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12.綿密な計画
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「……アノテラ嬢に関する噂は、俺も耳にしたことがある」
「ドラグルド様、そうなんですか?」
「ああ……その時に対処するべきだったのかもしれないな」
マルディアス様の説明を受けて、ドラグルド様は少し悔しそうな顔をしていた。
それは、私に関する噂を聞き流したことに対する後悔の表れだろう。
しかし、こうなることなんて予想できることではない。それでドラグルド様が後悔する必要なんてないだろう。
「ドラグルド様、そのように気に病まないでください。全ては、私の不徳の致す所……」
「……いや、それは違うぞ、アノテラ嬢。全ての原因は、ルビウスとラフェリア嬢にある。それは決して揺るがない事実だ」
「……ありがとうございます、ドラグルド様」
ドラグルド様は、私のことを気遣う言葉をかけてくれた。
私にとって、それはとても嬉しいものだ。状況はすこぶる悪いというのに、思わず笑顔が零れてしまう。
「ルビウス伯爵令息もラフェリア伯爵令嬢も、クラスにおいては中心的な人物でした。二人の人柄――それは外面でしかないのかもしれませんが、彼らはその点において優秀だったといえるでしょう」
「よく考えてみれば、それはそうですね。二人はクラスの人気者でした」
「そういう点も、アノテラ嬢に対する不評に繋がっているのかもしれません」
「なるほど、そこまで計算した上での計画だったという訳ですか……」
マルディアス様は、状況をとても冷静に分析していた。
ラフェリアもルビウス様も、良い人であるとクラスメイトに思われている。二人は、人当たりがとても良かったのだ。
そんな好感が持てる二人の傍にいた私に対して、クラスメイトは幾分かの敵意を抱いていたのかもしれない。考えてみれば、その可能性は充分あるように思える。
「お二人は華やかですからね。そういった方々には発言力があります」
「華やか、ですか。そういった意味では、お二人も負けていないような気がしますが……」
「私もドラグルド様も、あまり周りと積極的に関わる方ではありませんからね……ドラグルド様、どうかされましたか?」
私とマルディアス様が会話をしていると、ドラグルド様が足を止めていた。
そのことに、私達は顔を見合わせる。まさか、まだ先程の噂のことを気にしているとでもいうのだろうか。なんというか、少し心配だ。
「華やか、か。そういうことなら、いい考えがある」
「いい考え、ですか?」
「ああ、アノテラ嬢、君に一つ提案したい。上手くいけば、あの二人の鼻を明かせるかもしれないぞ?」
「そ、そうなんですか……?」
ドラグルド様は、笑みを浮かべていた。
何か策があるのだろう。よくわからないが、なんだかとても自信がありそうだ。
「ドラグルド様、そうなんですか?」
「ああ……その時に対処するべきだったのかもしれないな」
マルディアス様の説明を受けて、ドラグルド様は少し悔しそうな顔をしていた。
それは、私に関する噂を聞き流したことに対する後悔の表れだろう。
しかし、こうなることなんて予想できることではない。それでドラグルド様が後悔する必要なんてないだろう。
「ドラグルド様、そのように気に病まないでください。全ては、私の不徳の致す所……」
「……いや、それは違うぞ、アノテラ嬢。全ての原因は、ルビウスとラフェリア嬢にある。それは決して揺るがない事実だ」
「……ありがとうございます、ドラグルド様」
ドラグルド様は、私のことを気遣う言葉をかけてくれた。
私にとって、それはとても嬉しいものだ。状況はすこぶる悪いというのに、思わず笑顔が零れてしまう。
「ルビウス伯爵令息もラフェリア伯爵令嬢も、クラスにおいては中心的な人物でした。二人の人柄――それは外面でしかないのかもしれませんが、彼らはその点において優秀だったといえるでしょう」
「よく考えてみれば、それはそうですね。二人はクラスの人気者でした」
「そういう点も、アノテラ嬢に対する不評に繋がっているのかもしれません」
「なるほど、そこまで計算した上での計画だったという訳ですか……」
マルディアス様は、状況をとても冷静に分析していた。
ラフェリアもルビウス様も、良い人であるとクラスメイトに思われている。二人は、人当たりがとても良かったのだ。
そんな好感が持てる二人の傍にいた私に対して、クラスメイトは幾分かの敵意を抱いていたのかもしれない。考えてみれば、その可能性は充分あるように思える。
「お二人は華やかですからね。そういった方々には発言力があります」
「華やか、ですか。そういった意味では、お二人も負けていないような気がしますが……」
「私もドラグルド様も、あまり周りと積極的に関わる方ではありませんからね……ドラグルド様、どうかされましたか?」
私とマルディアス様が会話をしていると、ドラグルド様が足を止めていた。
そのことに、私達は顔を見合わせる。まさか、まだ先程の噂のことを気にしているとでもいうのだろうか。なんというか、少し心配だ。
「華やか、か。そういうことなら、いい考えがある」
「いい考え、ですか?」
「ああ、アノテラ嬢、君に一つ提案したい。上手くいけば、あの二人の鼻を明かせるかもしれないぞ?」
「そ、そうなんですか……?」
ドラグルド様は、笑みを浮かべていた。
何か策があるのだろう。よくわからないが、なんだかとても自信がありそうだ。
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