。
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