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16.これからもきっと
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「ドラグルド様、本当にありがとうございました。お陰で、学園での立場も評価も覆りました。今ではすっかり、ルビウス様とラフェリアが悪者です」
「まあ、あれだけのことをしたからな。ただ、俺にとっては予想外だった。もちろん、君の評価を上げるための演出のつもりだったが、こんなことになるとは思っていなかったからな」
放課後、私はドラグルド様と教室で話していた。
周囲には、既に人はいない。皆、寮に帰ったり部活に行ったりしているのだろう。
ドラグルド様と二人きりという状況には、中々に緊張する。だが、とても嬉しい状況だ。思わず笑みが零れてしまう。
「……ドラグルド様? どうかしましたか?」
「ああいや、君は本当に綺麗な目をしていると思ってな」
そこで私は、ドラグルド様がこちらを真っ直ぐに見つめているということに気付いた。
私の目を見ていたようだが、そんなに面白いものだろうか。彼は前も褒めてくれたが、正直私はそこまで自分が綺麗な目をしているとは思っていない。
「……思えば、俺はずっとその目に惹かれていたのかもしれないな」
「え?」
「アノテラ嬢、俺は君のことが好きだった。実の所、ずっと前から……」
ドラグルド様の言葉に、私は少し面食らっていた。
彼の表情は真剣だ。つまりその言葉には、嘘や偽りなどではないということだろう。
しかし急にそのようなことを言われて、私は混乱している。突然のことに、思考が追いついてこない。
「驚くのも無理はないだろうな。俺と君には、今まで繋がりなんてものはあまりなかった訳ではあるし……」
「そ、そうですね……」
「だがなんというのだろうか、君の素朴な所に俺は心惹かれていた。だから今は、少し微妙な心持ちだ」
ドラグルド様から好意を向けられていたことに、私はまったく気付いていなかった。
そもそも今回の件まで接点がなかった訳だし、私のことなんて知らないのではないかとさえ、思っていたくらいだ。
ただ、彼からの好意はとても嬉しい。今回の件で助けられてともに過ごしていく内に、私も彼に惹かれていたのだ。
「その、私もドラグルド様のことは好きだと思います」
「そうか。それならよかった。アノテラ嬢、君さえ良ければ俺と婚約を結んでもらえるか?」
「もちろん、私自身はそうしたいと思っています。ですが、家のことなどもありますし……」
「その点は俺がなんとでもしてみせるさ」
「……わかりました。それなら私を、これからもドラグルド様の傍にいさせてください」
私の言葉に、ドラグルド様は力強く頷いてくれた。
貴族である以上、これからも私には色々な困難が降りかかって来るだろう。
だけどきっと大丈夫だ。ドラグルド様の笑顔を見て、私は強くそう思うのだった。
「まあ、あれだけのことをしたからな。ただ、俺にとっては予想外だった。もちろん、君の評価を上げるための演出のつもりだったが、こんなことになるとは思っていなかったからな」
放課後、私はドラグルド様と教室で話していた。
周囲には、既に人はいない。皆、寮に帰ったり部活に行ったりしているのだろう。
ドラグルド様と二人きりという状況には、中々に緊張する。だが、とても嬉しい状況だ。思わず笑みが零れてしまう。
「……ドラグルド様? どうかしましたか?」
「ああいや、君は本当に綺麗な目をしていると思ってな」
そこで私は、ドラグルド様がこちらを真っ直ぐに見つめているということに気付いた。
私の目を見ていたようだが、そんなに面白いものだろうか。彼は前も褒めてくれたが、正直私はそこまで自分が綺麗な目をしているとは思っていない。
「……思えば、俺はずっとその目に惹かれていたのかもしれないな」
「え?」
「アノテラ嬢、俺は君のことが好きだった。実の所、ずっと前から……」
ドラグルド様の言葉に、私は少し面食らっていた。
彼の表情は真剣だ。つまりその言葉には、嘘や偽りなどではないということだろう。
しかし急にそのようなことを言われて、私は混乱している。突然のことに、思考が追いついてこない。
「驚くのも無理はないだろうな。俺と君には、今まで繋がりなんてものはあまりなかった訳ではあるし……」
「そ、そうですね……」
「だがなんというのだろうか、君の素朴な所に俺は心惹かれていた。だから今は、少し微妙な心持ちだ」
ドラグルド様から好意を向けられていたことに、私はまったく気付いていなかった。
そもそも今回の件まで接点がなかった訳だし、私のことなんて知らないのではないかとさえ、思っていたくらいだ。
ただ、彼からの好意はとても嬉しい。今回の件で助けられてともに過ごしていく内に、私も彼に惹かれていたのだ。
「その、私もドラグルド様のことは好きだと思います」
「そうか。それならよかった。アノテラ嬢、君さえ良ければ俺と婚約を結んでもらえるか?」
「もちろん、私自身はそうしたいと思っています。ですが、家のことなどもありますし……」
「その点は俺がなんとでもしてみせるさ」
「……わかりました。それなら私を、これからもドラグルド様の傍にいさせてください」
私の言葉に、ドラグルド様は力強く頷いてくれた。
貴族である以上、これからも私には色々な困難が降りかかって来るだろう。
だけどきっと大丈夫だ。ドラグルド様の笑顔を見て、私は強くそう思うのだった。
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