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11(イルリナ視点)

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 私には、双子の姉がいる。アルリナ・ルバルデという私とそっくりな顔をした姉だ。
 両親ですら見分けることができない私達だったが、決定的に違うことがあった。それは、才能である。

「どうして、あなたにはこんな簡単なことができないのかしら……」
「申し訳ありません、お母様」

 なんでもできる私と比べて、姉は平凡だった。いや、身内贔屓かもしれないが、彼女には平凡以上の才能はあると思う。ただ、比較対象の私が規格外だっただけだ。
 そんな姉は、両親にとってあまり好ましい存在でなかったらしい。私のせいで虐げられる姉を見て、私はとても心配していた。何故、姉がこのような扱いを受けなければならないのか。それは、まったく理解できないことである。

「イルリナを見習いなさい。妹であるあの子にできることが、あなたにできない訳がないでしょう?」
「はい……」

 私にとって、アルリナは半身だった。
 同じ顔をしている姉が、両親に痛めつけられるのを見て、いつしか私も痛みを感じるようになっていた。
 私の頭の中では、目の前で痛めつけられる姉が自分に置き換わっていたのだ。なぜなら、姉の立場は自分でもおかしくなかったからである。才能が切り分けられる時、姉の側に偏っていたのなら、痛めつけられているのは私だっただろう。
 だが、姉に比べれば、私の痛みなど些細なものだった。誰よりも痛みを感じる彼女を、私はどうにかして助けなければならないのだ。

「アルリナ、大丈夫?」
「平気だよ、イルリナ……」

 いつしか、姉は壊れてしまった。
 目がまったく笑っていない空虚な笑顔を見る度に、私の心は痛みを覚えていた。
 その痛みの原因が、何かは明白だ。だから、私の怒りというものは、全て原因に向けられたのである。

「イルリナ、流石だ……」
「ええ、それでこそ、私達の子……」

 あの二人さえいなければ、私はこの痛みを覚えなかった。アルリナの心は壊れることがなかった。
 だから、あの二人はいらないのだ。私達姉妹にとって、両親は邪魔者でしかない。
 しかし、二人を排除するだけの力を、私は有していなかった。そのため、まずは力をつける必要があったのだ。

 両親の前では従順に振る舞うことは簡単だった。私が少しでも媚を売れば、あの二人は簡単に信用してくれる。ある程度、私の意思で操れることもわかったので、なるべく姉を虐げないように誘導することでもできるようになった。
 そのような生活が、しばらく続いた。しかし、私に降りかかってくる障害は、両親だけではなかったのである。
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